日本で一番ヘタレな悪党

逃亡者

日本で一番ヘタレな悪党

福岡の中洲にあるソープにて



「いらっしゃいませ!はづきです。」
はづきという風俗嬢が俺を迎え入れた。
「お兄さん名前わ?」
人懐っこい笑顔できいてくる。
「祐希…江原祐希」
「祐希さんか!なんか、すっごい良い人そうだね!」
はずきは、俺をベットに誘いながらそう言った…
「良い人そうに見える人間に良い人は、いないとおもったがいいよ。
おれをふくめてね。」



この物語は、自分の意思とは関係なく、日本の裏社会に関わり刑務所に服役していた俺自身の物語である。
ここに綴る話は、映画や漫画の話ではない。
現実の日本で起こっていたはなしである。



簡単に自己紹介をしておこう
江原祐希(仮)
今も組織に追われる身なので、名前は、偽名を使っている。年は30
今は、裏社会を離れ、ホテルのバンケットという部署で仕事をしている。
それでは、まだ俺が、裏社会に関わりを持つ前20歳の頃まで話をもどそう。



2007年 中洲


16歳で、家出した俺は、この頃、福岡の中洲にあるニューハーフのショーパブでキャストとして仕事をしていた。
源氏名は、十夜月ゆり

「あらぁ、今日もかせいだわねぇ!
やっぱ貴女は素質あるわゆりちゃん!」
閉店作業をしながらママのリサさんが話しかけてきた。
「ママのおかげですよ!」
「そんなことないわ!貴女の才能は、私が保証するわ!」
「貴女わこの世界に入るために生まれてきたのよ!手術する気は、ないの?」
ママと話しているといつもここにいきつか…
「私は、一応ノンケですから…」
「そう…」
ママは残念そうなかおをした。
ママは、私のことを娘だと思ってくれている。
ゆくゆくは、店を託したいと言ってくれていた。そのために、私が身体を一切いじらないことがネックだったのだ。
「そうね、貴女には、貴女の生き方があるものね…
でもね、この仕事をこれからも続けていくなら手術や、ホルモンをしないことは、いずれリスクになるわよ?」
ママの言うことは、間違っていない
ニューハーフの世界で、玉を取るなら22歳までに取ったほうがいいしホルモンもなるべく早い段階で使った方がいいと言われている。
理由は、体つきが、完全に男性になってからでは、どちらも効果が薄いからだ(勿論個人差は、ある)
「手術の費用なら私が出すから、考えておいて…」
そう言って、ママは、帰っていった。

私は、悩んでいた。
このままニューハーフとしてママと仕事がしたい気持ちはもちろんある。接客やダンスも好きだ。
でも、男としての自分を捨てきれないのも事実だった。

そんな悩みを抱えたまま私は、帰宅した。
「ただいまぁ〜」
「おかえり」
朝帰りの私を迎えてくれたのは同棲している彼氏の和樹だ。
和樹は同い年のオナベだ。手術は、胸を取ってるだけだが、見た目はホスト風のイケメンだった。
「どうしたの?疲れてるみたいだけど」
和樹が、顔を近づけながら聞いてきた。
「ママが性転換しろって…」
「あぁね!」
いつものかという感じだ。
「しちゃえば?俺はその方が嬉しいよ!ついでに胸も入れてさ!」
笑いながら言う!
「最低!」
心の底からイラっとした。
「もう、寝るから!おやすみ!」
話す気が失せたので、部屋に入ってすぐに寝た。

数時間後、目を覚ますと和樹は、仕事にでていた。
(あの馬鹿、少しは真剣にはなしきけし)
おもいだすと、腹が立つ。
イライラしながら洗面台の前に立って気がついた。
(ヤバ!メイク落としてなかった…)
慌ててメイクを落としパックをして、ようやく一服タバコに火をつける。タバコの煙をくゆらせながら和樹のことを考えた。
元々和樹は、女の子が好でオナベになった。
私のことも、すべてを知った上で女として見ている。
今も昔もノンケの私とは、そもそもスタンスが違う…和樹からすれば、性転換の話は、願ってもない事なんだろう…
「鬱になりそう」
心の声が独り言になっていた。

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