俺達の居場所は、闘いだけだ

八頭

第5話 タッグバトル開幕

…次の日。
テラス王国の首都ショルカにあるコロシアム。
そこで俺とマルクは一緒に居た。

「イング、いよいよだな」

「ああ。直ぐに片付ける」

オルズとテーラス。
この2人とのタッグバトルももうじき始まる。

名前だけは聞いたことあるがタッグバトルの剣技闘技場には参加したことがない俺には予測不明である。  

だが勝てばいい。

―――ゴーンっ!―――

バトル時間。
鐘が鳴ったことがその証。
その鐘の音と同時に目の前の門が開く。

俺とマルクは目を合わせ小さく頷く。

―――バトルの開幕―――

********

「よおー!第6回剣技闘技場制覇者のイング・ラッテええええ!!」

「まさか覇者の人とお手合わせだなんて。僕達は運がいいようですね」

闘技場へ入るなり絡んでくるオルズとテーラス。
うるさい口がオルズ。
僕口調で笑みがうざいのがテーラス。

「会話はいい。やるぞ」

「イングだけじゃないけどな」

さっさとやりたい俺と存在に気づいてほしいマルク。
マルクは闘技場初参加のため、認知度はない。

「いいぜえー!始めようやあー。なあ!テーラスっ」

「いいですよ。僕らで倒しちゃいましょうかね」

図に乗るなよ。 

カス共。

―――ゴーンっ!!―――

先程より一際大きな鐘の音。


決闘の始まりである。


********

「いきなりだが行くぜえ!炎極の殺(ファイドマ)!!」

オルズが地を蹴り、空中からの両手を俺に向け唱える。
両手は炎に包まれ柱状の形で俺に襲いかかる。

(くだらん)

そう思いつつかわす。
一直線なら来ると分かれば問題ない。

「やり返しだ。回転脚(かいてんきゃく)!」

両手を地に付け脚を回し風を生む。
その脚を高速回転する。
脚からハリケーンのような形状が出来空中のオルズを襲う。

「けっ!めんどくせえんだよおおお!!!」

そう言いながらまともに受けるオルズ。
叫ぶだけの犬は失せて欲しいものだ。

このまま接近戦に持ち込めば……

「……っ!?」

そう思った途端嫌な予感がした。
空中に一瞬見る。
それで確認した。

(あれは身代わりか!)

俺の回転脚に命中してたのはただの身代わりであった。
オルズはどこなのか。
このままの体制だと不覚をとる。

「甘いんだよおおお!!!こなくそやろおおお!!」

「……ちっ!くそっ!」

その声が近く。
俺の捨て台詞の直後に横腹に地味な痛みを感じる。
……殴られたか。

そう思いつつ体が吹っ飛び壁に激突する。
大きな音と共に瓦礫が崩れてくる。

「へへっ!こんなもんかよ!」

「調子に乗るなよ。雑魚」

「だったらかかってきなよおおお!!」

よく吠えるやつだ。
まじでうるさい。

そこまで望むならすぐ終わらせてやる。

「後悔するなよ。そんな余裕など与えんがな」

気を拳に集中させ、それを体全体に浸透させる。
体が火照ってくるのが伝わり周りが黄色い闘気に包まれる。

……これなら一瞬だ。眠れ。

「っ!!これはまさかあ!?」

「もはや手遅れだ。お前の命も」

右拳を上に掲げ、地面に叩きつける。

これが……俺の。

「……霊装解放!地の目覚め!」

********

episode マルク

「俺の相手さんはテーラス。君か」

「ふふふ……たかが騎士団員が僕に挑むなんてね。後悔させてあげようかな」

余裕な様子。 
まあ無理もないだろう。
騎士団員と剣闘士。
誰から見ても有利なのはテーラスだからなー。
けどなー…

「俺に余裕を見せても大丈夫なのかい?」

「余裕じゃないかね。だって……」

そういいつつテーラスの顔が不気味な笑みに変わる。

「僕の方が圧倒的に強いからねー!」 

「俺を先に倒す為に君が来たわけか。個人戦に持ち込むとはいい自信だ」

俺は愛用の細剣を抜く。
この細剣はよく切れる。
騎士団に入隊してからずっと使っている。

「さあ。テーラス、俺達も始めようか」

俺の余裕の言葉が気に食わなかったのか。
テーラスは頭を掻きむしり始めた。

「鬱陶しいんですよ。たかが人間のくせに!氷樹潔連花(ひょうじゅけつれんか)!」

早々に唱え始めるテーラス。
それと同時に地面が揺れ始め、テーラスの周りに氷の樹が生えてくる。

……っ!?下か!

そう感じた俺は後ろへ後退。
予想が的中。
俺の居た場所に氷の気が勢いよく現れる。

「当たれば良かったのにね」

微笑みながら言うテーラス。
まだこれからという感じか。

「いけ。氷樹(ひょうじゅ)」

その言葉と共に氷樹の鋭利な枝が襲いかかる。

「こんなもの……!」

その鋭利な氷の枝を俺は細剣で薙ぎ払っていく。
硬いが案外脆い。
崩れる氷の枝。隙を探ることにする。

「まだまだあるよー!」

そう言いながらテーラスは氷樹の氷の枝を使い俺に襲わせる。

……これじゃ厄介だ。近寄れん。

攻撃が止んだのと同時にこちらも距離を取る。

タイミングを見計らって突っ込むしかないか。
そう考えつつ細剣を構える。

オルズとテーラスか。
二人とも正反対の体格をしている。

オルズはがっしりした体格。
テーラスは細身の体格。
恐らく力と速と言った感じだろう。

一瞬見えたが両手から炎の柱状を出す辺り力押しがありそうだと踏む。
そしてテーラスの攻撃は多面。
速での攻撃。言わば先制を取りペースを掴むスタイルだろう。

「どうした?もう諦めたか?ふはは!」

全く。こいつは何故こんなに余裕なのか。

「諦めることはない。お前に勝つためのことを考えていただけさ」

「図に乗るなよ!人間風情があ!!」

先程の言葉で怒りが顕になった短気なテーラス。
氷樹の氷の枝が多面から襲いかかる。

………ここだ!!

氷の枝の軌道を確認しその氷の枝の上へ足を付かせる。
……これで各方向に飛びながら行けば!

テーラスへと近づく為、攻撃方面を確認。
軌道の予測をしつつ飛び移っていく。

いいか?テーラス。
過信し過ぎは……

「死を早めるだけだ」










コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品