俺達の居場所は、闘いだけだ
第1話 闘うことが生きる道
「イング聞いたぞ!剣技闘技場で優勝したらしいじゃねえかよー!すげえじゃん!」
「あんなの大したことない」
「いやいや!そんなことないぞ!優勝って誇れることじゃないか。男のロマンってやつだー!」
「平和な頭だな。うっとうしい」
第6回剣技闘技場を制覇した俺は帰路へ着こうと歩いている中、平和な頭をした奴からの言葉を適当に返す。
俺に話しかけてきているこいつはマルク・ボールド。テラス王国で騎士をしている。
何かある毎に関わってくるうるさいヤツ。
こんな平和頭が俺の幼馴染み。
とにかくうるさい。
「俺が闘いたかったのはあんな雑魚じゃない」
そうだ。俺が望んでいたのは第5回を制覇した[小さな猛獣]
そいつが今回来てなかった。
他の各国で名を馳せている強者も一切居なかった。居ても3流。くだらん茶番だった。
「そうだったか?対戦相手が弱いんじゃなくてイングが強すぎるだけなんじゃないか」
「ヨタや[小さな猛獣]が出てない」
「団長は騎士団のことで今は手一杯だからなー。前回制覇者のミレオパットなんて行方知れずだぞ 」
ヨタ。ヨタ・フェルマーレ。
テラス王国の騎士団団長であり剣闘士としても名高い猛者である。
そしてマルクの口から出てきたミレオパット。俺はこいつを求めて今回の大会に出場したのだった。
「マルク。[小さな猛獣]の情報はまだなのか?」
「うーん。小さな情報だがあるにはある」
「なんだと!?」
「ただ信憑性に欠けている。聞いた俺ですら耳を疑ったほどだぞ?」
「それでもいい」
マルクがここまで言うのも意外なことではあるが情報は欲しい。
場所さえ分かればこちらから会いに行けばいい。
行って決闘してしまえばそれで満足。
俺はそう考えていた。
その為、どんなに小さくても情報は情報として欲しかったんだ。
「それがな。そのミレオパットはカラリバ公国に居るという話なんだ」
「カラリバ公国だと?」
カラリバ公国。地位と血筋を重んじる公主ダレンマドラ公爵が治めている国である。
その公国には上の者ほど私腹を肥やし、下の者ほど扱き使われる。いわば奴隷である。
カラリバ公国は全各地でも有名な奴隷国家の1つであり虐待や非道な刑と言ったことが有名だ。
そんな国に[小さな猛獣]がおるというのか?
「カラリバ公国は奴隷国家だしミレオパットがそこに居るだなんて、考えられるか?
そもそも今では剣闘士が実権を握っているような時代だぜ?俺達騎士団は国の秩序の徹底が主。その中毎回戦いに身を置いている剣闘士を王の側に仕えさせる国は多い。
ただミレオパットはそうではない。そんな情報が一切ないんだ」
マルクの言う通りではある。
確かに俺も剣闘士だがテラス国王のハーブェルに飼われた剣闘士。
今では王の護衛として付くことも多い。
戦力として使えるなら使う、ということだ。
だが[小さな猛獣]はそれすらない。
前回の大会ですら無所属、出身不明と記載されていた謎の剣闘士であった。
カラリバ公国に居るとするなら前回の覇者でもあるため優遇はされがちだろう。
「それで?そいつは今公国でなにをしているっていうんだ」
「その話なんだが……」
「……?」
眉間にシワを寄せながらマルクはその情報の内容を言う。
その内容が真実かどうかは分からないが、俺も耳を疑った。
確かに信憑性が低いと感じた。
そんなことが実在するものなのか、と。
だが、もしこれが事実であるなら公国は各地との戦争を引き起こす引き金になる。
俺もそうだが、マルクも恐らくそれを考えていたのだろう。
********
………
あれから帰路を歩きつつマルクと別れた俺は1人部屋の中で物思いに耽っていた。
マルクが言っていたこと、それが事実なのかデマなのか。
そう思ったところでなにも分からない。
当然である。
あの時マルクが言ったのは
「(ミレオパットは奴隷らしいんだ)」
奴隷……か。
剣闘士が奴隷。
これは今の時代では有り得ないことだ。
剣闘士となる者には普通の人間と違う。
数々の過酷な日々から耐え抜いた者だけが許される存在。それが剣闘士。
今の時代、剣闘士を奴隷にすることや傭兵として扱うことは禁止とされている。
その禁忌に触れた場合、この世界"ガディリアン"の神から鉄槌が下るとされている。
その鉄槌がなんなのか。
それは俺とて知らない。
ただこの世界の中枢にそびえ立っている"ゼロの主城"と呼ばれるこの建物から鉄槌が下ると聞いている。
「剣闘士が奴隷……何故だ」
剣闘士が奴隷など有り得ない。
剣闘士は普通の人間より力があり、身体能力もズバ抜けている。
そんな剣闘士が人間の下に成り下がるなど万に一つもないと思っている。
闘うことが生きる道である剣闘士。
そんな中、剣技闘技場の元覇者が奴隷として雇われている情報。
「確認するか」
そう言いながら俺はもう自分の部屋から出ていた。
行動が先に出てしまったようだ。
「闘うより奴隷のほうがいい。そんなの有り得ない。剣闘士は闘って生きるしか道がない」
情報さえ分かれば後は自分の目で確かめる。
それが早いであろう。
待っているがいい[小さな猛獣]。
俺が貴様を奴隷として使えなくしてやろう。
「あんなの大したことない」
「いやいや!そんなことないぞ!優勝って誇れることじゃないか。男のロマンってやつだー!」
「平和な頭だな。うっとうしい」
第6回剣技闘技場を制覇した俺は帰路へ着こうと歩いている中、平和な頭をした奴からの言葉を適当に返す。
俺に話しかけてきているこいつはマルク・ボールド。テラス王国で騎士をしている。
何かある毎に関わってくるうるさいヤツ。
こんな平和頭が俺の幼馴染み。
とにかくうるさい。
「俺が闘いたかったのはあんな雑魚じゃない」
そうだ。俺が望んでいたのは第5回を制覇した[小さな猛獣]
そいつが今回来てなかった。
他の各国で名を馳せている強者も一切居なかった。居ても3流。くだらん茶番だった。
「そうだったか?対戦相手が弱いんじゃなくてイングが強すぎるだけなんじゃないか」
「ヨタや[小さな猛獣]が出てない」
「団長は騎士団のことで今は手一杯だからなー。前回制覇者のミレオパットなんて行方知れずだぞ 」
ヨタ。ヨタ・フェルマーレ。
テラス王国の騎士団団長であり剣闘士としても名高い猛者である。
そしてマルクの口から出てきたミレオパット。俺はこいつを求めて今回の大会に出場したのだった。
「マルク。[小さな猛獣]の情報はまだなのか?」
「うーん。小さな情報だがあるにはある」
「なんだと!?」
「ただ信憑性に欠けている。聞いた俺ですら耳を疑ったほどだぞ?」
「それでもいい」
マルクがここまで言うのも意外なことではあるが情報は欲しい。
場所さえ分かればこちらから会いに行けばいい。
行って決闘してしまえばそれで満足。
俺はそう考えていた。
その為、どんなに小さくても情報は情報として欲しかったんだ。
「それがな。そのミレオパットはカラリバ公国に居るという話なんだ」
「カラリバ公国だと?」
カラリバ公国。地位と血筋を重んじる公主ダレンマドラ公爵が治めている国である。
その公国には上の者ほど私腹を肥やし、下の者ほど扱き使われる。いわば奴隷である。
カラリバ公国は全各地でも有名な奴隷国家の1つであり虐待や非道な刑と言ったことが有名だ。
そんな国に[小さな猛獣]がおるというのか?
「カラリバ公国は奴隷国家だしミレオパットがそこに居るだなんて、考えられるか?
そもそも今では剣闘士が実権を握っているような時代だぜ?俺達騎士団は国の秩序の徹底が主。その中毎回戦いに身を置いている剣闘士を王の側に仕えさせる国は多い。
ただミレオパットはそうではない。そんな情報が一切ないんだ」
マルクの言う通りではある。
確かに俺も剣闘士だがテラス国王のハーブェルに飼われた剣闘士。
今では王の護衛として付くことも多い。
戦力として使えるなら使う、ということだ。
だが[小さな猛獣]はそれすらない。
前回の大会ですら無所属、出身不明と記載されていた謎の剣闘士であった。
カラリバ公国に居るとするなら前回の覇者でもあるため優遇はされがちだろう。
「それで?そいつは今公国でなにをしているっていうんだ」
「その話なんだが……」
「……?」
眉間にシワを寄せながらマルクはその情報の内容を言う。
その内容が真実かどうかは分からないが、俺も耳を疑った。
確かに信憑性が低いと感じた。
そんなことが実在するものなのか、と。
だが、もしこれが事実であるなら公国は各地との戦争を引き起こす引き金になる。
俺もそうだが、マルクも恐らくそれを考えていたのだろう。
********
………
あれから帰路を歩きつつマルクと別れた俺は1人部屋の中で物思いに耽っていた。
マルクが言っていたこと、それが事実なのかデマなのか。
そう思ったところでなにも分からない。
当然である。
あの時マルクが言ったのは
「(ミレオパットは奴隷らしいんだ)」
奴隷……か。
剣闘士が奴隷。
これは今の時代では有り得ないことだ。
剣闘士となる者には普通の人間と違う。
数々の過酷な日々から耐え抜いた者だけが許される存在。それが剣闘士。
今の時代、剣闘士を奴隷にすることや傭兵として扱うことは禁止とされている。
その禁忌に触れた場合、この世界"ガディリアン"の神から鉄槌が下るとされている。
その鉄槌がなんなのか。
それは俺とて知らない。
ただこの世界の中枢にそびえ立っている"ゼロの主城"と呼ばれるこの建物から鉄槌が下ると聞いている。
「剣闘士が奴隷……何故だ」
剣闘士が奴隷など有り得ない。
剣闘士は普通の人間より力があり、身体能力もズバ抜けている。
そんな剣闘士が人間の下に成り下がるなど万に一つもないと思っている。
闘うことが生きる道である剣闘士。
そんな中、剣技闘技場の元覇者が奴隷として雇われている情報。
「確認するか」
そう言いながら俺はもう自分の部屋から出ていた。
行動が先に出てしまったようだ。
「闘うより奴隷のほうがいい。そんなの有り得ない。剣闘士は闘って生きるしか道がない」
情報さえ分かれば後は自分の目で確かめる。
それが早いであろう。
待っているがいい[小さな猛獣]。
俺が貴様を奴隷として使えなくしてやろう。
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