異世界薬師~嫁ぎ先は砂漠の王国です~
チョコレート事件(12)
「なん……ですと……」
思わず口調が乱れてしまう。
だって! 30年も料理屋をしていて見たことが無いなんて、衝撃的な事実だったから。
このままだと、わたしの甘々な計画は頓挫してしまうことになるのです!
――ダン!
「シ、シャルロットちゃん!?」
「――あ! ご、ごめんなさい……」
何のために家を出てきたのか?
そう考えてしまうと、無意識的にテーブルを叩いてしまっていた。
そんな私を心配そうな表情でジェニーさんは見てくる。
「いいのよ? それより、そんなにチェコレートというのが大事だったのね」
チョコレートですと、心の中で突っ込みを入れながら、今度の事について考えてしまうと溜息しかでない。
そもそも、王都に向かうまでそんなに日にちは無かったりする。
それなのに、何も支度をしなくていいのかと言うと……。
うん! 私は頑張ったから自分へのご褒美で! しばらく屋根裏生活を満喫してもいいかも知れない。
「仕方ないな。そこまで大事な物だったら、朝や昼も手伝ってくれたからな。あとで市場に行ったら行商人に聞いてみるか!」
「私も! 暇な時間帯に聞いてあげるわね! チェコレート!」
「チョコレートです」
聞いてくれるなら訂正しておいて方がいい。
間違っている商品名で違う物が届いたり情報が来たら目も当てられないから。
夕食の時間帯になり、大勢の行商人が食事にきたりして、やはりというか厨房は大忙しで、わたしは魔法で食器を洗ったりして手伝っていた。
「シャルロットちゃん!」
興奮した面持ちでジェニーさんが厨房に入ってくる。
そんな彼女に、ブラウンさんは眉間に皺を寄せると「どうかしたのか?」と不機嫌そうに話しかけていた。
今日一日、一緒に仕事をしていて気が付いたけど、ブラウンさんは口は悪いし態度もぶっきらぼうだけど、仕事はきちんとこなすという職人さん。
「どうかしたのですか?」
私は、ジェニーさんが運んできた食器やカップやスプーンを魔法で作り出したシャボン玉の中に入れたまま空中に浮かせる。
そしてシャボン玉の中にお湯を作り上げて高圧でお湯を対流させた。
あっ! っという間に、食器は綺麗になりテーブルの上に並べられていく。
そして! そんな様子を見ていたジェニーさんは口を大きく分けてみていたけれど、ハッ! とした後。
「チョコレートが見つかったのよ! いま、行商人の人が話をしていたの!」
「――!? ほ、本当ですか!?」
「え、ええ……」
「それでは待っていてもらえるようにお伝えできますか?」
「いいけど……、シャルロットちゃんはお金を持っているの? 異国の物らしくって、かなり高い物みたいよ?」
「そ、そうなのですか?」
「うん。行商人の人がチョコレートを持っていた事に気が付いたのもね……、二人組で来店した商人がチョコレートの取引の話をしていたのだけど、高すぎて取引が出来ないから、約束が違うとチョコレートを持ってきた商人の人と口論になっていたからなの!」
なるほど……。
それは、ぜひ! 私が購入するべき物ですね!
問題は、お金をどうするかですけど……。
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