異世界薬師~嫁ぎ先は砂漠の王国です~

なつめ猫

チョコレート事件(11)




「いやー、それにしてもお嬢さんはすごいな!」

 朝食、昼食の提供が終わったあと、私はブラウンさんとテーブルを挟んで出されたお茶に口をつける。
 お茶と言っても日本茶のような物は存在していないので、自然と紅茶か香草茶になる。

 エルトール伯爵家では紅茶が主流であったけれど、庶民の間ではカモミールなどの主原料とした香草茶が多い。

「それほどでも……」

 日本でいう所のハーブティを口にしながら何とでもないですよと答える。

「いやいや、あんな生活魔法なんか見たことがないぞ? 謙遜しすぎると嫌味に聞こえるぞ?」
「そ、そうですか?」
「ああ。それで他にはどんな魔法が使えるんだ?」
「どんな魔法……」

 そういえば私は自分の魔法でどこまでの事が出来るのか試したことがない。

「分からないなら、シャンティアに居る引退した魔法師がいるんだが紹介するか?」
「いえ、大丈夫です。しばらくしたら王都に行くことになるので……」
「そうか……」

 とても残念そうな表情をするブラウンさん。
 彼が好意から進めてくれているのが何となくだけど分かってしまう。
 
「それよりも、しばらく泊めてもらって大丈夫ですか?」
「ああ! 最近は、よく知らないがシャンティアに来る人間も増えたからな。皿洗いをしてくれるのはとても助かる!」
「でしょう! シャルロットちゃんは、すごいのよ!」

 ずっと、私の横で話を聞いていたジェニーさんが会話に割って入ってくる。
 
「それにね! とても博学なんだから! それにお風呂も作ってくれたりするのよ!」
「なんだと!? そんなのを作って……、貴族様から何か言われ……、エルトール伯爵様だから何も言わないか……」
「あの……」
「どうしたんだ?」
「皆様に話を聞く限り、お父様ってあまり領内について真面目に仕事をしていないのですか?」
「仕事?」

 ブラウンさんが首を捻りながら眉間に皺を寄せている。
 そんなに私が聞いた話の内容がおかしかったのか……。
 でも、一度聞こうと思ったことを引っ込める方がアレかな? と思い。

「はい、皆様に聞いた限りでは、お父様って自由奔放というか領地の民にあまり干渉していないような気がするのですけど……、租税とかもどうなっているのでしょうか?」
「そういえばそうだな」

 髭を弄りながら答えてくるブラウンさん。

「あまり税については言われたことがないな」
「そ、そうなのですか……」

 お父様って、実は領地運営が下手だったりする?
 物品税とか、領内で商売をする際の通行税とかそういうのを取っていなかったり?

「それじゃ、税金は払っていないのですか?」
「どうなんだろうな?」
「払っています。お父さんは、本当に! その辺! いい加減なんだから!」
「そうなのですか……」

 ジェニーさんは溜息交じりにテーブルに両肘を付けると両頬を乗せた。
 
「それよりもシャルロットちゃんって、本当に難しい言葉を知っているわよね……」
「それだけ苦労したということで……」

 ブラウンさんも、ジェニーさんも苦笑い。
 
「ところで、これからシャルロットちゃんはどうするの?」
「えっと、私は甘味を探そうと思っています」
「甘味? 砂糖のこと? あれって、王侯貴族しか食べられないくらい高級品なのよ? それともハチミツのこと?」

 頭を振るう。

「それなら何を探すの?」
「チョコレートを探そうと思っています!」
「チョコレート? それって……、何? お父さん、知っている?」
「いや、聞いたことがないな。30年近く料理店をしているが、そんなの見たことも聞いたこともないぞ?」


 

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