異世界薬師~嫁ぎ先は砂漠の王国です~

なつめ猫

チョコレート事件(5)




「ふいー。すばらしいわ。お風呂ってすばらしいわ。毎日、入れるなんてすばらしいわね」
「ですよね!」

 ――いま、私とコルネットさんは露天風呂に入っていた。

「それにしても、シャルロットちゃんの魔法がお風呂を作る魔法とは知らなかったわ。そういえば生活魔法で水を作るのも一発で成功していたし、片鱗はあったわね!」
「そ、そうですね……」

 ハハハッと答えながら私は露天風呂風に作ったお風呂へと視線を移す。

 浴槽は土を炎の魔法で固めて作った。
おかげで水が漏れだすのを防ぐのと同時に浴槽内に土が解けるのも防いでおり、お湯は綺麗なまま。
そして、穴を掘った分の土は壁として周囲に張り巡らせていて通りから見ることは出来ない。
そして元々、裏庭を囲っていた板は浴室を作るために転用させてもらった。
おかげで薬師ギルド内からお風呂場までは地面を足につけずに来られるため、足が汚れることはない。

「でも、シャルロットちゃんの話だとエルトール伯爵邸って、お風呂があるのよね?」
「はい。昔からあったそうですけど使われるようになったのは私が魔法を使えるようになってからですね」
「――そ、そうなの!?」

 コルネットさんがゴクリと唾を飲み込んだ音が聞こえてきた
 彼女は何かを思いついたらしいけど、私は敢えて踏み込まないようにする。
 
「ね、ねえ」
「面倒事は駄目です。私は、しばらくぼーっとしていたいのです」
「そうなの? お屋敷で何かあったのかしら?」
「色々と面倒事が起きたのです。それはそれは恐ろしい出来事が……」
「ふーん」

 コルネットさんが、訝しんでいるけど「まぁ、いっか」と、お風呂に肩まで浸かってしまい浴槽に体を預ける。
 そんな彼女を見ていて私は驚愕した!
 胸がお湯の中で浮くのだ!
 前世でも! 転生してからも! 私の胸は浮くようにはできていない!
 何せ、日本にいた時は、そろそろ高校1年への入学前だったころもあり、まだ胸は成長段階前だったから!
 決して、言い訳をしている訳ではない!
 胸は、成長するときは成長すると言われている。
 つまり、私の場合は! まだ15歳という年齢だったわけで十分に胸が成長する余地があった! あったはずだった! そう! 転生さえしなければ! きっと……、たぶん……。

 そして、今の私は10歳のお子様。
 つまり胸が膨らんでいないのはデフォルトであり、胸が無いのはベターであり、胸が無いのは世の摂理である。
 
「だ、大丈夫。まだ、焦る段階じゃないし……」

 上から下までストーンと大平原であったとしても、これから成長する余地は十分あるし、お母様だって胸は大きい。
 つまり遺伝的には成長する余地があると言っても過言ではない。

 私は必死に自分を奮い立たせていると、コルネットさんが私の肩にポンと手を置いてきて「がんばりなさいね」と優しく微笑んできたけど、そこはスルーして欲しかった。

 お風呂から出た後は寝るところがないからと私はコルネットさんと一緒に寝ることになった。
 ケインさんと一緒に寝るわけにはいかないのはお察しの部分である。



 翌朝の朝食は食パンもどきとベーコンエッグで飲み物はお水だけど、そこは私が生活魔法で水を生み出し用意した。
 だって、井戸水が少し茶色く汚れていたから。
 ケインさんとコルネットさんは前からと言っていたから、もしかしたら水質はあまり良くないのかも知れない。
 そして朝食を口に運んでいると、馬の嘶きが聞こえた。

「なんだろうか?」

 ケインさんが立ち上がろうとしたところで、「私が見てきます」と、椅子から立ち上がった。
 ご飯だけでなく寝床も用意してもらっているのだ。
 少しくらいは恩を返しておかないと罰が当たるというもの。

 階段を軽い足取りで降りていく。
 そして店の中から窓越しに外を見ると、見たことがある馬車が店の前に停まっていた。

「――あっ……」
「シャルロット!?」

 馬車から降りようとしていたお母様と目が合った。


 

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