異世界薬師~嫁ぎ先は砂漠の王国です~

なつめ猫

メイドさんが増えました。




 国王陛下がお帰りになられてから、すでに3週間が過ぎていた。
 私は、エルトール伯爵邸の薬を調合する部屋で王家に卸すためのポーションを作っている。

 ――コンコン

「はい」
「失礼いたします」

 扉をノックして入ってきたのは若い男性。
 名前はカインさんと言いセバスさんの妹さんの子供。
 年齢10歳後半だけど、端正な顔つきといいきっと女性には人気だと思う。

 じつは現在、セバスさんはエルトール伯爵邸には居らず、フレベルト王国の王都に居る。
 理由は、王都で私が暮らすための住居の手配だけでなく他の貴族との兼ね合いで一ヵ月では王都滞在のための用意が困難だとアリエルさんから手紙が届いてお父様の命で手伝いに行った為。

「どうかしたの?」

 カインさんは将来、セバスさんの後継の家令の仕事に就くことになっている。

「じつは、ご当主様からお嬢様をお呼びするようにと」
「お父様が? 何かあったのかな?」

 私は首を傾げながら考えるけど、とくに思い当たるようなものはない。

「急ぎなの?」

 ポーションの材料である薬草を磨り潰していることもあり、今は手を離すことは出来ない。
 薬草から滲み出た液体は少しでも放置しておくと乾燥して薬効成分が変わってしまうから。

「新しく雇い入れる方との顔合わせということでしたので。無理そうでしたら、ご当主様にはお嬢様が参加できない旨をお伝えてしておきますが……」
「仕方ないわね」

 私は慌てて磨り潰していた薬草の分だけで傷薬を作り瓶に詰める。
 本当はポーションとして作りたかったのだけれど、傷薬でも薬師ギルドで販売するには十分だからと自分に言い聞かせる。
 
「カインさん、それでは行きましょう」
「はい」

 お父様は執務室に居ると言う事だったのでカインさんを供だって向かい――。

「お父様。シャルロットです」

 執務室の扉をノックしながら語り掛けると「入りなさい」と言う声が室内から聞こえてきた。
 中には10代後半の女性が二人と10代前半の女性が一人の計3人の姿が視界に入ってくる。

「彼女らは、以前にエルトール伯爵家に仕えてくれていた使用人の子供たちだ」

 お父様の説明になるほどと頷いてしまう。
 以前、勤めていた人達は他に就職してしまって改めて伯爵邸に勤めることは難しいのかも知れない。
 それにしても……、と思ってしまう。
 ずいぶんと若い人ばかりだなと。
 まぁ、10歳の私が一番若いのだけれど……。

「シャルロット・フォン・エルトールです。これからよろしくお願いします」

 3人とも私の自己紹介に呆気に取られてしまったようで。
 何かおかしなことを言ったのかな? と、自問自答してしまう。
 ただ、考えても答えは出てこない。

「――こ、こちらこそよろしくお願い致します。クロエと言います。年は17歳です」
「私は、ルシイと申します。15歳になります。シャルロット様の御傍でお仕えすることが出来て大変光栄です」
「ニナと言います。今年で18歳です。祖母の代からエルトール伯爵様にはお仕えさせて頂いておりました。この度は、未来の王妃様の身の回りをさせて頂けるとお聞きして大変うれしく思っております」

 どうやら私がカーレルド王国に嫁ぐことを3人とも知っているみたいで、悪くは思われていないみたい。
 お父様の方を見れば何度も頷いていることから、3人の返し方は想定の範囲内のことのようだ。

「はい。クロエさん、ルシイさん、ニナさん、よろしくお願いしますね」
「「「はい」」」

 それにしても、ずいぶんとエルトール伯爵家の雇用平均年齢も下がったものだと思ってしまう。
 
「体面上ではニナが、シャルロットの身の回りの世話をすることになった。彼女は、フレベルト王国の後宮で働いていたこともある。貴族としての振る舞いを教えてもらうといい」
「そうなのですか? それでは彼女は――」

 後宮で働けるのは、貴族の女性だけと決まっている。
 その為、お父様の言葉が少しだけ気になった。

「彼女は、北の領主ルフレ騎士爵の三女にあたる。国王陛下の推薦もあったがルフレ騎士爵も自身の領地に近いエルトール伯爵領に居た方が会いやすいという希望で預かることになった」
「そうなのですか……」




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