異世界薬師~嫁ぎ先は砂漠の王国です~

なつめ猫

婚約話(6)




「…………た、他国の侵略というのはどういうことでしょうか?」

 私の湿原でしょんぼりとしてしまったお父様を横目に見ながら話題を切り替える為に話を切り出す。
 国王陛下も気まずい雰囲気になってしまったことを実感していたのかも知れない。
 すぐに「――ん。そ、そうであるな」と、私の話題に乗っかってきてくれる。

「今までフレベルト王国が他国から侵略されてこなかったのは何故か知っておるか?」
「えっと詳しくは……」

 さすがに特産物が何もなくて侵略しても旨味がない国土だから放置されていたとは言えないので答えは国王陛下へとパスすることにする。
 これ以上、余計な事を言ってフォローすることになったら面倒だし……。

「フレベルト王国は、大陸の最南端に位置しておる。そして南には巨大な山脈が聳え立っており海岸線に出ることが出来ず港を作ることが出来ない。さらに東には砂漠の王国カーレルド王国が存在していることから軍事・経済の面から見ても周辺諸国からは侵略する必要性が低い国と見られているのだ」
「そうなのですか……」

 訳すると侵略する価値の無い国という事になるのね。
 
「うむ。だが、シャルロットが作る薬は今まで薬師が調合していたどの薬よりも実用的であり、それだけで他国の薬師ギルドだけではなく冒険者や軍が欲しがる。怪我をした場合に傷口を塞ぐだけでなく治す事も出来るのだからな」
「……」

 普通の傷薬だけでそこまでということは……、エリクサーもどきを出したら大変な事になりそう。
 でも、これは言っておいた方がいいよね……。

「あの、陛下」
「何か?」
「えっと、エリクサーに近い物を私は作ることが出来るのですが……。カーレルド王国の王子様もそれで完治致しましたので……」
「――な!? まさか、さっき薬を作ると言ったのは……」
「はい。エリクサーになります。でも本物のエリクサーではありませんけれど……」
「そ、そうであったのか……」
「シャルロット、エリクサーを作れるのかい?」
「はい。お父様」

 とたんに国王陛下とお父様の表情が険しくなる。

「ルーズベルト伯爵。さすがにエリクサーは想定外であったぞ? だが……、嬉しい誤算でもあるな」
「……シャルロット。エリクサーの作り方はシャルロット以外に知っている人はいるかい?」
「知っている人……」

 記憶の糸を手繰るけれど知っている人と言えばアリエルさんの傍で作っていたからアリエルさんくらいだと思うけど……。
 でも言ったらアリエルさんの処遇が絶対にやばくなるのは国王陛下とお父様の表情を見ても明らかで――。

「いいえ、私とニャン吉以外は知らないです」
「……ふむ」
「そうか」

 二人とも表情を緩める。

「フレベルト国王陛下。カーレルド王国から来た使者としてはやはり伯爵令嬢様に、カーレルド王国に嫁いでもらいたい」
「それは、さっき断ったはずだが?」
「我がフレベルト王国の第一王位継承権を持つ殿下が王位継承権を失うのは他の王子達が政争を行う格好の餌となりかねないというのはご理解頂いているはずですが?」
「シャルロットは、エルトール伯爵家令嬢でありエルトール伯爵家はフレベルト王国に忠誠を違う貴族。我が国の貴族の問題に関して口出しをするのは内政干渉に当たる。そこは、どう考えているのかな?」
「――そ、それは!?」
「そもそもエルトール伯爵家令嬢であるシャルロットがカーレルド王国の王子を助けたのも偶然であろう? それを接吻したという理由でもらい受けたいというのは些か虫が良すぎるのではないのか?」
「……失礼を承知でお伝えしますが、エルトール伯爵家令嬢が薬製作に関わっていることをしらない時に手紙をお渡しした際には、我がカーレルド王国から鉱物資源の提供を毎年行うという約束で嫁がせるという約束を頂きましたが?」
「――ええ!?」

 私って物扱い? 

「ち、違うのだ! あの時は口約束に過ぎない。シャルロットには多くの可能性があると思ったからこそ――」
「つまり……、私に何の価値もない場合は鉱物提供と引き換えに隣国に売り渡していたということですか……」
「――あ……」
「ルーズベルト、どういうことですか!」
「い、いや。私も何のことか……。陛下、どういうことでしょうか?」
「こ、これにはいろいろとあってだな……」

 慌てている国王陛下を見ていると先ほどまで思っていた私って必要とされている! と舞い上がっていた気持ちが一気に覚めた。

「そういえば……、フレベルト王国ってエルトール伯爵領から薬師ギルドを撤退させようとしていましたよね? ということは……、あまりエルトール伯爵領を重要視していなかったと言う事ですよね?」
「……」

 無言になってしまう国王陛下を見て、それって私の言葉を肯定していることになるのですけれど! と、心の中で呟きながら溜息をついた。
 どうやら、フレベルト王国は調子がいい王族が治めている国っぽい。
 そんな国の王家に嫁いで本当にいいのかな?




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