異世界薬師~嫁ぎ先は砂漠の王国です~

なつめ猫

婚約話(4)




「あの……」

 どうやら異世界では、間者に対してはかなり厳しく対応しているらしくて身分制度もある事からアリエルさんの刑を軽減するのは難しそうで。

「何か他にあるのか?」
「えっと、アリエルさんの事ですけど……、問題を不問にすることは出来ないですか?」
「不問に?」

 国王陛下は、私の方ではなくお父様の方へと視線を向けている。
 お父様も国王陛下と目で語り合っているように見えてしまう。

「――さて、どうしたものかのう。日本という国から転生してきたお主は貴族をどう思っているのだ?」
「どう思っていると言われても……」
「思ったことをそのまま話すだけでよい」
「えっと、市民から税を集めて国に納めることや兵士を雇って治安維持をする役職を持った人でしょうか?」
「なるほどな。ルーズベルト伯爵、シャルロットは貴族の何たるかを良く理解していないようであるが、どういう事なのだ?」
「教育と言いましても、王都の貴族学院には通わせておりませんので。それに辺境の地ですので貴族の風習については教えてはおりません」
「…………そうか」

 お父様の説明に国王陛下は深い溜息をつく、
  
「あの……」
「何だ?」
「私の国では、一応は君主制度がありましたけど政治を行っているのは基本的に一般市民から選挙で選出された人なので貴族制度とは趣が異なっていると思うのです」
「一般市民が、国の政を行っているだと!?」

 私が貴族制度をよく分からないと説明した時よりも国王陛下は驚いていた。
 
「はい。一応――」
「なるほど……、どうりで間者がどれだけ危険な存在なのかが理解出来ていないはずだ。学のある人間ならば間者を野放しにするようなことはしないからな」
「えっと……、学が無いよりかは……、一応、学はあります。日本の識字率は100%ですし……」
「――い……いま……、何と?」
「ですから日本国民は全員が文字の読み書きができますので学が無いと言われると少し困ります」
「ぜ、全員が文字の読み書きが出来ると言うのか?」
「はい」 
「信じられん……。フレベルト王国の識字率は5%にも満たないと言うのに……、それなのに、どうして間者に対しての対応が不適切なのだ……」
「えっと……、平和だからでしょうか?」

 日本は世界一平和な国だと言われていたし……。
 きっと、それで間者が居ても問題視されていないのかも。
 
「平和という言葉で片づけてしまっていいものなのか……」
「陛下、我々の国と異世界では理が違うのでしょう」
「――だが、国の在り方と言うのは人の集まりだ。そんなに大きく変わることは無いであろう? ――シャルロットよ」
「は、はい!」
「お主の意見を聞く前に、まず聞くことがある」
「何でしょうか?」
「日本という国を教えてもらいたい」
「日本についてですか?」
「うむ。まずはお主の価値観が分からないとどうにもならないからのう」
「それって、アリエルの事もですか!」

 私の問いかけに国王陛下は頷いてくれる。
 きちんと私が説明すれば、アリエルさんを助ける事が出来るかもしれない。

「どうだろうか?」
「ぜひ! 説明させてください!」

 お母様が、隣に座るようにと手招きしてくる
 椅子に座りながら自分が思ったよりも体が疲れていることに気が付いた。
 だけど、それを口にする訳にはいかない。
 いまは家族であるアリエルさんの事もあるから。

「それでは説明させて頂きます。私も中学校までしか卒業しておりませんので、ご了承ください」
「よい。まずは、国の定義を教えてくれ」
「国の定義?」
「うむ。人口がどのくらいいるのか、国の大きさ、国の歴史などでよい」
「人口は、1億2千万人くらいでしょうか? 国の土地は38万平方キロメートルです。海域を含めて485万平方キロメートルです。国の歴史は2600年近くあると聞いたことがあります……あれ? どうかされましたか?」

 国王陛下だけではなく、お父様やお母様にアリストさんですら無言。
 
「シャルロット。それって、本当の事なの?」
「はい。お母様」
「そうなのね。シャルロットが暮らしていた国はすごいのね。ところでヘイホウキロメートルって何なの?」
「えっと……、私が横になって1メートル少しだと思うので……、それを1000人くらい並べて1キロで平方メートルは縦横1キロを掛けたものなので……」
「もうよい」
「国王陛下?」
「シャルロットの居た国がフレベルト王国よりも遥かに大きな国だと言うのが分かった。だが、それだけの大国ということは多くの文化があるのだろう?」
「ええっと……、はい――。たぶん……」
「うむ。その知識の一部で良いからフレベルト王国の利になりそうな物を提示してくれるのなら王家が後ろ盾になりアリエルの事についてはお主の一存で決めてもらっても構わない。どうであろうか?」
「本当ですか?」
「国王陛下!?」
「ルーズベルト伯爵。シャルロットについては、王家に嫁ぐということでどうであろうか?」
「「――ええ?」」

 私と、アリストさんの言葉が重なる。

「フレベルト国王陛下。カーレルド王国としては王子の婚約者としてシャルロット・フォン・エルトール様をとお伝えしたはずですが? 承認してくださってではありませんか!」
「それは、エルトール伯爵令嬢の価値を知らなかったからだ。知っておったら他国に嫁がせるわけがなかろう」
「え? ちょっと待ってください! どうして私がカーレルド王国に嫁ぐって話になっているのですか?」
「シャルロット様」
「は、はい?」

 アリストさんは私に手紙を差し出してくる。
 受け取って読んでいくと、どうやら私が助けた褐色の肌の少年はカーレルド王国の第一王位継承権を持つ王子だったらしく、最初に接吻をした女性と結婚することになっているらしいとのこと。
 つまりファーストキスを奪ったのだから責任取って結婚しろってことらしい。
 不可抗力とは言ってもやってしまったことは仕方ないけど……、責任を取れと言われても困る。
 ――でも、国王陛下が私の価値を見て王家に嫁げというのも何だか物扱いされているみたいでいい気はしない。

「あの……、ファーストキスというか最初に接吻した異性と結婚しない場合はどうなるのですか?」
「カーレルド王国では、王位継承権を失います」
「――ええ!? お、お母様……、どうしましょう?」
「あらあら、シャルロットったらモテモテじゃない」

 モテモテって……。
 そんな言葉、異世界にあったんだ。
 
 



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