異世界薬師~嫁ぎ先は砂漠の王国です~

なつめ猫

婚約話(3)




「ハッ。本当のことです」

 国王陛下が椅子に座り直しながら「なるほどな」と、お父様の言葉に相槌を打つ。
 ちなみに部屋にはお母様、そして隣国の使者であるカーレイド王国の方も居るけど空気である。

「ルーズベルト伯爵よ。商業ギルドの事に関してはどうするつもりだ? 考えを聞かせてもらいたいのだが」
「首謀者である商業ギルドのギルドマスターであるカルロについてはユークリッド王国に拠点を置く商業ギルド【ベルンハルト】の確認が必要になってくると思います」
「ふむ……。さすがに北に覇を説く大国であるからな。その国に深く根付いている大商会の幹部を領主の権限では処理はできないか」
「はい。かなり難しいと思います。さすがに、エルトール伯爵領だけではなくフレベルト王国内にもかなりの支部が存在しますし、何より他国にも支部を持っていますから」

 お父様の言葉に国王陛下が白くなった顎髭を触りながら私へと視線を向けてくる。
 表情は何やら笑っていて嫌な予感が……。

「実際に暴行されたシャルロットとしては、どう思っておるのだ?」
「私ですか?」

 部屋に入ってきてからずっと立っていた私は右手人差し指で自分自身を差しながら国王陛下に言葉を返していた。
 いきなり声を掛けられたのだから仕方ない。
 
 ――でもカルロ達の進退を私に聞かれても困る。
 それは領主が決めることであって私が決めることではないと思っていたから。

「うむ。素直に答えればよい」
「素直に……」

 国王陛下の態度を見るに素直に答えるのは良くないと直感している。
 それに素直に答えると言っても私の意見では襲ってきた冒険には厳罰を与えて欲しい。エルトール伯爵邸を狙ってきた人達に対しては恐怖を覚えたし、アリエルさんも怪我をしたし何より農作物が保管された食糧庫を燃やされたから。

「私としては、きちんと罪を償ってほしいと思います。――でも、商業ギルドが無くなるのは問題だと思っています」
「ふむ……。なるほどな……、ルーズベルト伯爵」
「ハッ」
「私としては、シャルロットの意見を参考にするのが良いと思うのだが、どうであろうか?」
「それは……」
「気にすることはない。商業ギルドの代わりはエルトール伯爵家が行えば良いではないか。薬師ギルドに関しても優秀な薬師には国内には居てもらいたいからのう。王家としては、特別に計らうことを約束しよう」
「陛下がそこまでお考え頂いているのでしたら……」
「うむ。――では首謀者のカルロについてはフレベルト王国の方で対処するとしよう。さすがに、他国の手前もあることであるしこのままという訳にもいかないからのう」
「ハッ、それでは他の者の処遇については私が――」
「うむ。それと……」

 国王陛下が私の方をチラリと見てきた。

「どうやら間者が紛れ込んでいたらしいが、その事についてはどうするのだ? 不問に帰す事は、他の領主に示しが付かないであろう」

 その言葉にお父様は無言になると私の方を見てくる。
 
「ふむ……。その事については娘の意見を聞きたいのか?」

 お父様の視線に気が付いた国王陛下が言葉を紡ぐけど……。

「シャルロットは、どうしたいんだい?」
「――私は、アリエルさんには何か事情があると思っています」

 私の言葉に反応したのは国王陛下で「だが、どんな事情があるにしても間者であり雇用主である貴族を裏切ったという事実は曲げようの無い事実なのだぞ?」と、話しかけてきた。

「それは……」
「それは?」

 私にどんな答えを期待しているのか分からないけど……。

「日本では、どんなに罪があっても事の経緯で裁判官が情状酌量の余地があるとすれば罪が軽減されます! それに精神的に問題があれば罪に問われないこともあります!」
「日本か。そういえばシャルロットは転生者であったな。ずいぶんと犯罪者に甘い国であったのだな。そんなことでは同じ人間が何度も罪を重ねていたのではないのか?」

 たしかに国王陛下の言うとおり日本は犯罪者に甘い国で被害者の人権を蔑ろにしている部分が多い。
 私は無言になってしまう。

「王政と言うのはトップに王が居る。そしてその下は貴族が居て民を管理する形を取っている。つまり民が反乱を起こす行為や上の身分の者に対して不利益な行動を起こす事をされれば国体の維持が難しくなる。それは分かるな?」
「はい」
「他の領主への示しと言う事もあるが、それ以上に民への見せしめという意味もあるのだ。間者に対して恩赦を与えていたら、国の機密の保持の問題に関わる。シャルロットが居た日本という国は間者に対してどうであったのだ?」
「……間者に対して……」

 たぶんスパイに対してだと思うけど……。
 あまりそう言う事に興味は無かったので知らないけど、少なくともニュースではスパイとかそういう話は無かったような……。
 ――でも、今は知りませんでしたって答えるのは不味いと思うし。
 …………あっ! そういえばスパイ防止法案と言うのが国会で審議されているって聞いた気がする! 成立したかどうかは知らないけど……。

「どうなのだ?」
「――国会。えっと……、国の偉い人達が間者に対して取り締まる法案を作るかどうか審議していました」
「審議していた?」

 国王陛下は溜息をつくと「どれだけ平和な国なのだ。間者を取り締まるなど審議する必要すらないであろうに」と、呆れていた。


 

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