異世界薬師~嫁ぎ先は砂漠の王国です~

なつめ猫

婚約話(1)




 部屋から出てアリエルが居る部屋へ向かおうとすると外が騒がしい。
 窓の外を見る。

「あれは何?」

 私は一人呟く。
 エルトール伯爵邸、正面には100騎を超える騎馬兵――、しかも着ている鎧や帯剣も立派な物。
 それに今まで見たことが無いほど立派な馬車が存在していた。

「お父様やお母様が見たこと無い人と話している?」

 緑を基調としたローブに身を纏っている老人。
 背丈は、お父様よりも一回りは小さい。
 
「セバスさん?」

 よく見ると少し離れた位置にセバスさんの姿も見える。
 たしかセバスさんは王都に行ったとお父様は言っていた。
 そのセバスさんが戻って来たと言う事は……。

「もしかして……、見える兵士さんは全て王宮から派遣された人達? それに、あの髪の毛が薄い老人も王宮関係の人?」

 それにしても兵士の数が尋常ではない気がするけど……。
 何やら話していたけれど、当然のことながら声は聞こえてこない。 
 しばらくすると両親は老人を館の方へと案内したので見えなくなった。

「一体、何が……」
「シャルロット様!」
「セバスさん?」
「こちらに居られましたか。至急、執務室へ来ていただけますか?」
「――え? 私が?」
「はい。当主様のご指示です」

 何だろうか?
 子供の私が話し合いの場に顔を出す必要性を感じないのだけれども……。
 それにアリエルと話したい事があっただけに困ってしまう。
 
「セバスさん。アリエルさんのことは……」
「伺っております。ですが今は優先するべきことを先にすることが重要です。フレベルト王国の国王陛下も待って居られますので……」
「――こ、国王陛下!?」

 なるほど……。
 それなら、あれだけの騎馬兵が一緒に来るのも納得がいくというか……、むしろ少ないくらいで――。

「わかりました」

 さすがにアリエルさんを優先にして国王陛下を待たせる訳にはいかない。
 すぐにセバスさんと共に国王陛下が待っている執務室に向かう。
 
 ――コンコン

「シャルロットです」

 室内からお父様の声で「入りなさい」と聞こえてくる。
 扉を開けて中に入ると室内で待っていた4人――、両親と老人とアリストさんが私を見て来た。

「陛下」
「うむ。君がシャルロットでいいのかね?」
「は、はい。シャルロット・フォン・エルトールと申します」

 スカートの裾を掴みながら頭を下げる。

「ふむ。最低限の礼儀は心得ているようだ。ところで聞きたいのだが……、献上された薬を作ったのは君でいいのかね?」
「――え? あ、はい!」
「なるほど……」

 何がなるほどか分からないけど、お父様やお母様の反応を見る限り問題は無さそう。
 ホッと一息つくと。

「それが本当なら、ぜひフレベルト王国の――、私の孫と婚姻を結びたいところなのだが……」

 そう言うと国王陛下の視線が部屋の隅に向かう。
 そこにはニャン吉が座って鰹節を削っていた。
 一国の王が居る場所で鰹節を削るとか何を考えているのか意味が分からない。
 そんなに鰹節をアピールしたいのか……。

「コホン。と、とこで……、さっきから気にはなっていたのだが……、まさか、そこに居られるのは……」
「はい。娘の守護精霊です」
「そ、それでは……。ま、まさか……。精霊王ニャン・キンドル・チュードル様であらされますか?」
「うるさいニャ。鰹節は均等に削るのには集中力が必要だから話しかけるニャ」
「ハハッ! 申し訳ありません!」

 一国の王が猫に土下座をした。
 それにしても、精霊王ニャン・キンドル・チュードル様とか、久しぶりにそんな設定を聞いた気がする。
 まさか、本名だったとは……。
 まぁ、ニャン吉って名前は訂正しないけどね。

 とりあえず国王陛下がいるところで鰹節を削っていたからという理由で不敬罪にならなくてよかった。

「ニャン吉、どうしてこんなところにいるの?」
「……ぷい」

 ニャン吉が私から視線を逸らした。
 イラッてきた。
 とりあえず尻尾を掴んでクルクル回しながら扉を開けて廊下に放りだす。
 ニャアアアアアって声が聞こえてきたけど知った事か。

「ふう。少しはさっきのお返しができた」

 扉を閉めると、両親は二人揃って溜息をついていた。
 ちなみに国王陛下は顔を真っ青にして、カーレルド王国の使者でもあるアリストさんは苦笑していた。

「君は精霊と仲がいいのだな?」

 国王陛下の言葉に私は首を傾げる。
 仲がいいのかと言えばどうなのだろう? と――。

「はい。仲良くさせてもらっています」

 どうやらニャン吉はフレベルト王国では結構地位が高いらしい。
 無難に答えておくのがベストなのかも。
 部屋から追い出したのは失敗だったかな? 

 

 

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