異世界薬師~嫁ぎ先は砂漠の王国です~

なつめ猫

心の在り方(11)




「……ただいま……」
「おかえりニャ」
「あれ? お母様は?」

 戻ってきて部屋に入ると出迎えたのはベッドの上でゴロゴロとしているニャン吉だった。
 
「分からないニャ。人間は色々とやる事があるから、その対応じゃないかニャ?」
「そう……」

 答えながら私はベッドの上で横になる。
 ベッドの大きさは、ダブルベッドのサイズがあるから子供の私だと大きすぎるけど、今はニャン吉もいるから丁度いい。

「どうかしたニャ? もしかしてアリエルと会ってきたニャ?」

 心の整理がつかない私に、ニャン吉が聞いてくるけど、心の整理がついていない私は「……うん」としか答える事が出来ずに、ベッドの上に置いてある大きな枕に顔を埋めた。
 
「ううっ……」

 心の整理なんてつく訳がない。
 前世の記憶を思い出したと言っても、小さい頃からの記憶は私の中で曖昧だけれども覚えているのだから。
 そして、その記憶の中では……、アリエルさんは私にいつも優しかった。
 まるで家族のように。
 それはセバスさんも同じで……。
 一緒に暮らしていたからこそ感じていた愛情だった。
 でも……。
 それが嘘だと――、私が嫌いだと……、アリエルさんは言っていたのだ。

「――後悔しているニャ?」
「…………」
「自分が求めている答えを聞けずに後悔しているニャ?」
「分かんない……、分かんないよ。私は、どうしたらいいのか分からないよ」
「そうかニャ。だから、アリエルと話すのは止めた方がいいと言ったニャ」
「――え?」

 ニャン吉は、転生者をサポートする存在って言っていたから悩みを聞いてくれると思っていたのに……。
 それなのに――。

「甘ったれるのもいい加減にするニャ!」
「……ニャン吉?」

 いきなりな言葉に私は驚いてニャン吉を見る。
 ニャン吉は真剣な表情で私を見てきていて。

「クリステルは、どうか知らニャいけれどアリエルに会いに行ったのは、それを決めたのはシャルロット本人じゃないニャ?」
「……そ、そうだけど……」
「なら、自分が確かめたいと行動した結果が答えが満足できないのは違うと思わないニャ?」
「それは……」
「答えが満足できないから不貞腐れるニャんてお前は何様ニャ? 自分の行動が結果的にどうなるにせよ、それを正面から受け止めるのが社会人というものニャ! それが、納得できないから、そんな私は可哀そうとか何様ニャ? 悲劇のヒロインぶって同情を引きたいニャ?」
「そんな言い方しなくたって……」

 あんまりだ。
 ニャン吉には、私がどれだけ人から裏切られて苦しいのか分かってないとしか思えない。

「いいや! 言ってやるニャ! ずっとシャルロットを見てきたから吾輩だから言ってやるニャ! シャルロットは、15歳でこの世界に転生してきたニャ! そして今は10歳ニャ。つまり合計25歳ニャ! 日本でも20歳で成人になるニャ。成人ってのは自分の言動や行動に責任を持つことが出来る人間を指す言葉ニャ! それに比べてシャルロットは、自分の行動に責任を持つどころか、いつも他人に共感してもらって手を引いてもらって守ってもらおうとしているだけニャ! 自分の起こした行動に一つだって責任を持ったことがあったニャ?」
「責任って……、そんなこと言ったって……。まだ10歳……」
「いい加減、言い訳をするのは止めるニャ!」

 ニャン吉が右手に鰹節の塊を持つと私に向けてくる。

「クリステルは、どんな結果になっても後悔はしないようにって言っていなかったニャ?」
「――え? ニャン吉……。お母様との話を聞いていたの?」
「偶然、戻ってきた時に聞こえたニャ」
「立ち聞き……」
「そんな事はどうでもいいニャ! そんな後悔していますって顔されてクリステルがどう思うか考えた事があるかニャ? それに吾輩が、アリエルと話すことはいけないって注意したことも忘れたニャ? 正直言って、他人に真実を訪ねるのに何の覚悟も信念も持たずに中途半端に行動したことに対して吾輩はガッカリしているニャ」
「――で、でも……」
「甘ったれているんじゃないニャ! シャルロットは、周りがどれだけ君に対して心を砕いているのか分かっていないニャ! 相手の真意を知りたいなら、自分の心の内を曝け出してぶつかるくらいの覚悟を持つニャ!」
「覚悟……」
「そうニャ。誰かに本当の事を話して欲しいなら、相手の真意を知りたいなら自分の気持ちに素直になって聞くくらいじゃないと駄目ニャ」
「――で、でも……。話をして嫌われたら……、それに聞いてくれなかったら……痛っ!?」

 ニャン吉が鰹節を丸ごと私の頭に投げつけてきた。
 コーンと音が聞こえて――。

「頭の中は空っぽニャ?」
「空っぽって……」
「きっとシャルロットの身内は誰も言わないと思うから言っておくニャ。失敗する時の事を考えて怯えて行動しないのは愚かな事ニャ。出来る出来ないかじゃないニャ。人の気持ちを知りたいなら、やるかやらないかニャ」
「やるかやらないか……」
「シャルロットは自分の気持ちを、アリエルが好きだって気持ちをきちんと伝えてきたニャ? 家族だって伝えたニャ?」

 ニャン吉の言葉に、ハッ! とする。
 私は頭を左右に振った。
 
「一方的に言われて……、それで――」
「このヘタレロット!」
「――!? ニャン吉!?」
「何か文句があるニャ? 自分の気持ちも伝えられない奴はヘタレロットで十分ニャ。まったく、自分の気持ちも伝えていないのに、拒絶されただけで悲劇のヒロインとか笑っちゃうニャ。ヘタレロットには鰹節1グラムの価値もないニャ!」
「わ、私だって! ――って!? どこに行くつもりなの!?」
「ヘタレロットと一緒に居ても仕方ないから少し散歩に行ってくるニャ」

 ニャン吉は、それだけ言うと部屋から出ていってしまう。
 私は茫然とニャン吉の後ろ姿を見送ったけど――。
 ニャン吉が言っていた言葉を思い出すとイライラしてくる。
 悲劇のヒロインぶっているだの、私の言葉には信念もないし行動に対しての覚悟もないと言いた放題言って部屋から出ていった。

「何が……、ヘタレロットよ……。いいわよ! こうなったら、私がどれだけアリエルさんの事を思っているのか言ってやるんだから!」

 



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