異世界薬師~嫁ぎ先は砂漠の王国です~

なつめ猫

お化け屋敷ですか? いえ、魔物屋敷です。



「お化け屋敷?」

 馴染みの無い言葉に、首を傾げるお母様を他所に私は部屋から出ると屋敷の外へ向かう。
 館の外に出た後、屋敷周囲全体を栄養価の高い雨である【肥料】を含んだ雨を降らせる。

「こ、これは――!?」
「肥料を含んだ雨です」
「肥料?」
「はい。簡単に言えば草木が元気になる、成長を促進させるための魔法です。まだ、実験も何もしていませんでしたけど――」

 お母様と話をしている間にも草木がグングンと成長していく。
 セバスさんが綺麗に手入れしているお庭に蔓や巨大な樹木が出現していき、その様相はまるでアフリカの原生林のようで。
 
 ――思ったよりも本格的な肥料雨の魔法は自然界の生態系に大きな影響を与えることが分かった。
 それと同時に、隠れて試さなくて良かったと内心思ってしまう。
 今回は、屋敷や家族を守るため! そして襲ってくるかも知れない人達を撃退する為という名目があるから問題ない!

「キシャアアアアア」
「――ん?」
「――え?」

 何か聞こえてきた気がする……。
 振り向くと、たくさんの木々や花々がワラワラと歩いていた。

「シ、シャルロット……、あれは?」
「えーと……」

 私は額から汗を垂らしながら、お母様の手をそっと握るとエルトール伯爵邸の中に入って玄関の扉を静かに占めた。
 近くの部屋の窓から外を見ると、ワラワラと動く動植物の姿が良く見える。
 
「うーん……」
「あれが、お化け屋敷なのね! あれで兵士を撃退するのね!」
「えーと……」

 お母様は、「すごわね!」と、感心している。
心の中では、お化け屋敷ってそういうものではないのだけれども! とも言えずに私は小さく頷いた。

 怪我の治療を施したアリエルさんと妹のセリーナを私とお母様で地下まで運び終わったあと――。
 一人、エルトール伯爵邸の屋根の上に移動していた。
 私の体は軽いから体に掛かる重力を軽減させれば、子供の脚力でも20メートル近く飛び上がれてしまう。
 そうすることで、エルトール伯爵邸周辺に作り出した魔物がどうなっているのかを確認する。

「――あれ? 一か所に集まっている?」

 よく見ると数百もの魔物が一か所に集まっている。
 一匹一匹の大きさが5メートル近くあるから、とってもわかりやすい。
 木の魔物――、トレントと命名しておこう。トレントなんて10メートル近くあるし……。
 花の魔物なんて、地球でいう所のラフレシアみたいに成長していて大きさが5メートルあって蔦で動いていたりして。

「うあああああ、魔物がああああああ」
「何で、こんな所に魔物がいるんだ!?」
「エルトール伯爵領に魔物が居るなんて聞いてないぞ!?」
「カルロ様! このままでは全滅します!」
「どういうことだ!? 魔大陸の魔物がこんな辺境に居るなんて、こんなバカな事が!」

 どうやら私が作ってしまった魔物は、エルトール伯爵家を襲撃にきた人達と遭遇したみたいで戦いが始まっているみたい。
 それにしても魔大陸なんて聞いた事がない。
 今度、本格的に世界の地理について勉強した方がいいかも。
 私が見ている中、襲撃にきた人達は次々と魔物に倒されていく。
 
「カルロね……」

 私は襲撃してきた一人が口走っていた名前を呟きながら、魔物の影から時折見える人影の中から一人の男性の顔を見つける。

「やっぱり商業ギルドの――」

 彼が、どうして私達に危害を加えてくるのか分からない。
 まずは捉えて、どうして襲撃してきたのかの経緯を聞く必要がある。
 幸いエルトール伯爵邸は町からは遠い場所に位置しているから、魔物が町を襲う前に何とかすればいい。

「何とかって……、どうやって魔物を倒せばいいのかな?」
「カルロさまああああああ」
「おのれえええええ」

 戦いの音は気が付けば消えていて――。

「あれは……」

 カルロを含めて、全ての襲撃者の体が透明な物で固められている。
 樹液? と一瞬思ってしまうけど、とりあえず私は酸性を含んだ雨を降らせた。
 私がトレントと命名した魔物たちは、酸性雨であっという間に萎れていき館の周辺には枯れた草木が散乱する。
 あれだけ綺麗だったお庭が見る影もない。

「セバスさん、ごめんね」

 重力軽減の魔法を自分自身にかけて屋根上から飛び降りる。
 地面に降り立ちカルロ達に近づく。

「あれだけの高さから飛び降りて無傷……だと……? 兵士達が、間者のアリエルから聞いた話は本当だったのか……。初めて会った時に、どこか普通の子供とは違うと思っていたが、まさか……召喚魔法すら使う化け物だったとは……」

 襲撃者たちが怯えた目で私を見て呟いてくるけど――。

「どういうことなの? 間者って、何を言っているの!」
「そのままの意味だ。アリエルは、エルトール伯爵家を切り崩す為の間者で――」

 カルロが嘘をついているようには見えないというよりも、捉えられた状態で嘘をつく意味はない。
 
「シ、シャルロット……」
「お母様!?」

 屋敷に入る扉から出てきたのは、お母様とアリエルさんだった。
 そして、お母様の首元には刃物が当てられていた。



  

  

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