異世界薬師~嫁ぎ先は砂漠の王国です~

なつめ猫

暗躍する者達(3)




「ありがとうございます。しばらくお待ちください。私の方からお母様に伝えて参りますので――」

 私の言葉に、二人はホッとした表情を見せると共に「分かりました」と頷くとテーブルの上に用意した水に口をつける。
 そんな彼らの様子を見ながら私は客間から出ると食堂に向かう。

 ――その途中で、アリエルさんとバッタリと会った。
 
「シャルロット様、兵士の方が来られていたようですが何かあったのですか?」
「はい。どうやらシャンティアの町で問題が起きたようです」
「シャンティアの町で!?」

 アリエルさんは「まさか……」と、顔色を変えていた。

「すぐに影響が出るような事は無いようなので安心してください」
「そ、それで――」
「はい?」
「倉庫への被害は、どの程度で……?」
「フレベルト王国に治める小麦が全焼したと報告を受けています。お母様に今後の対応を含めて相談をしないといけませんので」

 私の言葉に、アリエルさんは一瞬だけ逡巡すると

「分かりました。その兵士の方々には私の方から食事を出しておきます。馬で来られたと思いますので多少は空腹かと思われますので――」
「お願いします」

 彼女の心遣いに頷き別れる。
 水を出す事は考えついていたけど、食事についてまでは考えが巡っていなかった。
 食堂の扉を開けると、お母様が椅子に座っていてセリーナを抱いていて私に気が付くと。

「シャルロット? そんなに怖い顔をしてどうかしたのかしら?」

 どうやら、お母様は兵士が来た事について気が付いてはいないよう。
 寝ている妹を起こさないように近くまで行ってから椅子を引いて座る。
 
「お母様。シャンティアの兵士の方が急な用と言うことで来られました」
「兵士の方が?」
「はい」
「それは、本当にシャンティアの兵士さんなの?」
「そう言っていましたから間違いはないと……」
「…………そう。それで何か言っていたの?」
「シャンティアの北の倉庫が何者かにより放火され王国に税として治める予定であった小麦が全焼したと――」
「……全焼ね。その時に警備に当たっていた兵士の方は何も見なかったのかしら?」
「交代前の兵士が行方不明だったそうです。その時に放火されたのではと言っていました」
「……兵士の方は客間にいるのよね? 少しセリーナを見ておいてもらえるかしら?」
「――え?」

 私の返事を待たずに妹セリーナの体を私に預けてくる。
 両手で妹を無意識の内に抱きかかえるとお母様は椅子から立ち上がり食堂から出て行った。
 食堂に残されたのは私とセリーナだけ。
 抱きかかえている妹は未だに目を閉じて寝ている。

 ……それよりも、兵士の方に直接、お母様が話を聞きにいくなんて考えもしなかった。
 少しでもお母様の負担を減らそうと思って行動したのに……、これじゃ意味がまったくない。
 それに何より兵士の方に2度説明をさせてしまうなんて――。
 それでも、私が出来ることは何もない。
 
「はぁ……」
「あーうー」
「セリーナ?」
「あう!」

 落ち込んでいると妹が私に話かけてきた。
 本当に話しかけてきたかどうかは分からないけど、それでも妹を抱っこしていると少しずつ気持ちが落ち着いてくる。
 私は、妹を守る立場にあるお姉ちゃんで、しっかりとしないといけない。

「落ち込んでいる暇なんてないよね……。この世界のことを勉強してシッカリとしないと!」

 妹をあやしているとお母様が戻ってきた。
 服装も着替えていて一目で外行き用だと言うのが分かる。

「お母様?」
「シャルロット。シャンティアに行ってきますから家の留守は頼んだわよ?」
「――お、お母様。私も一緒に!」

 シャンティアの町で何が起きているのか詳しくは分からないのだ。
 そんな状況で、快方に向かっているとは言えお母様を一人で行かせる訳にはいかない。

「大丈夫よ? アリエルも一緒に同行することになっているから。今日中には、戻れると思うから」
「――で、でも……」
「貴女が私の体を心配してくれているのは痛いほど分かるわ。でも、貴女は10歳の子供に過ぎない以上は、これは親の仕事なの。少なくとも周りはそう見るわ」
「……」
「それに、セリーナをシャンティアに連れていく訳にも行かないから」

 お母様の言葉に私は仕方なく頷く。
 思うところは色々とあるけれど仕方ない。
 私は、妹を両手で抱きしめながら二人の兵士さんが、お母様とアリエルさんを馬に乗せ町に向かっていく後ろ姿を見送る事しかできなかった。




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