異世界薬師~嫁ぎ先は砂漠の王国です~

なつめ猫

生活魔法(4)

 翌朝、お父様は町に一人で出かけてしまい私は朝食を摂った後、暇になってしまった。
 いつもなら刺繍をしたりしているけど、今日からは試したいことがあるから一人、エルトール伯爵邸の庭に来ていた。

「いつも思うけど、庭師の仕事まで出来るセバスさんの万能ぷりがやばい――」

 庭を見渡す。
 何の花かは分からないけど黄色や赤に白い花が綺麗な対比で咲いている。
 ただ、一人だけ問題があって。

「これは下手に弄れないよね」

 整然とした庭を見ながら、私はため息をつく。

「シャルロット様? どうかしたのですか?」
「アリエルさんは?」

 そこにはアリエルさんが立っていて木の板で作られた桶を両手で持っていた。

「しばらくはセバスが屋敷を留守にするようなので、その間の水撒きを頼まれているのですけど……」
「そうなのですか……」

 しばらくセバスさんが留守にするなんて私が転生してきたあと、一度も記憶にない。
 そういえば、昨日にセバスさんと会った時、いつもと様子が違っていたような……。

「シャルロット様は、どうしてお庭に? いつもは、お部屋でゆっくりとしていらっしゃるのに」
「えっと……、なんとなく?」
「なんとなくですか?」

 アリエルさんがジッと私を見てくる。
 やっぱり……、いつも刺繍をしたりお母さまの所で時間を使っていたから変に思われたのかも。
 ここは、変に勘繰られると今後の生活魔法の実験に支障を来すのかも知れない。
 うまく説明をした方がいいかも。

「昨日、お父様と町に行って薬師ギルドに行ったのですが、その際に多くの野草などを見て少し興味が沸いたのです。それで、エルトール伯爵邸でもガーデニングをしていることを思い出して見にきてみたのですけれど――」
「そうでございましたか。エルトール伯爵邸の庭は、昔は一般の貴族と同じく花を基調としたガーデニングを行っていましたが、ルーズベルト様とクリステルがご結婚されてルーズベルト様が当主を引き継いでからはクリステル様が調合に使っている薬草や花が栽培されているのです」
「つまり、これが全て薬草で使われている……」
「そうなります」

 たしかにアリエルさんに言う通りに良く見てみればニャン吉に教わった特徴のある花や草ばかりで。

「すごい量ですね」
「質は知りませんが量だけ見れば王族専用薬草園よりも多いと先代当主様が仰られておりました」

 先代ということは、私の祖父と言うことになる。
 だけど……、そういえば私は、祖父や祖母と一度も会ったことはない。
 30部屋近くある屋敷なのに一緒に住んでいないのは、些か気になる。
 でも、それよりも気になったのが。

「王族専用薬草園ですか? 購入するとかではなく?」
「ええ。先代様は、そう仰ってました。私も詳しくは知りませんので、ご興味があるようでしたら奥様に伺ってみられては?」
「そうですね」
 
 アリエルさんの言葉に私は頷く。
 セバスさんがしばらく帰ってこないならセバスさんの仕事もアリエルさんが行うことになって忙しくなるから、あまり質問するのも仕事に差しさわりがあってはならないから。
 それに、アリエルさんからは重要な事が聞こえたし。

「それでは、私はお母さまの所に行ってきます」

 庭から伯爵邸の中へ戻りながら、これからのことを考える。
 
 とりあえず、薬草にどんな影響があるのか分からない。
 それにセバスさんの代わりに庭の管理をアリエルさんが行っているから迷惑をかけるようなことは出来ない。

「あっ――」

 そういえば、今の伯爵邸の中には、お母さまと妹と私しかいないから魔法の練習をしても見られることはない。

「水!」

 頭の中で現象を思い浮かべ言葉を紡ぐ。
 周囲に、10センチほどの水の球体が二つ生まれる。

「なるほど……」

 頭の中で二つの水の球が作られる現象を思い浮かべながら言葉を紡ぐと二つの水の球が作られるようで。
 これは、新しい発見かも知れない。
 とりあえず、肥料雨の実験に関してはセバスさんが戻ってきてから行うとしよう。




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