異世界薬師~嫁ぎ先は砂漠の王国です~

なつめ猫

領地が大変です(6)




「少し前……」
「そうだけど、それがどうかしたの?」

 彼女の言葉に私は頭を左右に振りながら「何でもありません」と答えながら思案する。
 もしかしたら……、鰹節をニャン吉に渡した時点で商業ギルドには何かしら腹案があったのかも知れない。
 ただ、ニャン吉が鰹節を探す旅に出て行って行方不明になったことで、その企みは阻止できたのかもしれないけど。
 それにしても刺繍入りのハンカチを高く販売している件といい商業ギルドは少し注意して対応した方がいいかもしれない。



 ジェニーさんが運んできてくれた食事は、パンと塩で味を整えられたスープと野菜サラダというエルトール伯爵家で出されていた食事と大差がないものであった。
 そのあと、町の中をウロウロして野菜などの価格を見ながら薬師ギルドに戻ると。

「あれって何でしょうか?」

 私は、ようやく見えてきた建物の前に集まっている人だかりを見ながらコルネットさんに話かけた。

「さあ? 何かしら?」

 どうやらコルネットさんも何が起きているのか知らないようで。
 
「とりあえず近づいてみますか?」
「……少し躊躇してしまうわね」
「――え?」
「シャルロットちゃん。何か殺気立っているように見えない?」

 たしかにコルネットさんの言う通り町の人達の様子がおかしいような……。
 
「この距離からだと話声が聞こえないので少しだけ近づいてみましょう」
「そうね。でも周りには身を隠して近づけるような場所はないわよ?」
「無ければ作ればいいのです!」
「作ればいいって……」
「あれを使いましょう!」

 私は、目についた樽を指さしながらコルネットさんの疑問に答える。
 二人で樽を被る。
 そして姿を隠しながら近寄っていく。
 もちろん外の様子が確認できるよう生活魔法を使って中から外が見えるように穴を二つ開ける。
 そうして近づいていると異変を察知したのか何人かが私たちの方へ視線を向けてくるけど、その時には足を止めて樽を被ったまま道の真ん中で停止すると「おかしいな。樽が動いた気がしたんだが……」と言う声が聞こえてきた。

 私とコルネットさんは、見つからないように樽を被ったまま集団に近づいていく。
 すると声が聞こえてきた。

「商業ギルドの連中が噂していたぞ! 薬師ギルドを閉鎖するんだってな!」
「薬師ギルドが閉鎖したら病気をした時に商業ギルドから高い薬を買わないといけなくなるんだぞ!」
「教会の回復魔法を受ける時だって高いお布施をしないといけないのに――」
「コルネットさん。どうやら町の人たちが押しかけているのは薬師ギルドが閉鎖するかも知れないという話のようですね」
「……そうね。でも、そんなの王都の本部でも話に上がっていないのに……、一体どこから――」
「わかりませんけど……、これは早めに誤解を解いた方がいいかも知れないです」

 声から同様の色が見て取れるコルネットさんに声をかけながらも、私は薄々、裏で糸を引いているのは商業ギルドのような気がしてならなかった。
 ただ、商業ギルドが原因の発端なら彼らは何のためにわざわざ領主が来ている時期に行動を移したのか。

「皆さん、どうかしましたか?」

 異変を察知したのか建物から出てきたのはケインさんであった。

「ケインさん! 薬師ギルドが無くなってしまうのは本当の事なんですか?」
「――そ、それは!?」
 



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