異世界薬師~嫁ぎ先は砂漠の王国です~

なつめ猫

領地が大変です(3)




「それより――」

 ジャンさんが気遣うような視線を私の方へ視線を向けてくる。

「シャルロットさん、ごめんなさいね」

 コルネットさんの言葉に私は「いいえ」と、答えながら店の中を見渡す。
 店内には、それほど布地が置かれていない。

「最近は、フリーの商人が来ることも少なくてな……」
「品薄なのですか?」

 私の言葉にジャンさんが「そうとも言う。大半は、商業ギルド経由で入ってくるが高くてな」と、苦笑いを向けてくる。
 つまり、あまり稼げていないと言う事なのかも知れない。

「まぁ、店に来る人間も少ないからな」
「皆さん、どのくらいの割合で布地を購入しに来るのですか?」
「そうだな。以前は月に数回は合ったんだが……、今は、半年に一回あるかどうかくらいか?」
「それって飢饉が起きる前ですか?」
「ああ、そうだ」

 そういえば、生活に困窮した場合に人は必要ない物から削ぎ落として行くと聞いたことがある。
 私が転生前に暮らしていた日本でも、平成における生涯収入賃金が昭和時代のバブル時代よりも半分まで減っているというのは問題になっていた。
 収入が減れば、本当に必要な物以外にはお金は使われなくなる。
 それと同じことが、起きているのかもしれない。

「――だが、毎月購入しにくる男がいるな」
「毎月ですか?」
「ああ、セバスって男なんだが……」
「それって――」
「エルトール伯爵家の家令だな。商業ギルドの人間から刺繍入りのハンカチを見せてもらったことがあったが、かなり高く売れている商業ギルドの知り合いが言っていた。そしてエルトール伯爵家は優秀な針子を囲っているとな」
「かなり高く売れているのですか?」
「ああ。最低でも貴族相手に金貨5枚で売れていると聞いた」
「金貨5枚……」

 私、一枚当たり銀貨1枚で下ろしているのに……。
 末端最低販売価格が銀貨500枚とか。

「ずいぶんと、安く買い叩いてくれているものですね」

 小さく呟いたつもりだったけど、ジャンさんは「どうかしたのか?」と聞いてきた。
 私は、彼の言葉に首を振りながら「なんでも」と言葉を返しながら言葉をつむぐ。
 
「ジャンさん。セバスさんがいつも購入しに来る布地はどれになりますか?」
「それなら、これだな」

 彼が手渡してきた布地は、いつもセバスさんから渡されていた物。

「これっていくらですか?」
「銀貨3枚といったところだな」
「銀貨3枚……」

 すると25枚分のハンカチが作れるとして銀貨22枚の稼ぎってところだけど……。
 考えていると、店内には光沢のある布地も置かれている。

「あの、これは……」

 店内を歩き光沢のある布地を手に取りながらジャンさんのほうを見る。

「それは絹と呼ばれる物なんだが――」
「絹……」
「これって幾らですか?」
「金貨10枚だな」

 思ったより高い。
 鰹節1個と同額なのは納得いかないけど、絹で刺繍入りのハンカチを作ったら高く売れそう。

「絹は、どこから入手したのですか?」
「商業ギルドに所属していない商人からだな。年に一回は来るはずだから来月には、来るはずだが――」
「来月……」

 絹の価格が思ったよりも高い。
 でも、たしか古代では中国で作られた絹などが、シルクロードを通して欧州に届けられて高く売れられていた。
 それとエルトール伯爵領は、一年を通しての気温は低い。
 もしかしたら絹を量産することが可能かも。
 量産する事が出来れば、新しい産業を立ち上げる事も可能かも……。


 

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