異世界薬師~嫁ぎ先は砂漠の王国です~

なつめ猫

領地が大変です(2)




 でも、どうやって改善していいのか見当もつかない。

「それにしても、人の往来が少ないような気がします」

 コルネットさんが、「そう」と小さく呟きながら私の手を握ってくると「迷子になると困るから」と、手を握ってくる。

「コルネットさん?」
「コルネットでいいわよ。それよりご飯は食べたのかしら? 朝早くから来たのよね?」

 私は彼女の言葉に首を振る。
 何せ、朝早くから商業ギルドの方が馬車を寄越してきたから朝食を食べる時間が無かったのだ。
 それでも伯爵家なのだから相手を待たせておいても良いと思っていたけれど、領地の運営が、これほど厳しいとなると商人の呼び出しに応じないといけないのが辛いところだと思う。
 まるで徳川幕府時代に侍が商人にお金を借りていた時代みたい。

「はい。どうしても町を見たいとお父様にお願いしたので」
「そう……。そういえば商業ギルドの馬車が朝早くから町の中を走っていたのだけども――」
「その馬車に乗ってきました。商業ギルドの方が話し合いの場を持ちたいということでしたので」
「そうなの? へー。それにしても……」
「どうかしたのですか?」
「ケインも不思議がっていたけど、シャルロットさんは10歳とは思えないほどシッカリと受け答えが出来るのね」
「お母様の賜物です」
「そう……。クリステルは……、彼女は優秀な薬師ではあったけれど、子供を育てるのも上手だったのね」

 何だか話が逸れてしまっている気がするけど……。

「お母様と、コルネットさんは――」
「コルネットでいいわよ」
「申し訳ありません。目上の方と話す時は、きちんとするようにと言われているので」

 主に前世で両親からだけど……。
 この辺は、生まれ変わっても直らない。
 三つ子の魂百までと言う諺があったけど、案外本当なのかも知れない。

「そうなの?」

 コルネットさんは少し驚いた顔をしていたけど、私が譲らないという事を何となく察してくれたのか「それなら仕方ないわね」と私に微笑みかけてきた。
 しばらく歩くとお店が軒を並べる通りに辿りついた。
 パン屋さんに雑貨を扱っているような店、野菜や果物関係を置いてある店と店の数は10個ほど。
 その中で目に入ったのは服飾関係のお店で。

「興味があるの?」

 知らずの内に歩みを止めていた私に、コルネットさんが語りかけてきた。

「えっと…………、はい」

 彼女の言葉に私は素直に頷く。
 いつもは家令も務めているセバスさんに糸や布地を買って来てもらっているから、興味が沸いたのだ。
 
「シャルロットさんも、小さいとは言え女の子だからね」

 コルネットさんの言葉に私は曖昧な笑顔で返す。
 彼女に手を引かれて店の中に入ると、40歳近くの男性が入ってきた私とコルネットさんを見てくる。

「コルネット。戻ってきたのか?」
「ええ、エルトール伯爵領で薬師ギルドの人員が少ないとケインから手紙が届いたので」
「そうだったのか……」

 どうやら二人は顔見知りだったようで、私が説明を求む! と言う顔をしていると男性が私を見ると。

「それより、その子はお前さんとケインの娘か?」
「違うわ。この子はエルトール伯爵様のお嬢様よ」
「シャルロットです。よろしくお願い致します」

 私は、スカートの裾を掴んで挨拶をした。
 この辺は、貴族の嗜みとしてアリエルさんから、厳しく教えられたから問題なく出来たと思う。

「ジャンだ。服飾店を営んでいる」
「彼は、私のお父さんと友人なの」
「コルネット、お前さんの息子は?」
「王都の兄さんに預けてあるわ。さすがに王都からはエルトール伯爵領は遠いから。手紙は送ったから、数日後には馬車で兄と一緒に来るはずだけども」
「そうか。だが、王都に居た方がいいかも知れんぞ? 薬師ギルドはエルトール伯爵領を見捨てたと噂が流れているからな」
「やっぱり……」

 男性の言葉に、コルネットさんは細く形のいい眉を顰めると小さく言葉を呟いていた。


 

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