異世界薬師~嫁ぎ先は砂漠の王国です~

なつめ猫

領地が大変です(1)



「そうなのね……、クリステルってそんなに博識だったかしら?」

 コルネットさんは頬に手を当てながら思案顔をしている。
 お父様を見るけど、どうやらお父様も彼女のことは知らないみたい。

「お母様をご存知なのですか?」
「ええ。薬師の勉強をしていた彼女と王都の薬師ギルドで知り合ったのよ?」
「そうなのですか?」

 彼女が頷いてくる。
 お父様も、頷いていることからお母様は王都で薬師の勉強をしていたというのは本当みたい。
 
「コルネットさんは、一体……」

 あまりにも若く見えるため、年齢を聞こうとしたところで「シャルロットさん。何か聞きたい事があるのかしら?」と、笑顔を向けてきた。

「な、なんでもないです……」
「そう? 良かったわ」
「ところでエルトール伯爵様。薬師ギルドを立ち上げるという話でしたが?」

 ケインさんの言葉にお父様は頷くと「ただ今日は、娘に町を見せるために来たのだがな」と、呟いていた。

「それでは妻に町を案内させましょうか?」
「そうね。それがいいわね。クリステルの話も聞いてみたいし」
「えっと……、コルネットさんは、ずっと前から町に住んでいたのでは?」
「実はね、ケインからエルトール伯爵領の薬師ギルドで人手が足りないからって、手紙が届いてね。元々は私の故郷でもあるから、急いで来たのよ?」
「なるほど……。それで薬師が居ないからとエルトール伯爵家まで連日来たということか」
「はい。体を壊していると話は伺っておりましたが、少しでも薬を作って頂ければと――」

 ようやく何度、断られてもケインさんが薬を作って欲しいと言ってきた理由が分かったけど……。

「お父様……」
「シャルロット。町を案内してもらいなさい」
「コルネット。エルトール伯爵様のご令嬢を案内してきてください」

 ケインさんの奥さんのコルネットさんと一緒に、私は薬師ギルドの1階に降りてから店内を通ってから町に出る。

「あの……、誰もお店に居なくて大丈夫なのですか?」
「大丈夫よ。どうせ誰もこないからね。何かあれば教会に行くから」
「教会ですか?」
「ええ、教会は回復魔法で怪我などを治してくれるから」

 彼女の言葉に頷く。
 それにしても回復魔法があるとは思わなかった。
 
「でも高いのよね」
「高い?」
「ええ。どんな回復魔法でも金貨1枚は必要だからね」
「金貨1枚……。あ、あの! 普通の家庭だと一ヶ月にいくらくらいお金が必要な物なのですか?」
「一ヶ月?」

 私は頷く。
 エルトール伯爵家は、食費だけで一日銀貨1枚必要だけど……。
 
「平民だと……。そうね……、4人家族だと一ヶ月で金貨2枚から3枚くらいは必要よ。だけどね、いまのエルトール伯爵領は金貨1枚ほどの収入しか稼げないから」
「仕事がないのですか?」
「仕事が無いというよりもね、王都に向かう途中の領地の通課税が高いのよね。そのために儲けが少なくなっているの」
「通課税……」
「商人にとっても通課税が高いと稼ぎは少なくなるの。だから、辺境の地まで商品を運んできても採算が取れなくなるのよね。それでも稼ぎを追求しようとすると物の値段が高くなるの」
「それって、他所の領土を通る物は全て価格が上がるということですか?」

 コルネットさんは私の言葉に「そうよ」と、答えてくれた。
 それって……、貴族が管理している領土を通る毎に課税されていくことで商品の価格が最終的にはすごく上がってしまうのでは……。

「コルネットさん。みんな、普通に生活を出来ているのですか?」
「エルトール伯爵様は、殆ど税金を取っていないから……。だから辛うじて生活出来ているのが現状ね」

 思ったよりも酷い状態に心の中で溜息しか出なかった。


 

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