異世界薬師~嫁ぎ先は砂漠の王国です~

なつめ猫

シャンティアの町に到着です。




「はい。正確には2600年以上と言われていますが、それは明治政府が決めた内容と学校で習いました。ただ……魏志倭人伝では日本はすでに国体を整えていたことから――」
「分かった。もう、分かった」

 お父様が深く溜息をつきながら私の言葉を遮ってきた。
 歴史や地理の分野は私も好きな分野であったので、少し説明しすぎてしまったかもしれない。
 
「ごめんなさい。少し興奮してしまいました」
「いや、そうではないのだが……。シャルロットが暮らしていた日本という国は、長い歴史がある国なのだな」
「長いかどうかは分かりませんが、天皇家がずっと続いている国でしたので」
「天皇家?」
「はい。私の国では、太陽神である天照大神(あまてらすおおのかみ)の直系の子孫と言われています」
「――! つ、つまり神の子孫が国を治めているというのか?」
「国を治めているのは国民です」
「――ん? 神の子孫がいると言うのに国民が国を治めているのか?」

 お父様が、何に疑問を抱いているのか今一、理解できない。
 
「はい。民主主義ですので」
「み、民主主義?」

 私は、お父様の問いかけに頷きながら口を開く。

「あくまでも国を動かすのは、天皇家ではなく国民です。国民は、国政つまり国を動かすために立候補した人物に投票して、その投票数が一番多い方が当選した後、国政に携われるわけです。ただ、江戸幕府前より前の時代は、天皇家に認められた権力者が国を動かしていましたが……」
「君臨すれと統治はせずということか?」
「日本は立憲君主制ではないので、君臨はしていないと思います。ただ、日本という国の象徴的存在が天皇家だと思います」
「ふむ……。シャルロットの話を聞く限りでは、よく分からんな」
「ごめんなさい。中学卒業くらいだとこのくらいしか……」
「いや、いいのだよ」

 お父様は、自身を落ち着けるためなのかしばらく無言になってしまった。

 しばらくしてからお父様は、町に着くまで転生前の世界の話を聞いてきたけど、何度も同じことを聞いてきたことがあった。
 それは、活版印刷、紙の生成、化粧品、石鹸、機織り機のことで、それも最新の現代技術ではなく古臭い産業革命前の技術に関してだった。

 本を読むことが好きだった私は、足ふみミシンの構造や機織り機の作り方を知っていたから、お父様に詳しく説明したけど話が終わった後に私にお父様は「転生前のことは誰にも話をしたらいけない」と、厳しい表情で忠告してきた。



 ――エルトール伯爵邸から馬車で走ること1時間。

「お父様、ここは?」
「ここがエルトール伯爵邸から、もっとも近い町シャンティアだよ」
「シャンティア……、花の名前ですね」

 私の言葉にお父様は苦笑いを浮かべてくる。
 何か変なこと言ったのかな?
 それにしても……。

「中世時代の文明だと思っていたのに、どうしてアメリカ開拓時代の建物っぽいのか……」

 自宅が、ヨーロッパ風の建物だっただけに城下町であるシャンティアという町が、西部劇に出てくるような町という違和感に私も苦笑いを浮かべてしまう。

「中世時代? アメリカ開拓時代?」
「いえ、何でもないです」

 お父様は、私の独り言に反応してきたけど、私もそこまで世界の歴史に詳しいわけではないから、説明を求められたら困ると思い口を閉ざした。
 それによく見れば、アメリカ開拓時代の建物とは大きく異なっている。
 窓ガラスなどは使われていないし、全てが木造の建築物であった。

 私は馬車の中から外を見て一人納得する。
 たしかに中世の建物は、煉瓦作りも含めると大量の資金が必要なのかもしれない。
 煉瓦作りはテレビで見たことあるけど、耐久煉瓦とか必要になるらしいし、それに木材の場合は、伐採すればいいだけだから。



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