異世界薬師~嫁ぎ先は砂漠の王国です~

なつめ猫

サポート精霊さん。




 お父様が出て行った後、念のため、女神様に渡された力が本当に使えるかどうか試してみるために、お母様が薬の調合で使っていた部屋へ向かった。
 部屋は廊下の突き当たりにある。
 一応、薬を作っていたのは見たことあるし、薬草となる植物のすり潰しなどの手伝いはしたことがあるけど最後まで作ったことはない。

「本当に作れるのかな……」

 これで作れなかったら、お父様の面子も潰してしまうことになる。
 
「えっと……、たしかポーションを作る作業をする前に何かしないといけないんだよね?」
 
 唇に人差し指を当てながら女神様と出会ったときのことを思い出す。

「うーん。殆ど覚えてない!」

 あの時は、突然に異世界に転生してくださいと強めの口調で言われたこともあって、色々と説明されたけど教えられた内容は右から左にだった。

「ど、どうしよう……」

 調合部屋の椅子に座りながら考え込む。
 大言を吐いた手前、出来ませんでは格好がつかない。

「やれやれ……。僕の、ご主人様はどうやら本当に駄目な人のようニャ」
「――え?」

 突然、私以外だれも居ないと思っていた部屋の中に声が響いた。
 私は、驚いて椅子から立ち上がり回りを見渡すと、「どこを見ているニャ?」と、近くから声が聞こえてきた。
 声がしてきた方へと視線を向けると目の前には、耳が長く体の毛が青い猫が存在していた。
 
「はじめましてニャ!」

 猫が胡坐をかいたまま手を上げて私に挨拶してくる。
 私は驚きのあまり椅子に座りこみながら「ね、猫が話をしている!?」と、呟いた。
 すると、「そりゃ話すのは当たり前ニャ」と、さも当たり前のように私の問いかけに猫が答えてくる。

「えっと……、当たり前じゃないからね。猫や動物が話すとかファンタジーみたいじゃない?」
「ご主人様、ここの世界は魔法があるファンタジーなランドニャ」
「そ、そうでした! ……えっと、あなたは誰なの?」
「吾が輩は、大地母神メルル様から神無月朱音をサポートするために使わされた精霊みたいなもので、まだ名前は無いニャ」
「大地母神メルルって、私に転生を薦めてきた?」

 私の疑問に猫は胡坐をかいたまま頷いてくる。
 なるほど……、どうやら私が困った時に対応してくれるナビゲーション的な存在をつけてくれのね。

「そういえば、名前が無いのよね?」
「名前は、ご主人様がつけることになっているニャ。吾が輩に名前をつけることで契約が出来るようになるニャ。 吾が輩と契約することで魔法もポーションも作れるようにレクチャーするニャ! さあ、吾が輩と契約して魔法と薬が作れる少女になるニャ!」
「……えっと――、魂とか抜かれるような契約じゃないよね?」
「…………最近、同僚が日本から転生する人に同じように聞かれるから困るって言っていたニャ」
「なるほど……」

 色々と異世界転生というのは大変らしい。

「さあ、名前をつけるニャ!」
「う、うん……。名前ね……、ポチでいいかしら?」
「よくないニャ! どうして日本人は皆、ポチとかタマとかつけるニャ!」

 中々うるさい。
 いきなり名前をつけてくださいと言われても私としては困ってしまう。
 何故なら、私には銘々をするセンスが圧倒的に不足しているのだから。

「……あっ! 耳が羽みたいで体が空色だから、ウィング・スカイと言うのはどう?」
「ぜんぜん駄目ニャ、もっときちんと考えて欲しいニャ」

 ……何と贅沢な。
 一生懸命考えたのにそんな風に言われると、さすがの私も傷つく。
 
「何か、お勧めはあるの?」
「ご主人様が決めたものなら何でもいいニャ」
「何でもいいと言いつつ、文句を言うとか……」
「何か言ったニャ?」
「何でもないわ!」

 さて、どうしたものやら……。

「名前をつけないという選択肢はないの?」
「……それじゃ契約は出来ないニャ!」
「私、センスないからタマとか、そのくらいしか思いつかないよ? 何かお勧めとかないの?」
「ニャン吉ならいいニャ」
「ニャン吉? それって、どこかで聞いたような……」

 うーん。思い出せない。
 でも、本人がそれでいいならいいかな。

「それじゃ、ニャン吉。今日からよろしくね」
「分かったニャ! 吾が輩が、立派な薬師少女に育ててみるニャ!」
「え? 魔法っぽい何かでササッと薬が作れるわけじゃないの?」
「人間、楽をしたら駄目になるニャ! さあ、すり鉢の使い方から教えるニャ!」
「う、うそ……」

 本当にレクチャーするだけとか……。
 ポーションの作成能力を付与すると言っていたけど、一体それは……、自力で作れってことなのかな?




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