雨はまだ止まない

前田 俊輔

1話 4月8日

僕は中学2年生になった。
「行ってきます!」母さんにそう伝え、
今日はどんな面白いことが起きるのか、
とワクワクしながら登校した。
今日は始業式。昌也が言うには今日から
僕のクラスに転校生が来るらしい。
「女の子がいいな」って思った僕の気持ちを悟られないように教室に入りながら言った。
「今日って転校生が来るんだろ?」
昌也が、
「そうなんだよ!しかも俺ん家の隣に引っ越してきたんだ!一目惚れしちゃうねあの可愛さ。」
と自慢気に話してきた。その言葉を聞いた瞬間、跳ね上がりたい気持ちになった。
「お前、嬉しいんだろ。女の子に興味ないとか言っちゃって本当は興味あんだろ?」
...図星だった。
「べ、別に興味ねぇし!」
昌也にそう言い捨てて後ろの席に座る。
赤面を隠すために、
「今日の授業は数学があったな」
と別のことを考えて、昨日解くはずだった数学のプリントを解き始める。
10分くらい経っただろうか。
先生の挨拶と同時に、黒髪が鮮やかなショートカットの女の子が少し緊張している様子で教室に足を踏み入れた。
「神奈川から転校してきた、安田 花蓮さんです。ほら、挨拶して。」
先生の言動に違和感を覚えたのは僕だけなのかな。そんなことを僕は考えながら彼女の発言に耳を傾けた。
「安田 花蓮です。神奈川から引っ越してきました。よろしくお願いします。」
その言葉を聞いた瞬間、僕の全細胞が訴えかけた。


この子は運命の人であると。




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