太陽の為に生きる月

嘉禄(かろく)

「Newborn moon」〜15〜

それから数日経ったある日の昼間、いつも通り僕が研究室に籠っていると突然サイレンが響いた。

…覚えのある音だ、お兄ちゃんが死んだ日…襲撃だ!

そう思って僕が慌てて通路に出ると、みっちゃんと和希くんを抱えたひーちゃんが走ってきた。


「悠隼くん、襲撃だよ!
俺がシェルターまでついて行くから!」
「俺は先に敵と交戦してくる、和希頼んだ!」
「う、うん!」


ひーちゃんは僕に和希くんを渡すと出口に向かって駆けていった。
僕は和希くんを懸命に抱きしめて走り出した。
あの時の二の舞にはさせない、させてはならないと強く思いながら。


シェルターの近くまで来た時、突然みっちゃんが叫んだ。


「悠隼くん、後ろ!」


そう言われて振り向くと、内通者なのか敵と思しき男がナイフを振り上げていた。
みっちゃんが慌てて駆け寄る、でも間に合わない。

─僕はここで死ぬのか?
   お兄ちゃんみたいに殺されるの  か?
…何としてでも、和希くんだけは守らないと!

そう思った時、和希くんが暴れて僕の腕を振りほどいて敵の顔を覆うように頭に抱きついた。
けど、その瞬間僕には違うものが見えていた。
うっすらとだけれど、お兄ちゃんが僕を守るように背を向けて庇って立っていた。


「…お兄ちゃん…?」
「…和希くん無謀すぎ…でも今だ!」


みっちゃんが駆け出して敵を倒し和希くんを抱いて、ぼーっとしている僕の腕を引いて走り出した。
僕は腕をひかれるまま走りながら後ろを振り向いた。
お兄ちゃんは僕の方を向いて微笑んだあと消えていった。

その後シェルターに着いて、戦いが終わるまで僕は和希くんと一緒に待った。
少しして終わったのかみっちゃんとひーちゃんが迎えに来てくれた。


「終わったよー、迎えに来たよ」
「お前達怪我ないか?」
「…うん、僕も悠隼にいちゃんも無事だよ」


そう答えた和希くんが先に2人に近寄る。
僕も立ち上がったが、和希くんの背中を見ていつの間にか問いかけていた。


「…ねえ、和希くん。
君は…お兄ちゃんなの?」


その問いかけが届いたのか、和希くんは振り向いて僕をじっと見た。
護衛の2人が驚くのも気にせず、僕はただ答えを待ったのだったー…

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