太陽の為に生きる月

嘉禄(かろく)

Newborn moon〜13〜

僕はいつのまにか来ていた二人を前にして重い溜息をついてから、僕の後ろに隠れている和希くんに声をかけた。


「和希くん、この二人が昨日話したお兄ちゃんたちだよ。」


すると和希くんはおずおずと顔を覗かせた。
それを見て理貴がニコッと笑いかけたら、大丈夫だと思ったのか和希くんは僕の横に立った。


「…初めまして、えっと…」
「俺は理貴、こっちの白い人は遥人。」
「遥ちゃんでいーよ、よろしくー。」


和希くんは二人の顔を交互に見たあと理貴の方に近寄っていった。
理貴は少し驚いたみたいだったけど、嬉しそうに和希くんの髪を撫でた。


「随分可愛い顔してるね、和希くんだっけ?悠隼くんも立派にお兄ちゃんしてるじゃん、懐かれてて。」
「まあね、今のところ僕が一番好かれてるかも。
…っていうか、また遥ちゃんは軽率に可愛いとか言って…あげないからね?理貴がいるでしょ。」
「まさか、手は出さないよ。
ちっちゃい子相手にする趣味はない。」


僕たちがそう話している間に和希くんと理貴はだいぶ仲良くなっていた。
まだ10分くらいしか経ってないのに、相性がいいのかな…でも確かに理貴はちっちゃい子に好かれそうだ。
理貴も心なしか嬉しそうに見える。


「あ、そうだ…今日はね、いいもの持ってきたんだ。これいる?」
「…何これ?」


理貴が和希くんにチョコの袋を差し出し、和希くんは首を傾げた。
飴を見たことがないのだから、チョコもわからないのは当然だ。


「お菓子見たことないかな?
これはチョコって言って、苦いのもあるんだけどこれは甘いのだけが入ってるんだ。中にはナッツっていう豆が入ってるやつもあるよ。
一つ食べてみる?」


和希くんは頷きかけたが、堪えて僕を見た。
どうやら食べていいかどうかを聞きたいみたいだ、僕がご飯前のお菓子とか間食をあまりさせないようにしてるから。
…けど、今回は特別に許してあげることにした。
せっかく理貴も来たから、たまにはいいかと。


「いいよ、でも二つまでね。」
「やった、理貴にいちゃんちょうだい!」
「うん、じゃあはい。」


理貴にいちゃん、と呼ばれるとまた理貴は嬉しそうに微笑み二つチョコを手渡した。
包みを開けられるようになった和希くんは器用に開けて一つ口に入れた。
もごもごしていたがすぐに目が輝く。


「どう、美味しい?」
「うん、美味しい…初めて食べた…。」
「アレルギー反応も無し…でも食べすぎは良くないからね?
悠隼の言うことよく聞くんだよ?」
「うん!」


僕がその光景を見ていると、遥ちゃんがぼそっと呟いた。


「…また小さくなって戻ってきて、恐れ入るよあいつには。
理貴いいお兄ちゃんぶりしてるな、俺妬いちゃう。」


一言目はよく聞こえなかったけど、二言目はちゃんと聞こえたので僕は苦笑しながら遥ちゃんにこう言った。


「遥ちゃんも和希くんと触れ合ってきなよ、せっかく会いに来たんでしょ?」
「まあね…理貴、俺もまぜてー。」


遥ちゃんは和希くんに近寄るとしゃがんで目線を合わせて色々話していた。
元々馴染みやすい性格だからか、すぐに仲良くなったみたいだ。
抱っこすらすぐに許すとは恐れ入る…流石コミュ力カンスト…。
関心半分苦笑半分で僕はその光景を見ていた。

「その他」の人気作品

コメント

コメントを書く