太陽の為に生きる月

嘉禄(かろく)

Newborn moon〜12〜

その後は朝まで和希くんは魘されなかったようで、僕もしっかり眠れた。
翌朝7時くらいに目が覚めて、僕はうーんと伸びをした。


「…朝だ…。」


こんなにいい眠りをしたのはいつぶりだろう…お兄ちゃんが消えてしまってから一人で寝てたけど、落ち着かなくて安心出来なくてちょくちょく目を覚ましてしまっていたから。
…和希くんの体温のおかげかな?
人は不安定な時は誰かの体温で落ち着く、ということを今更思い出した。
和希くんが魘されないで、僕もちゃんと眠れるなら一緒に寝ることを提案してもいいかもしれない。
そう考えていたら、僕が起きていることに気づいたのか和希くんもゆっくりと目を開いた。


「おはよう和希くん、よく眠れた?」


僕が優しく問いかけると、しばらくぼやーっとしていたがややあって言葉を理解したのか一回頷いた。
寝起きはあまり良くない方みたいだ、けどそれが可愛くて僕は和希くんを膝の上に乗せて抱きしめた。
和希くんも背中に細い腕を懸命に回してくれる。
小さい頃の僕がお兄ちゃんを抱きしめた時もこんなだったのかな?
微笑ましく思いながら抱きしめていたら、少しして和希くんが覚醒したのか腕は離さないまま僕を見上げた。


「…悠隼にいちゃん?」
「おはようねぼすけくん、よく眠れたみたいだね。」


僕が微笑みつつそう言うと和希くんは分かりやすく膨れた。


「…ねぼすけじゃないもん。」
「ごめんごめん、ちょっとからかいたくなっちゃった。
さ、着替えて朝ごはん食べに行こう。」


和希くんを着替えさせてから僕も着替えて食堂に向かい朝食を済ませて部屋に戻ると、明るい…というより騒がしいくらいの声が聞こえて中には見覚えのある二人がいた。


「…遥ちゃん?理貴…もういたの?
僕の部屋に直接来る前に着いたとか連絡欲しかったよ。」
「ごめんごめーん、ちょっとドッキリ仕掛けたくてー。」
「ごめんね悠隼、俺は連絡しようとしたんだけど止められちゃって…。」


そう、例の二人が来た。
お兄ちゃんには腐れ縁と言われていた遥ちゃん…神楽坂遥人とその護衛で伴侶の理貴。
和希くんが怯えないといいけど、と思いながら僕は少し溜息をついた。

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