太陽の為に生きる月

嘉禄(かろく)

Newborn moon〜3〜

「はぁ、こんなガキがな…。」
「虐待ですってね、このご時世珍しくはないですけど酷いなぁ。」
「僕たちに世話をしろってさ…。」


一先ず和希くんを僕の部屋に連れてきてからみっちゃんとひーちゃんにあったことを説明した。
僕が溜息をつくと、みっちゃんは苦笑しながらも茶化して来た。


「でもドクターから聞いたよ、悠隼くんいいお兄ちゃんしてたって。」
「まあね…。」


三人で話していると、和希くんをつい置いてけぼりにしてしまったみたいで白衣の袖を引かれた。


「ああ、ごめん話についていけないよね。まず自己紹介からしようか。」


僕が名乗ろうとすると、それより前に和希くんが口を開いた。


「…お兄ちゃんたちのこと、よく夢で見る。悠隼、光樹、紘斗って呼ばれてた。」
「…僕たちのことを知ってる?」
「夢で、って…?」
「…まあ謎は多いが、面倒を見ればいいんだろう?悠隼に懐いてるみたいだけどな。」


確かに、会った時から絶対に僕から離れようとしない。けど、研究室に連れて行くのはまだ危険な気もするんだよね…。
でも誰かが一緒なら大丈夫か。


「ねえひーちゃん、和希くんを連れてここを案内してあげて?
僕研究室に戻るから、終わったら来てね。」
「わかった、俺と行こうか和希。」


ひーちゃんが頷いた和希くんを抱き上げて出て行った。
…随分不思議な子だけどいい子だし、みっちゃんもひーちゃんもいい保護者になりそうだと思いながら僕も研究室に向かった。

コメント

コメントを書く

「その他」の人気作品

書籍化作品