太陽の為に生きる月
Newborn moon〜2〜
「…君は誰?」
ずっと手を離そうとしないその子に問いかけてみると、ややあって名前を教えてくれた。
「…和希。」
「和希くん、どうしてここに来たの?」
二度目の問いかけに、和希くんは俯いて黙ってしまった。
もしかして辛いことでもあったのかな…。
より傷つけちゃったかなと思って僕があわあわしていると、またややあって和希くんが口を開いた。
「…お母さんが、逃げなさいって…お父さんから守ってあげるから、今のうちにって…」
「守ってあげる…?」
家から逃げてきて、いつのまにかここに来てたって感じかな…?
…そういえば、よく見ると右頬が軽く腫れていて体の至るところに痣や絆創膏が貼られている。
手当てはかなり雑で、血が滲んでいてほぼ傷を守れていなかった。
…多分、いや絶対父親から虐待を受けていたんだ。母親だけは味方で、逃したというところか。
一先ず手当てをし直そう、このままじゃ後々良くないことが起きる。
「…取り敢えずついておいで、手当てをしてあげる。」
ずっと掴んでいた手を取って中に引き入れる。
一応父さんことトップに連絡を入れてからドクターのところに連れて行った。
やっぱり服の下も痣や傷だらけで痛々しかった。
手当てしている間、普通なら怖かったり沁みたりして泣き出すだろうに大人しく手当てを受けていた。
「…よし、手当て終わり。泣かないでよく頑張ったな、これご褒美だ。」
ドクターは和希くんの頭を撫でると一つ飴を渡した。
和希くんはおずおず受け取って飴をじっと見ていた。
「…飴、見たことない?食べるものなんだけど、甘くて美味しいよ。」
「…甘いの?」
和希くんは少し目を輝かせると包みを開けようとしたが上手く開けられないみたいだったので、僕が代わりに開けて口に飴玉を入れてあげた。
和希くんはちょっともごもごしつつ口を動かしていたが、味がわかったのかさっきよりも目をキラキラさせた。
「美味しい?」
「…うん!何味かな…」
ニコッと笑って答えたあと真剣に何味か考えている和希くんは年相応で可愛かった。
最初はあんまり笑わない子なのかな、と思っていたけどそんなこともないみたい。
普通の子よりは乏しいかもしれないけど、ちゃんと表情は変わる。
これなら、ここにいて過ごしていけば近いうちに普通の子並みには笑ったり泣いたり感情が出るようになるだろう。
「何味かわかった?」
「…わかんなかった…。」
「正解はね、葡萄だよ。」
「葡萄、これが…?」
どうやら葡萄味も知らなかったらしい、それじゃ当てようとしてもわからないよ…。
そう思いつつ微笑ましく和希くんを見つめていると端末に連絡が入った。
トップからだ、何だろう…?
首を捻りつつメールをチェックした僕はすぐに額に手を当てて溜息をついた。
「溜息なんかついてどうした?」
「…手当てしてる間に和希くんを引き取る手続き全部済ませたって…まったくもう…」
僕が内容を伝えると、ドクターは呆れている僕を見て苦笑した。
これ、世話僕たちに任せられるよね…。
僕は再び溜息をついて和希くんを見つめることしか出来なかった。
ずっと手を離そうとしないその子に問いかけてみると、ややあって名前を教えてくれた。
「…和希。」
「和希くん、どうしてここに来たの?」
二度目の問いかけに、和希くんは俯いて黙ってしまった。
もしかして辛いことでもあったのかな…。
より傷つけちゃったかなと思って僕があわあわしていると、またややあって和希くんが口を開いた。
「…お母さんが、逃げなさいって…お父さんから守ってあげるから、今のうちにって…」
「守ってあげる…?」
家から逃げてきて、いつのまにかここに来てたって感じかな…?
…そういえば、よく見ると右頬が軽く腫れていて体の至るところに痣や絆創膏が貼られている。
手当てはかなり雑で、血が滲んでいてほぼ傷を守れていなかった。
…多分、いや絶対父親から虐待を受けていたんだ。母親だけは味方で、逃したというところか。
一先ず手当てをし直そう、このままじゃ後々良くないことが起きる。
「…取り敢えずついておいで、手当てをしてあげる。」
ずっと掴んでいた手を取って中に引き入れる。
一応父さんことトップに連絡を入れてからドクターのところに連れて行った。
やっぱり服の下も痣や傷だらけで痛々しかった。
手当てしている間、普通なら怖かったり沁みたりして泣き出すだろうに大人しく手当てを受けていた。
「…よし、手当て終わり。泣かないでよく頑張ったな、これご褒美だ。」
ドクターは和希くんの頭を撫でると一つ飴を渡した。
和希くんはおずおず受け取って飴をじっと見ていた。
「…飴、見たことない?食べるものなんだけど、甘くて美味しいよ。」
「…甘いの?」
和希くんは少し目を輝かせると包みを開けようとしたが上手く開けられないみたいだったので、僕が代わりに開けて口に飴玉を入れてあげた。
和希くんはちょっともごもごしつつ口を動かしていたが、味がわかったのかさっきよりも目をキラキラさせた。
「美味しい?」
「…うん!何味かな…」
ニコッと笑って答えたあと真剣に何味か考えている和希くんは年相応で可愛かった。
最初はあんまり笑わない子なのかな、と思っていたけどそんなこともないみたい。
普通の子よりは乏しいかもしれないけど、ちゃんと表情は変わる。
これなら、ここにいて過ごしていけば近いうちに普通の子並みには笑ったり泣いたり感情が出るようになるだろう。
「何味かわかった?」
「…わかんなかった…。」
「正解はね、葡萄だよ。」
「葡萄、これが…?」
どうやら葡萄味も知らなかったらしい、それじゃ当てようとしてもわからないよ…。
そう思いつつ微笑ましく和希くんを見つめていると端末に連絡が入った。
トップからだ、何だろう…?
首を捻りつつメールをチェックした僕はすぐに額に手を当てて溜息をついた。
「溜息なんかついてどうした?」
「…手当てしてる間に和希くんを引き取る手続き全部済ませたって…まったくもう…」
僕が内容を伝えると、ドクターは呆れている僕を見て苦笑した。
これ、世話僕たちに任せられるよね…。
僕は再び溜息をついて和希くんを見つめることしか出来なかった。
コメント