俺は主人公にはなりたくない!

立花葵

学校に着くと周りがざわついている
朝からうるさいなもう
俺の耳にクラスの女子達の会話が耳に入ってきた
「うちのクラスに転校生来るんだって!」
「女子かな?男子かな?楽しみだね!」
転校生か、まぁ俺には関係ない
なんせ仲良くする事もなく話す事もなく時が過ぎ卒業する未来は見えているのだから
勝手に青春ごっこでもしてろ
心の中で、話していた女子達に舌打ちをして教室に向かった
朝のショートホームルームまで少し時間があったから飲み物を買いに行く事にした。ひとりで
席を立ち両耳にイヤホンをつけ爆音で音楽をかけ会話が聞こえないように自販機まで歩いて行ったこれは日常のひとつだ
なに飲むかなー
今はお茶って気分だな
俺は自動販売機のボタンを押した
お茶がガコンと音を立てて落ちてきた
俺はキャップを開けお茶を一口飲んだ
とても冷えていて舌心地が良い
喉がカラカラだった訳ではなかったが喉を鳴らしてお茶を飲んでいた
キャップを閉め教室に戻ろうとした時
見覚えのある人が横を通り過ぎた
見たことある顔だったような?
でも、俺には友達がいないからそんな訳ないか
少し悲しくなってしまった自分で友達がいないなんて思うとは我ながら可哀想だ
そのまま教室へ戻った
俺の席は窓側の一番後ろ
この席は人気がない。なぜなら、ぼっち席だからだ
クラスの人数は男15人、女14人と必ず1人余りが出る
そこらへんの青春ピーポー達は友達同士でくっついて席を決めている
俺はそんな相手すらいないからずっとここの席だ。
チャイムと同時に先生が教室に入ってきた
「お前らー!早く座れ!」
話をしていた前の女達が「また後で話そうね!」とか言ってるのを聞いた
なーにがまた後でね!ハートだよ
鬱陶しいから違う場所でやってくれよ
全員が席に着いた
「今日はお前達の新しい仲間を紹介する。入ってこい」
ひとりの男が教室へ入ってきた
俺は息を呑んだ
無意識のうち体が動き立ち上がって唖然してしまった
声が出ない…
頭の中の記憶が蘇る
(晃くん…十三年前…)
確か、そいつの名前は…立花葵…
立花葵だ!!!!!!
でも、なんで男の制服着てるんだ…。
「三須?どうかしたか?」
我に返った
「あ、いやなんでもねぇーすっ。」
なにしてんだ俺ーーー!
平凡なぼっちキャラなのにこれじゃ、底辺のぼっちに成り下がる!
「すまないな、立花。三須が邪魔して」
俺は悪者扱いか!
クソ教師め!ちょっとくらいフォロー入れろよ
「大丈夫です先生。初めまして立花葵(たちばなあおい)と言います。父の転勤のため東京から引っ越してきました。卒業まで日は少ないですが仲良くしてください」
拍手が起こった
おい待て。俺が発表した時なんか誰も拍手しなかったのになんで今日来た転校生に拍手してるんだ?俺の方が付き合い長いだろ
本当早く卒業してこんな奴らとさようならしたいわ
拍手の中先生が話を切り出した
「はいはい。拍手はそこまで、じゃあ立花席は〜」
待て、空いてる席は俺の隣くらいじゃないかクソ教師
嘘だろやめてくれ俺のぼっちライフが崩れ落ちる
「どうするかな…よし、三須の隣な!さっき立った奴の隣だ」
マジか…。クソ教師仕込んでやがったな
(三須。友達作れよ)
クラス中俺の事見てるじゃねーかよ。目立ちたくないんだよこちらは
そんなことも知らず立花葵は俺の方に向かって来た
そして、机と椅子を俺の隣に置いて平然と座って来た。憎たらしい。
けど、やっぱりよく見ると夢に出てきた女子と似てるよな気もするんだけどな男だけど
立花葵がこちらを向いて来た
「何かついてるかな?」
声が低い…。期待していたわけではないけどやっぱり低いのはちょっとショックなような
だって、名前も顔も一緒なのに性別だけが違う。期待して当たり前だろ
「いや、なんでもない。お前に似てる人いたなって思っただけだ」
なんて、冷たい言い方なんだ
もっと違う言い方あっただろ
もう一分前の過去の事だ忘れよう
「あのさ…三須くん」
立花葵が話してる途中に俺は言った
「言っておくが俺に関わるな。お前もぼっち扱いされるぞ」
決まったぜ!どうだもう話しかけてこないだろう。俺はこれで何人も切り捨ててきたんだから舐めるなよぼっちを!
「ぼっち?なにそれ?」
この野郎ぼっちを知らないだと!?
この世でぼっち知らない奴逆にいるのか?
「ぼっちって言うのはひとりでいる事」
なんで、優しく教えてるんだよ俺。今さっき酷いこと言っただろ。
「三須くんはひとりぼっちなの?」
「そうだ。悪いかよ」
「そんな事ないよ。誰だってひとりになりたい時くらいあるよね。立花で良ければ友達にならない?」
友達にならない?ってなんだ。
初めて言われたぞそんな難しい言葉
それでも俺は
「やめておく。俺はひとりが好きなんだ」
「立花は三須くんと友達になりたいな」
なんだ!その天使のような上目使いは!
男なのに可愛く見えてしまうあの夢のせいか!
「俺は忠告したからな」
横からでもわかるくらい立花の顔が満面の笑みになったのがわかる
「嬉しい!ありがとう!三須くん!」
「わかっよ。立花葵」
「立花葵じゃなくて、葵って呼んで三須くん!」
「はいはい、間をとって立花って呼ぶ」
立花葵。いや、立花は悪い奴ではないかもしれないな
俺は心の中でそっと思った

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