廃クラさんが通る
030 家の裏の不審者
みんなで囲む夕食は嵐のようだった。 あんなに山盛りに作った唐揚げも激しい争奪戦が繰り広げられ、一瞬にして討滅させられた。 俺はホットプレートでお好み焼きを焼きながらだったので、その争奪戦に出遅れてしまい禄に食べられなかった。 まあ俺が作ったものをこんなに喜んで食べてくれたならそれはそれで嬉しい限りではあるけど。 唐揚げの他にもとんかつやら天ぷらなど揚げ物や肉じゃがなど煮物、簡単なものでは豆腐を切っただけの冷や奴などもあったのだがすべてみんなで完食してしまった。 片付けや皿洗いはリアル調理スキル0の美麗さんや-の夢斗にも手伝って貰った。 料理やら何やらでずっと働きっぱなしだった俺はその間休憩を貰い居間のソファに座り、何気なしに(ぼーっと)その様子を眺めていた。
「蒼空! 皿洗い終わったよーー」「ありがとう。佳奈子さん。さっき風呂のお湯入れ替えといたから順番に入っといて」
ジルが入ってから時間が経ち、すっかり冷めてしまったので先ほどお湯を入れ替えておいた。
「わかったー。……ほら、あんたも一緒に」
と、美麗さんの腕をぐいっと掴む。
「なぜ私の腕を掴む!? 私は最後でいい! ……いや、それよりも一緒にとは何なのだ?」
佳奈子さんのの手を払い除ける美麗さん。
「あんた修学旅行とか行ったことないって言ってたし、こういう合宿とかやったことないんでしょ? だったら一緒にお風呂入ることがそれを体験する一番良い方法と思ったんだけど」「それがなぜ一緒に風呂に入るということになるのだ? その気分はもう十分に体験したし堪能した! そこまでする必要はない!」「へ~、そんなこと言って、実はいろんなところに自信がないから、それを見られるのが嫌だから一緒に入りたくないんじゃないの?」
ニヤニヤと美麗さんを嘗め回すように上から下、下から上へと視線を這わせる。
「ッッ!! やめろ!! 虫唾が走る!」
腕を上げ、佳奈子さんが最も凝視していた部分をガードし、体をよじらせる。
「まーしょうがないよねー。そんなすっかすかじゃー」
美麗さんが上げた腕にその部分は触れることすらなく隙間が出来ている。
「……わかった。いいだろう。そんなに言うのならば一緒に入ってやろうではないか」「まじで? ほんとにいいの? 無理してない?」「黙れ。お前の望みどおりにしてやろうというのだ。文句はないだろう?」
そう言うと今度は逆に美麗さんが佳奈子さんの腕をぐいっと引っ張り台所を出て行く。
「え? ちょっと? 引っ張るなっての」
しれっとそこに夢斗もついていこうとするが
「お前はお呼びじゃねえっての!」
と美麗さんに引っ張られつつも夢斗に前蹴りを入れる佳奈子さん。
「おぅふ!」
と腹を押さえ膝をつく柏木。
「みんな仲良くね」「大丈夫、いつものやりとりだから」
操作する手を止めて一連のやりとりを見守っていた百川先生は再びパソコンに目を落とす。 パソコンを操作していたと言ってもただ単にTFLOをやっていたわけだが。 俺は休憩を取りつつも美麗さんに替わりTFLOの指導を先生にしていた。
「先生はメインクエストをこなしただけですぐにあのIDに行ったの?」「ええ、途中一人で戦う場面が少しあったくらいかしら?」
クエストの戦闘はだいたい『すべての敵を倒せ』ってのばかりだからヒーラーにも否応なしに攻撃を求められる。 それどころか低レベル帯のクエストなら自分すら回復する必要もないからヒールの重要性を学ぶことさえ出来ない。
「てことは味方を回復するってことにはあまり慣れてないってことだよね?」「そうね、あのダンジョンに行った時が初めてかしら? 回復魔法を使うなんて」
これは駄目だ。 まず先生には回復魔法を使うことに慣れてもらわないと。
「ちょっと待ってて」
こんな時のために、というわけではないが俺もMUSHを持ってきている。 俺もTFLOにログインして先生とパーティを組み回復の練習をして貰おう。 そう思い俺は客間に置いてある荷物からMUSHを持ってこようと居間を出た。
「……あんた、ずいぶんとつるつるすべすべで……何かお手入れとかしてんの?」
客間へと向かう道すがら脱衣所から声が聞こえてくる。
「やめろ! 私に触るな! そんなものはしてはいない。しているとするなら家を出る前に日焼け止めを塗っていることくらいだ」
<a href="//24076.mitemin.net/i310903/" target="_blank"><img src="//24076.mitemin.net/userpageimage/viewimagebig/icode/i310903/" alt="挿絵(By みてみん)" border="0"></a>
「ふ~ん……あとそこも、それって剃ってんの? そこもつるつるだけど」「? 剃っているとは何のことだ? ……ッッ!? お前はどこを見ている! 私はまだ高校生だ! まだ大人ではないのだから生えているわけがなかろう!?」「え? あ、うん、そう……」「転校生はすでに生えてはいたが、たまたま発育が早いというだけのことだ。私だって大人になれば体だってあのくらい……」「いや、生えるかどうかはともかくそれはねーわ。少なくともあそこまで発育することなんてありえねーわ」
……ジルは確かに色こそ茶色かったが萌え出ずる新緑のように立派ではあったけど、そうか、美麗さんはまだ生えてはいないんだな……。
「くふふふ……、おぬしも悪よのう」
後ろからの声に驚き振り向くと、そこには悪代官のような狡猾な薄ら笑いを浮かべる顔があった。
「柏……!? ……夢斗? 何だよ悪って?」
大声を上げそうになるが俺は必死に抑えた。
「え? スカイも二人が風呂に入ってるところを覗きにきたんじゃないの?」「『も』って何だよ! 『も』って!? 俺はそんなことしようと思ってなんかいないっての!」
覗こうなんて一ミリ足りとて思ってはいない。 風呂場に誰かいるから覗こうなんてどこの帝都の英雄だ。 俺はそんな黒髪の貴公子じゃないから体が勝手に動いてしまうなんて事はあり得ない。
「え~、なんだよ、スカイなら覗きやすそうな所絶対に知っていると思っていたのに」「覗きなんて出来ないっての。こんな正面からなんて特に。外からなら窓が開いてればもしかしたらってこともあるかもしれな……って、おい!」「なるほど、外からな。ありがとう! スカイ!」
言い切る前に礼を言い、俺から背を向けて走り出す夢斗。 いや、外からだって絶対に無理だっての。 わざわざ窓を開けて風呂に入るなんてどこの迂闊者だ。 どうせ家の裏に回ったところで覗きなんて出来ないんだ。 あんな奴は放っておこう。俺は再び客間へと歩を進める。
「ぎにゃあああああ!!」
家の外から叫び声が聞こえる。 家の裏から? まさか……。 俺は振り返ると玄関を目指しダッシュする。
「今の声は何? 外から聞こえたけど……」「蒼空くん?」
居間から先生とお姉ちゃんが心配そうに顔を出す。
「大丈夫、二人はここで待ってて。俺が見てくるから」
靴を履くと俺は外に飛び出す。 庭を回って家の裏に回ると、そこにはやはり――
「やっぱりお前か……。あとこれをやったのはジル?」
そこには白目を剥いて地面に仰向けで倒れてる夢斗とそれを見下ろすジルの姿があった。
「うん、セルフィーから不審者がいたら容赦なくやっちゃってって言われてたから」
不審者……。 俺の視線の先には白目を剥いて時折ぴくぴくと痙攣する夢斗の姿。 うん、まあ間違いはないよな。 万が一のことを考えて佳奈子さんは先手を打っていたってことか。 ガラララッと窓が開けられると
「あー、やっぱりしょうも懲りなく来たかぁ」
そこから頭を出す佳奈子さん。
「馬鹿! 窓を開けるな! 中が覗かれるだろう?」「覗かれねえっての、高さがあるんだから。……ん~? でも、もしかしたらそこの塀に登れば見えるかも? 蒼空、ちょっとそこに上がってみる?」
と、笑顔で俺に促す佳奈子さん。
「え? いや、さすがにそれは……」「ッッ!! 何を言っているんだ! お前は!? 蒼空! 登っては駄目だぞ! 絶対にだ!」「だってさ。こういうときってどうするのが正解なのかなー? ほら、テレビとかでよくあるじゃん。『絶対に押すなよ』って。あれって押さないと逆に怒られるんだよね?」「私は言葉どおりの意味で言ったまでだ! 蒼空! こいつの言うことなんて気にしなくて良いんだぞ!」「覗かないっての、佳奈子さんもほら、もうそこ閉めて」
俺の言葉になおもニヤニヤとこちらに笑顔を向ける佳奈子さん。
「くっ……、そこをどけ!」「……って、うわ! あぶな……」
窓から佳奈子さんが消えたかと思うとその直後
「どっぼーん!」
と何かが水に落ちた音が聞こえ、窓がガラララッと閉められた。
「あぶねーだろ! 後ろからいきなり!」「黙れ! 蒼空が本気にしたらどうするつもりだったのだ!」「いーじゃん。そんときはそんときで」「何が良いものか! 馬鹿者め!」
壁を一枚隔て、風呂場では言い争いが繰り広げられる。
「はあ……。ジル、夢斗を運んどいてくれる?」「うん、わかった」
と、白目を剥いて倒れている夢斗を抱きかかえるジル。 ……なんか今日の疲れが一気に出た。 家の掃除にダンスのレッスン、そして昼食や夕食などの食事を作ったりこんな騒動があったり……。 合宿ってこんなにも大変なものだったんだな。 今日はもう早いところ寝ておきたい……。
「蒼空! 皿洗い終わったよーー」「ありがとう。佳奈子さん。さっき風呂のお湯入れ替えといたから順番に入っといて」
ジルが入ってから時間が経ち、すっかり冷めてしまったので先ほどお湯を入れ替えておいた。
「わかったー。……ほら、あんたも一緒に」
と、美麗さんの腕をぐいっと掴む。
「なぜ私の腕を掴む!? 私は最後でいい! ……いや、それよりも一緒にとは何なのだ?」
佳奈子さんのの手を払い除ける美麗さん。
「あんた修学旅行とか行ったことないって言ってたし、こういう合宿とかやったことないんでしょ? だったら一緒にお風呂入ることがそれを体験する一番良い方法と思ったんだけど」「それがなぜ一緒に風呂に入るということになるのだ? その気分はもう十分に体験したし堪能した! そこまでする必要はない!」「へ~、そんなこと言って、実はいろんなところに自信がないから、それを見られるのが嫌だから一緒に入りたくないんじゃないの?」
ニヤニヤと美麗さんを嘗め回すように上から下、下から上へと視線を這わせる。
「ッッ!! やめろ!! 虫唾が走る!」
腕を上げ、佳奈子さんが最も凝視していた部分をガードし、体をよじらせる。
「まーしょうがないよねー。そんなすっかすかじゃー」
美麗さんが上げた腕にその部分は触れることすらなく隙間が出来ている。
「……わかった。いいだろう。そんなに言うのならば一緒に入ってやろうではないか」「まじで? ほんとにいいの? 無理してない?」「黙れ。お前の望みどおりにしてやろうというのだ。文句はないだろう?」
そう言うと今度は逆に美麗さんが佳奈子さんの腕をぐいっと引っ張り台所を出て行く。
「え? ちょっと? 引っ張るなっての」
しれっとそこに夢斗もついていこうとするが
「お前はお呼びじゃねえっての!」
と美麗さんに引っ張られつつも夢斗に前蹴りを入れる佳奈子さん。
「おぅふ!」
と腹を押さえ膝をつく柏木。
「みんな仲良くね」「大丈夫、いつものやりとりだから」
操作する手を止めて一連のやりとりを見守っていた百川先生は再びパソコンに目を落とす。 パソコンを操作していたと言ってもただ単にTFLOをやっていたわけだが。 俺は休憩を取りつつも美麗さんに替わりTFLOの指導を先生にしていた。
「先生はメインクエストをこなしただけですぐにあのIDに行ったの?」「ええ、途中一人で戦う場面が少しあったくらいかしら?」
クエストの戦闘はだいたい『すべての敵を倒せ』ってのばかりだからヒーラーにも否応なしに攻撃を求められる。 それどころか低レベル帯のクエストなら自分すら回復する必要もないからヒールの重要性を学ぶことさえ出来ない。
「てことは味方を回復するってことにはあまり慣れてないってことだよね?」「そうね、あのダンジョンに行った時が初めてかしら? 回復魔法を使うなんて」
これは駄目だ。 まず先生には回復魔法を使うことに慣れてもらわないと。
「ちょっと待ってて」
こんな時のために、というわけではないが俺もMUSHを持ってきている。 俺もTFLOにログインして先生とパーティを組み回復の練習をして貰おう。 そう思い俺は客間に置いてある荷物からMUSHを持ってこようと居間を出た。
「……あんた、ずいぶんとつるつるすべすべで……何かお手入れとかしてんの?」
客間へと向かう道すがら脱衣所から声が聞こえてくる。
「やめろ! 私に触るな! そんなものはしてはいない。しているとするなら家を出る前に日焼け止めを塗っていることくらいだ」
<a href="//24076.mitemin.net/i310903/" target="_blank"><img src="//24076.mitemin.net/userpageimage/viewimagebig/icode/i310903/" alt="挿絵(By みてみん)" border="0"></a>
「ふ~ん……あとそこも、それって剃ってんの? そこもつるつるだけど」「? 剃っているとは何のことだ? ……ッッ!? お前はどこを見ている! 私はまだ高校生だ! まだ大人ではないのだから生えているわけがなかろう!?」「え? あ、うん、そう……」「転校生はすでに生えてはいたが、たまたま発育が早いというだけのことだ。私だって大人になれば体だってあのくらい……」「いや、生えるかどうかはともかくそれはねーわ。少なくともあそこまで発育することなんてありえねーわ」
……ジルは確かに色こそ茶色かったが萌え出ずる新緑のように立派ではあったけど、そうか、美麗さんはまだ生えてはいないんだな……。
「くふふふ……、おぬしも悪よのう」
後ろからの声に驚き振り向くと、そこには悪代官のような狡猾な薄ら笑いを浮かべる顔があった。
「柏……!? ……夢斗? 何だよ悪って?」
大声を上げそうになるが俺は必死に抑えた。
「え? スカイも二人が風呂に入ってるところを覗きにきたんじゃないの?」「『も』って何だよ! 『も』って!? 俺はそんなことしようと思ってなんかいないっての!」
覗こうなんて一ミリ足りとて思ってはいない。 風呂場に誰かいるから覗こうなんてどこの帝都の英雄だ。 俺はそんな黒髪の貴公子じゃないから体が勝手に動いてしまうなんて事はあり得ない。
「え~、なんだよ、スカイなら覗きやすそうな所絶対に知っていると思っていたのに」「覗きなんて出来ないっての。こんな正面からなんて特に。外からなら窓が開いてればもしかしたらってこともあるかもしれな……って、おい!」「なるほど、外からな。ありがとう! スカイ!」
言い切る前に礼を言い、俺から背を向けて走り出す夢斗。 いや、外からだって絶対に無理だっての。 わざわざ窓を開けて風呂に入るなんてどこの迂闊者だ。 どうせ家の裏に回ったところで覗きなんて出来ないんだ。 あんな奴は放っておこう。俺は再び客間へと歩を進める。
「ぎにゃあああああ!!」
家の外から叫び声が聞こえる。 家の裏から? まさか……。 俺は振り返ると玄関を目指しダッシュする。
「今の声は何? 外から聞こえたけど……」「蒼空くん?」
居間から先生とお姉ちゃんが心配そうに顔を出す。
「大丈夫、二人はここで待ってて。俺が見てくるから」
靴を履くと俺は外に飛び出す。 庭を回って家の裏に回ると、そこにはやはり――
「やっぱりお前か……。あとこれをやったのはジル?」
そこには白目を剥いて地面に仰向けで倒れてる夢斗とそれを見下ろすジルの姿があった。
「うん、セルフィーから不審者がいたら容赦なくやっちゃってって言われてたから」
不審者……。 俺の視線の先には白目を剥いて時折ぴくぴくと痙攣する夢斗の姿。 うん、まあ間違いはないよな。 万が一のことを考えて佳奈子さんは先手を打っていたってことか。 ガラララッと窓が開けられると
「あー、やっぱりしょうも懲りなく来たかぁ」
そこから頭を出す佳奈子さん。
「馬鹿! 窓を開けるな! 中が覗かれるだろう?」「覗かれねえっての、高さがあるんだから。……ん~? でも、もしかしたらそこの塀に登れば見えるかも? 蒼空、ちょっとそこに上がってみる?」
と、笑顔で俺に促す佳奈子さん。
「え? いや、さすがにそれは……」「ッッ!! 何を言っているんだ! お前は!? 蒼空! 登っては駄目だぞ! 絶対にだ!」「だってさ。こういうときってどうするのが正解なのかなー? ほら、テレビとかでよくあるじゃん。『絶対に押すなよ』って。あれって押さないと逆に怒られるんだよね?」「私は言葉どおりの意味で言ったまでだ! 蒼空! こいつの言うことなんて気にしなくて良いんだぞ!」「覗かないっての、佳奈子さんもほら、もうそこ閉めて」
俺の言葉になおもニヤニヤとこちらに笑顔を向ける佳奈子さん。
「くっ……、そこをどけ!」「……って、うわ! あぶな……」
窓から佳奈子さんが消えたかと思うとその直後
「どっぼーん!」
と何かが水に落ちた音が聞こえ、窓がガラララッと閉められた。
「あぶねーだろ! 後ろからいきなり!」「黙れ! 蒼空が本気にしたらどうするつもりだったのだ!」「いーじゃん。そんときはそんときで」「何が良いものか! 馬鹿者め!」
壁を一枚隔て、風呂場では言い争いが繰り広げられる。
「はあ……。ジル、夢斗を運んどいてくれる?」「うん、わかった」
と、白目を剥いて倒れている夢斗を抱きかかえるジル。 ……なんか今日の疲れが一気に出た。 家の掃除にダンスのレッスン、そして昼食や夕食などの食事を作ったりこんな騒動があったり……。 合宿ってこんなにも大変なものだったんだな。 今日はもう早いところ寝ておきたい……。
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