廃クラさんが通る
023 木綿糸の束(スレッド)
スマホを顔を揃えて覗き込む俺たち二人。
俺は「ヒモになる」の意味をやほーで検索した。
「なるほど~。コレがヒモの意味だったんだ」「……」
笑顔の柏木に対して、言葉を失う俺。 コレって俺が昨日『お姉ちゃん』に言われたことまんまじゃないか。 女の人に養って貰うって。 俺が学校に行かなくても良いから『お姉ちゃん』が一生養うって、そう昨日言われたんだ。
「いや、柏木、怒りなよ。お父さんにこんな酷いこと言われて」「え? ヒモになるのいいじゃない? 働かないで済むじゃん?」
その発言に俺はさらに絶句。
「……い、いや、お前それで良いと思ってるの? たとえば将来やりたいこととかあったりしない?」「う~ん、養って貰ってやりたいことやれば良いんじゃない?」
…だめだ、コイツ。早くなんとかしないと…。 今すぐコイツの間違った認識を修正してやらないと…。
「あれ? 何コレ?」
スマホを覗いていたジルが突然声を上げる。
「どうしたの? ジル」「せかちゃんでちょっと変なスレ見つけたんやけど」
と、俺たちにスマホを向けて画面を見せる。 そのスレッドの名前は…
「買い占め・転売厨を晒すスレ?」
俺はそのスレッドの名前を読み上げる。
「うん、そのスレなんやけど……これ」
と、さらにスマホを操作して俺たちにそれを見せる。
─────────────────────────────3 Millennium 20XX/09/2X(水) 11:13:34.03ベナリスは私のものだ。何人たりともこの場所で木綿糸を買うことは許されない。─────────────────────────────4 無属性冒険者 20XX/09/2X(水) 11:18:56.28は?何様なの?こいつ?調子乗ってんじゃねーぞ?─────────────────────────────5 Millennium 20XX/09/2X(水) 11:20:22.43何様ではないMillennium様だ。お前たちのような愚民は、私が買い占めた木綿糸で作った製品をありがたく買っていればよいのだ。─────────────────────────────6 無属性冒険者 20XX/09/2X(水) 11:34:21.11あほか?誰がお前の作った物なんて買うかよ─────────────────────────────7 無属性冒険者 20XX/09/2X(水) 11:40:33.78こいつまじにMillennium?廃クラでやばいやつだとは思ってたけど、こんなにやばいやつだったのかよ─────────────────────────────
「……なんだ? これ? ミレニアムさん?」
俺は隣にいた美麗さんを見る。
「…私じゃない……私は書き込んではいない……」
眉間にしわを寄せ、唇を噛み、非常に悔しそうな顔をしている。
「偽物なん? ミリーを騙っているってこと?」「ひでーな、こりゃ。あんたここまでされて黙ってるつもり?」
長田さんも心中穏やかではないのだろう。 眉がわずかにつり上がっている。
「勝手に言わせておけばいい…」
少し声を震わせ、小声で呟く。
「はあ? ばっかじゃね~の? ここまでさせておいて、あんたまだ何もしないで見過ごすんかよ?」「私に何ができる? 奴らだってそうだ! 具体的に何ができる? この掲示板で、ただ喚いているだけだろう?」「あんたが悪者にされてんだろーが! それでいいのかよ!? 何もしなくていいのかよ!?」「ああ! 何もしなくていい! こんな掲示板で、コソコソと人の悪口しか言えないような奴らが私のことを嫌ってくれるのなら、それはそれで大いに結構なことだ!」
美麗さんが声を荒らげる。 こんなに感情的になった美麗さんは初めて見た。 何もしなくていいとは言っているけど、悔しくないなんてことがあるはずがない。 その美麗さんに圧倒され、かける言葉もない俺たち。 美麗さんは座っていた椅子から立ち上がると背を向ける。
「私は……たとえ周りすべてが敵であったとしても……私のことをちゃんとわかってくれる者がいてくれるならば……それだけで……ただそれだけで、私にとっては十分なのだ……」
肩をふるわせてそう言うと、生徒会室の戸を開け出て行ってしまった。 俺はふと思い出す。 そういえばこんなこと、前にも一度あった。
「生徒会の立ち会い演説会で、長田さんの演説の時、美麗さんが悪者を演じてたよね? その時美麗さんが言ったんだ。「悪者になるのは慣れてる」って、前にも似たようなことがあって、もしかしたら今回みたいな事だったのかな?」
あの時の美麗さんもすごく悔しそうにしていた。 慣れているなんて事は絶対にない。
「あいつ、そんなこと言ってたんかよ」「そういえば言ってたよね、うちも聞いたよ」「そういえば、俺あの日のこと途中から記憶がないんだけど、二人の間で何かあったの?」
そうだ、柏木はあの事件の前に美麗さんに気絶させられていたんだ。
「いや、なにもなかったよ? 特には」
俺はあの時あった出来事を誤魔化す。 柏木の記憶を取り戻させるわけにはいかない。
「そうなの? でも俺にはよくわからないけど、美麗ちゃん、なにか大変なことになってるんでしょ? 俺にできることってないのかな?」
こいつはこいつで美麗さんのこと心配してくれてるんだな。
「いや、柏木にできることは何もないと思う。余計なことはしない方がいいと思うよ?」
俺たちにだって何ができるものなのかもわからない。 まして美麗さんは何もしなくていいとまで言っている。
「とりあえずあたしはサポートに連絡しておく。これは悪意があるのは明らかだから、サポートもきっと動いてくれると思う」「そうか、そうだよ! きっとこの掲示板を見せればGMも動いてくれるよ!」
俺たちができなくてもきっとサポートが対応してくれる。
「でも外部の掲示板だからどこまで調査ができるものなのか…。ちゃんと働いてくれればいいんだけど」
でも今はサポートに頼るしかない。 美麗さんはああ言ってたけど、きっと美麗さんだってこのままあの偽物を放って置いていいとは思ってはいないはずだ。
俺は「ヒモになる」の意味をやほーで検索した。
「なるほど~。コレがヒモの意味だったんだ」「……」
笑顔の柏木に対して、言葉を失う俺。 コレって俺が昨日『お姉ちゃん』に言われたことまんまじゃないか。 女の人に養って貰うって。 俺が学校に行かなくても良いから『お姉ちゃん』が一生養うって、そう昨日言われたんだ。
「いや、柏木、怒りなよ。お父さんにこんな酷いこと言われて」「え? ヒモになるのいいじゃない? 働かないで済むじゃん?」
その発言に俺はさらに絶句。
「……い、いや、お前それで良いと思ってるの? たとえば将来やりたいこととかあったりしない?」「う~ん、養って貰ってやりたいことやれば良いんじゃない?」
…だめだ、コイツ。早くなんとかしないと…。 今すぐコイツの間違った認識を修正してやらないと…。
「あれ? 何コレ?」
スマホを覗いていたジルが突然声を上げる。
「どうしたの? ジル」「せかちゃんでちょっと変なスレ見つけたんやけど」
と、俺たちにスマホを向けて画面を見せる。 そのスレッドの名前は…
「買い占め・転売厨を晒すスレ?」
俺はそのスレッドの名前を読み上げる。
「うん、そのスレなんやけど……これ」
と、さらにスマホを操作して俺たちにそれを見せる。
─────────────────────────────3 Millennium 20XX/09/2X(水) 11:13:34.03ベナリスは私のものだ。何人たりともこの場所で木綿糸を買うことは許されない。─────────────────────────────4 無属性冒険者 20XX/09/2X(水) 11:18:56.28は?何様なの?こいつ?調子乗ってんじゃねーぞ?─────────────────────────────5 Millennium 20XX/09/2X(水) 11:20:22.43何様ではないMillennium様だ。お前たちのような愚民は、私が買い占めた木綿糸で作った製品をありがたく買っていればよいのだ。─────────────────────────────6 無属性冒険者 20XX/09/2X(水) 11:34:21.11あほか?誰がお前の作った物なんて買うかよ─────────────────────────────7 無属性冒険者 20XX/09/2X(水) 11:40:33.78こいつまじにMillennium?廃クラでやばいやつだとは思ってたけど、こんなにやばいやつだったのかよ─────────────────────────────
「……なんだ? これ? ミレニアムさん?」
俺は隣にいた美麗さんを見る。
「…私じゃない……私は書き込んではいない……」
眉間にしわを寄せ、唇を噛み、非常に悔しそうな顔をしている。
「偽物なん? ミリーを騙っているってこと?」「ひでーな、こりゃ。あんたここまでされて黙ってるつもり?」
長田さんも心中穏やかではないのだろう。 眉がわずかにつり上がっている。
「勝手に言わせておけばいい…」
少し声を震わせ、小声で呟く。
「はあ? ばっかじゃね~の? ここまでさせておいて、あんたまだ何もしないで見過ごすんかよ?」「私に何ができる? 奴らだってそうだ! 具体的に何ができる? この掲示板で、ただ喚いているだけだろう?」「あんたが悪者にされてんだろーが! それでいいのかよ!? 何もしなくていいのかよ!?」「ああ! 何もしなくていい! こんな掲示板で、コソコソと人の悪口しか言えないような奴らが私のことを嫌ってくれるのなら、それはそれで大いに結構なことだ!」
美麗さんが声を荒らげる。 こんなに感情的になった美麗さんは初めて見た。 何もしなくていいとは言っているけど、悔しくないなんてことがあるはずがない。 その美麗さんに圧倒され、かける言葉もない俺たち。 美麗さんは座っていた椅子から立ち上がると背を向ける。
「私は……たとえ周りすべてが敵であったとしても……私のことをちゃんとわかってくれる者がいてくれるならば……それだけで……ただそれだけで、私にとっては十分なのだ……」
肩をふるわせてそう言うと、生徒会室の戸を開け出て行ってしまった。 俺はふと思い出す。 そういえばこんなこと、前にも一度あった。
「生徒会の立ち会い演説会で、長田さんの演説の時、美麗さんが悪者を演じてたよね? その時美麗さんが言ったんだ。「悪者になるのは慣れてる」って、前にも似たようなことがあって、もしかしたら今回みたいな事だったのかな?」
あの時の美麗さんもすごく悔しそうにしていた。 慣れているなんて事は絶対にない。
「あいつ、そんなこと言ってたんかよ」「そういえば言ってたよね、うちも聞いたよ」「そういえば、俺あの日のこと途中から記憶がないんだけど、二人の間で何かあったの?」
そうだ、柏木はあの事件の前に美麗さんに気絶させられていたんだ。
「いや、なにもなかったよ? 特には」
俺はあの時あった出来事を誤魔化す。 柏木の記憶を取り戻させるわけにはいかない。
「そうなの? でも俺にはよくわからないけど、美麗ちゃん、なにか大変なことになってるんでしょ? 俺にできることってないのかな?」
こいつはこいつで美麗さんのこと心配してくれてるんだな。
「いや、柏木にできることは何もないと思う。余計なことはしない方がいいと思うよ?」
俺たちにだって何ができるものなのかもわからない。 まして美麗さんは何もしなくていいとまで言っている。
「とりあえずあたしはサポートに連絡しておく。これは悪意があるのは明らかだから、サポートもきっと動いてくれると思う」「そうか、そうだよ! きっとこの掲示板を見せればGMも動いてくれるよ!」
俺たちができなくてもきっとサポートが対応してくれる。
「でも外部の掲示板だからどこまで調査ができるものなのか…。ちゃんと働いてくれればいいんだけど」
でも今はサポートに頼るしかない。 美麗さんはああ言ってたけど、きっと美麗さんだってこのままあの偽物を放って置いていいとは思ってはいないはずだ。
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