廃クラさんが通る

おまえ

017 ささやかな反撃

Jill:ねー、みんなでどっかいかない?
 ジルが唐突に提案する。 いつもの俺たち三人、カテドラさんは今日はいない。
Selfish:すまんな、ちょっと今手が離せない。せめて今日出品する分の商品が作り終わるまで待ってもらえるか?
 セルフィッシュさんはせっせと製作クラフトをしている。 パッチがあってからここ最近、いつもにも増して製作クラフトに熱が入っている。
Jill:え~、じゃあスカイと二人で行く?Sky:う~ん、DPS二人だと、どこかID行くにしてもマッチングに時間掛かるからなぁ…Jill:じゃあミリー誘おうか?Selfish:おお、それはいい。お前らであいつ誘って遊んでこい
 ん? ミレニアムさんと遊ぶのを勧めるとか、セルフィッシュさん何か心境の変化でもあったのかな?
Selfish:お前たち二人であいつの手を少しでも止めてくれ。商品が売れる度にすぐ出品しやがるから、なかなか値上げもできなくて困ってるんだ
 ……やっぱりそんな理由なのか。
Sky:それってやっぱり木綿糸を使う新装備?Selfish:そうだ、木綿糸はマケで値上がりしまくってるのにあいつは一向に製品を値上げしようとしないんだ。このまま木綿糸が値上がりを続ければそのうち赤字にもなりかねない
 う~ん、セルフィッシュさんの事情や動機はどうかとも思うけど、とりあえずミレニアムさんに声をかけてみようかな……。
Sky:じゃあミレニアムさんに声をかけてみるねJill:おお~、まかせた
 俺はチャットチャンネルをTELLにして『Millennium』の名前を打ち込む。
Sky>>こんばんは、ミレニアムさん。これからどこかIDに行こうかと思ってるんだけど、一緒に行かない?Millennium>>行かない

 即答。 俺の提案速攻却下。
Sky>>え~と、やっぱり製作とか忙しいから?Millennium>>そうだ、すまんが今、お前たちと一緒に何かをする余裕はない
 やっぱりセルフィッシュさん同様稼ぎ時なんだな、今は。
Sky>>わかった。ごめんね、邪魔しちゃって、でもちょっとだけいい?
 俺はミレニアムさんをパーティに誘う。 しばらくするとミレニアムさんがパーティに加わった。
Millennium:なんなんだ? 私はお前たちと遊んでる暇はないって言っただろう?Selfish:なんだ? スカイ、これはどういうことだ?Jill:お~、ミリー来た
 俺たちはパーティチャットで会話をする。 俺はセルフィッシュさんとジルもパーティに誘っていた。
Sky:セルフィッシュさんがミレニアムさんに何か言いたいことがあるんじゃないのかな? って思ってSelfish:俺がさっき言ったことか? …まったく、こいつに余計なこと言うんじゃなかった…Millennium:なんだ? 私に何か言いたいことがあるのか?Selfish:なにもねーよ。こいつが勝手にそう思い込んでるだけだSky:でもさっきセルフィッシュさん言ってたよね? 木綿糸は値上がりするのにミレニアムさんは製品を値上げしないって。このままじゃ赤字になるから値上げして欲しいってMillennium:そんなことか、くだらないSelfish:いや、値上げして欲しいとまでは言ってねーだろ…Sky:でもそういうことなんだよね?Selfish:間違ってはねーけど……Millennium:だったらまずお前が値上げをしてみたらどうだ? わざわざ私の出品する価格に合わせて、それより1GOLだけ安く出品するだとか無意味で姑息な真似をする必要はまったくないんだぞ?
 それに対してまったく言い返せず黙り込むセルフィッシュさん。
Millennium:そこまでしてマーケット上でも私の上に居ておきたいか? 私に勝ちたいということなのか? クラフターにとっての勝利はなんなのだ? 稼げるか稼げないかの二択であろう? 誰かの上である必要は全くないSelfish:だったら値上げしろっつーの…Millennium:そうして欲しいのならそうして欲しいとはじめから言えば良いものを。くだらないプライドがあるからクラフターとしての勝利をつかみ取ることができない。だからお前はボンクラなのだよSelfish:それはやめろっつーの!
 長田セルフィッシュさん『ボンクラ』って言われるのが嫌なんだな。 まあ、いい意味ではけっしてない。
Millennium:それから私は赤字で物を売るなどということは一度もしたことはないからな? それこそクラフターにとっての敗北でしかないSelfish:なら木綿糸がこのまま値上がりを続けるのなら製品も値上げするんだよな?Millennium:さて、どうだかな? 逆にこう考えることはできないか? 製品の値段を抑えれば木綿糸の値上がりも止めることができるのではないか? と
 ああ、なるほど、そういうことか。
Sky:もしかしてミレニアムさんそれが狙いで製品の値段を上げていないの?Selfish:なるほどな。木綿糸を転売する輩、特にお前の偽物に稼がせないように製品の値段を抑えて木綿糸の高騰も防ぐ。そういうことだったんだな?Millennium:お前たちが何かを勘ぐったり想像することは自由だ。だが、私は私の信念を持って行動しているとだけは言っておく
 ミレニアムさんはミレニアムさんであの『偽物』に対して戦っていたんだな。
Sky:でもこの前も言ったよね? 俺たちに頼れることがあったら頼ってよね?Millennium:ああ、その時はな。でも今はまだその時ではない
 GMの対処できないような『隙間』を突いてミレニアムさんを攻撃している偽物に対して、何か反撃するにはこうするしか今はないのかな? 何か根本的に解決する方法はないものなのか……。

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