廃クラさんが通る
000 序章~プロローグ~
神話の時代より、精霊によって護られ、支配されてきた世界、ルリナディア。 この世界は世界樹を中心とし、人々は世界樹から使役される精霊の力を借り、また精霊に奉仕することによりお互いを支え合い共存共栄していた。 そこに暮らす人々は精霊の力により栄華を極め、未来永劫繁栄が続くものと誰しもが思っていた。 しかし永遠は存在しない。 古から続くの精霊の力は人々が感じることのできない速度で減衰していたのではあるが、ある時を境にそれが顕著となる。 精霊の力は失われ、世界樹は沈黙した。 その瞬間か野山からは緑が失われ、溢れんばかりに満ちていた大河はみるみる細くなり、大地は枯れ果て、その世界に棲むものすべてにその禍害が降り注ぐ。 人々はその日を生きられるかどうかさえわからず、その多くは未来に希望を抱くことすら忘れようとしていた。 人間だけではない。この世界に棲むあらゆる動植物、生きとし生けるものすべてから生気が失われていた。 今は黄昏の時代、沈みかけた日が再び昇ることはない――と説く導師も少なくはなかった。 五年ほど前までは。 しかし、希望を失わなかった一人の男により世界樹が覚醒されると、精霊の力は蘇り世界は生まれ変わる。 世界は『真生』したのである。 それまでは決して沸き立つことのなかった空尊く聳える入道雲。そこから大いなる恵みが降り注ぐと荒廃した大地には潤いが戻った。 ほどなく森の木々や動物たちに生気が溢れる。 その様はまるで歌を歌い、踊り狂い、全身で歓喜を表現しているかのようにさえ感じられた。 それは人間も同様であった。
生きる、という喜び。そんな簡単な感情さえ人々はその瞬間まで忘れていたのである。
そこに生きるものすべてに再び生きる喜びが与えられた世界――〝真生〟ルリナディアは世界の理を司る世界樹を中心にそびえ立つ。 世界樹は天高くそびえ立つと同時に地下にも根を伸ばし、それは全世界を余すことなく網羅する。 その世界の果てまで張り巡らしている地下茎から地上に頭を出した支系の大樹の下にはルリナ王国、バルダー共和国、フェルティス連邦と三つの都市がそれぞれ形成されており世界樹の恵みを享受していた。 ルリナ王国とフェルティス連邦の間には険しい山脈があり、徒歩で踏破することは困難なため、山脈の麓には互いを連絡する飛空艇の発着所がある。 その発着所のある麓、ベナリスと名付けられたこの集落は、昼夜を問わず多くの冒険者で賑わっていた――が、其れも昔の話。世界が真生された現在、旅人が訪れることも稀となりすっかり閑散としてしまった。 真生された世界は地殻さえ大幅に変えてしまい、かつて踏破が難しかった山脈も今や決して険要な難所ではなくなったのである。 運営費のかかる飛空挺の運行は、利用者の少なくなった現在において採算のとれるものではなくなり、発着所に飛空挺が停まっている様を見ることも今では稀となった。 世界は再び栄華を取り戻した一方、真生したことにより凋落するものもまたあるのである。
そして物語はその寒村から始まる。
生きる、という喜び。そんな簡単な感情さえ人々はその瞬間まで忘れていたのである。
そこに生きるものすべてに再び生きる喜びが与えられた世界――〝真生〟ルリナディアは世界の理を司る世界樹を中心にそびえ立つ。 世界樹は天高くそびえ立つと同時に地下にも根を伸ばし、それは全世界を余すことなく網羅する。 その世界の果てまで張り巡らしている地下茎から地上に頭を出した支系の大樹の下にはルリナ王国、バルダー共和国、フェルティス連邦と三つの都市がそれぞれ形成されており世界樹の恵みを享受していた。 ルリナ王国とフェルティス連邦の間には険しい山脈があり、徒歩で踏破することは困難なため、山脈の麓には互いを連絡する飛空艇の発着所がある。 その発着所のある麓、ベナリスと名付けられたこの集落は、昼夜を問わず多くの冒険者で賑わっていた――が、其れも昔の話。世界が真生された現在、旅人が訪れることも稀となりすっかり閑散としてしまった。 真生された世界は地殻さえ大幅に変えてしまい、かつて踏破が難しかった山脈も今や決して険要な難所ではなくなったのである。 運営費のかかる飛空挺の運行は、利用者の少なくなった現在において採算のとれるものではなくなり、発着所に飛空挺が停まっている様を見ることも今では稀となった。 世界は再び栄華を取り戻した一方、真生したことにより凋落するものもまたあるのである。
そして物語はその寒村から始まる。
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