異世界転生した私の話を聞いて貰っていいですか?

白黒にゃんこ

モンスターの話

ブンブンと羽音を鳴らし、こちらを威嚇するモンスター。

手持ちはさっき拾った木の棒。



これじゃあ、モンスターを追い払うことも出来ない。

さて、どうしようか。





「おい!伏せろ!!」


色々考えていると声が聞こえて、私はその場に目を瞑りしゃがみこんだ。


グギャ!

と多分モンスターの鳴き声が聞こえた。目を開いて其方を見ると、どうやら何かを食べているようだ。

モンスターを見ていると、手を引かれた。



「早く逃げるぞ!」


私は立ち上がり、頷いた。
手を引いたまま走り出した人は、私よりも背の高い男の子だった。


「はぁ、はぁ、・・・どうやら追いかけて来ないみたいだな。」

息を整えながら目の前の人は、私に振り向いた。

「お前、無事か?怪我とか、してないか?」

金色の髪に炎の様なオレンジ色の眼。

整った顔立ちに爽やかな笑顔。

彼はまるで、見る人を元気付ける太陽の様な人だと私は思った。


「はい。大丈夫、です。」


何故森の中に人がいるのか、気になるがそんな事を口に出す余裕はなかった。


私が見たのは、彼の服装。
私が着ている簡素な服よりも、しっかりした作りの服だったからだ。
彼は身分が私よりも高い人間だと思う。
悪い人ではないと思うが、彼は一体何者なのか・・・。



私達は森の中を一緒に歩いている。流石に手は離して貰った。
彼からの提案で、彼曰く「女の子を一人に出来るわけねーだろ!」らしい。
森の中の、まだ人が歩けそうな道を二人で進んで行く。


「ちょうど木の実を持ってて助かったぜ。まさか、女の子がいるなんて・・・。」

「あの、助けてくれて、ありがとうございます。」


「ん?別にいいさ。困っている人を助けるなんて、当たり前じゃねーか。」

声を上げて彼は笑う。
彼は多分、"お人好し"だ。彼にとって人助けは本当に当たり前なんだろう。


「でもさ、お前も悪いんだぜー。モンスター避けの木の実、持ってないんだからさー。」

「え!そんなのあるんですか?」

知らなかった。そんな物があったのか。


「え、何?お前、本当に知らないのか?これ使えばモンスターはこっちに見向きもしないから、逃げる為に最低でも持つ必需品だぞ?」

彼は私の言った事に呆然としていた。

「はい。初めて知りました。」

「・・・お前、何処に住んでるんだ?」


彼は急に目を鋭くさせて聞いてきた。
彼からの威圧を感じ、少々気が引けるが正直に話そうと思った。

「えっと、森の側にある、教会に住んでます。」

「教会か・・・。じゃあ・・・だよな・・・。」



所々聞き取れなかったが、彼はぶつぶつと呟いていた。

「あの・・・?」

「あぁ、すまん。ちょっと一緒に来てもらいたくてな。」

「何処に、ですか?」

「この森を抜けた先に、だ。」

森は予想以上に深く、出口が見えない。
まだ日は高いから大丈夫だと思うが、遅くなればシスターが心配するだろう。


「心配しなくていい。もうすぐだ。そう言えば、まだ名前聞いてなかったな。」

確かに、私達はお互いの名前を知らずに会話をしていた。そう思うと少し笑える。




「・・・笑顔、結構可愛いな。」


「え?何か言いましたか?」

何か言ったらしいが聞こえなかった。

「なんでもねーよ!それよりお前の名前だ!なんて名前なんだ?」

彼は顔を赤くして聞いてきた。怒らせてしまったのだろうか?
でも、何でだろう。あんまり怖くない。
そんな彼に笑いながら、私は答えた。



「私、アイリって言います。貴方は?」


「俺はカインって名前だ。よろしくな、アイリ!」

彼は白い歯を見せて笑った。




こうして、アイリとカインは森の中である意味運命的な出会いをしたのだった。

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