ハルバード使いは異世界を謳歌するそうですよ

超究極キグルミ

16 旅の途中(2)

 山賊を放置して野宿所へと戻る。野宿所ではムラサキさんが襲われていた女性の手当てを終えたところだった。

「あ、コウヨウさん。こっちは終わりました。そっちは?」
「一応終わらせました」

 ムラサキさんに状況を報告して女性の方に向く。歳は二十代前半で綺麗な顔立ちだ。

「あ、ありがとうございます。この先のフリューゲルという町で娼館のオーナーをしているカグヤと言います」
「初めまして。コウヨウと言います。こっちはムラサキさんです」
「初めまして。あの、娼館のオーナーってことは…」
「だ、大丈夫ですよ。店の外では誘惑しないので」
「ひとまず今日は遅いので野宿しましょう。夕飯のリクエストありますか?」
「私はコウヨウさんの料理なら何でも…」
「助けてもらったのにそんな…」

 ああもう。女性はどうしてこんなに…。

「わかりました。ではこっちで決めちゃいますね」

 今日の夕飯は…あれで行くか。


「お待たせしました。今日の夕飯は干し肉のしょうが焼きと肉まんです」

 肉ばっかりだがまぁ、たまにはいいだろう。干し肉は普通の豚肉より香りが強いから余計にいい臭いがする。肉まんもなかなかいい出来だ。

「いただきます!」
「いただきます」

 カグヤさんとムラサキさんはご飯を食べ始める。カグヤさんはゆっくりと味わって食べるがムラサキさんは相変わらず早い。カグヤさんの三倍のペースはあるだろう。

「ごちそうさまでした」

 と思っていればすぐに食べ終わるのがムラサキさんの常識だ。にしても早い。

「じゃあコウヨウさん、先に用意してますね」
「お願いします」

 馬車の中へ入っていったムラサキさんを見送って食べ始める。ふと視線を感じたと思ったらカグヤさんがこちらを見ていた。

「もしかしてお口に合わなかったですか?」
「い、いえ。とても美味しいです」

 と言って再び食べ出すカグヤさん。不思議な人だ。

「…あの、コウヨウさんでしたっけ」
「はい、そうですが」
「検討違いだったら失礼なのですが…」

 次の言葉に絶句することになるとはこの時点では思ってなかった。

「…コウヨウさんとムラサキさんって蛇神を探していませんか?」
「…!」
「その様子だと図星ですね」
「何でわかったんですか?」
「少し読心術を齧っていた時期がありましたので」

 少し読心術を齧っていただけで人の目的わかるとかホラーの塊でしかないんですけど。

「コウヨウさん。蛇神と聞いてどんな人を思い浮かべますか?」
「えーっと…」

 蛇神って言われるぐらいだから…メドゥーサみたいに髪の毛が蛇で目を会わせると石になる?

「メドゥーサみたいなの思い浮かべませんでしたか?」
「…読心術恐るべしですね」
「コウヨウさん。実は蛇神…ゴエモンはそんな人じゃないなんです。いえ、そもそも人じゃないです」
「と言いますと?」
「ゴエモンは人ではなく人型自立式機械兵器なんです」
「…機械兵器?」
「はい。知っているかどうかわからないのですが…」
「第二回世界戦争ですね?」

 ムラサキさんが、発言する。っていうかいつの間にいたんだ。

「はい。世界戦争時に発明された兵器で人型のため機動力に優れた改造人間です」
「でも、それだと不思議です。何で兵器が怪盗なんてやっているんでしょう?」
「ムラサキさん、実はそれも間違いなんです」
「え?」
「は?」

 声をムラサキさんと無意識にあわせて驚く。怪盗じゃない?

「ゴエモンは怪盗ではなく、怪盗という肩書きを持った殺人鬼です」
「…」

 本日二度目の絶句をする。まさか探している人が殺人鬼だなんて。

「とはいってもあの子は普段は優しいので人殺しするのは人に依頼されてその殺す対象に対して本当に怒った時だけなので」
「でもそれって逆に言えば、私達への対抗勢力がゴエモンさんに依頼してて何か怒らせるようなことをすれば…」
「そうですね…」

 機械兵器か。古いRPGに出てきそうだ。機械兵器ならメイン武器は重火器か?だとしたら最悪遠距離からの説得になりそうだ。

「…ムラサキさん。今の話を聞いてどう思いました?」
「そうですね…正直私の人生の中では二、三番目位の命懸けの試練だと思います。でも、私は行きます。ジャンヌダルク陛下直々の依頼なら尚更ですし、コウヨウさんの役にたてるよう頑張ります」
「ムラサキさんは強いですね。わかりました。ひとまず行ってみるだけ行ってみましょう」

 一つだけ心配なことがあるがひとまず決意を固めて就寝した。

コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品