ハルバード使いは異世界を謳歌するそうですよ

超究極キグルミ

15 旅の途中

 朝早く目が覚めた。自慢できるかは定かではないが早起きは得意だ。馬車から飛び起きてそのまま昨日のシチューの鍋を覗く。中身はまだ少し残っているから温めてパンに浸けたら美味しいだろう。鍋から離れてハルバードを構える。毎日振っておかないといざとなったとき大変だ。最悪一人なら魔法とハルバードの今私がここに居ることの証明最終旋風風車で無双できる。が、今回はムラサキさんも一緒に行動するとなると広範囲系の技や魔法は使用を控えることになる。フィニッシュからの赤き雪の日、原点にして終点天罰神一心不乱を使ってもいいのだがあれはコストが高すぎる。

「おはようございます、コウヨウさん」

 そこへ寝巻き姿でムラサキさんが馬車から出てきた。

「おはようございます。今朝の朝もシチューですがいいですか?」
「いいですよ…じゃあ着替えてきます」

 そう言うとムラサキさんは馬車へと戻っていった。

「さて、朝飯の用意しますか」


「お待たせしました。昨日のシチューを使ったグラタンです」

 急遽予定を変更してグラタンにした。致命的なミスでパンを買い忘れた。朝はご飯派なので気にならないが。

「いただきます」

 昨日の夜と同じようにムラサキさんは物凄い勢いで食べている。一口食べてる。美味しいけど…なんか足りない。…チーズか。

「ごちそうさまでした」

 もう驚かない。驚かない。ここでつっこんだら終わりだ。

「今日は次の町まで行けるといいですね」
「ああ…あの町ですか」
 
 通り道にある町のうち一番行きたくない町。名前をフリューゲルという。そこは…その…娼館が多いことで有名らしい。だからあまり近づきたくない。

「コウヨウさん、早く食べないと冷めちゃいますよ?」
「もしかして意識なかったですか?」
「はい。さっきからずっと声かけているのに一切反応しなかったです」
「…なんかすいません」

 謝って大急ぎでグラタンを食べた。


 馬車を走らせて数時間がたった。太陽はすでに真上に来て輝いている。ムラサキさんは乗馬出来ないらしいのでずっとハルバードと自分の剣を磨いている。

「コウヨウさん。あそこにいるのって…」
「別の旅人ですね」

 奥から一人の男性が荷物を持って歩いてきた。その男性は帽子をとって一礼をし、話しかけてきた。

「初めまして旅の者です。パルテナ王国まではどのくらいでしょうか?」

 この人は商人で年に一度パルテナ王国に来るのだがいまだに道がわからないらしい。もと来た道を指差して教えると男性は

「ありがとうございます。あなた方の旅に幸があることを」

 と言って再び歩いていった。

「こういう他の旅人との交流は大事ですね」
「そうなんですか?」
「はい。旅人達は常に持ちつ持たれつの関係なのが暗黙のルールみたいなものですから」
「どこへ行ってもコウヨウさんは優しいですね」
「人間として当然ですから」

 笑いながら再び馬車を走らせる。フリューゲルにつく前にもう一回野宿が必要なようだ。

「今日の夕飯は何がいいかな…」

 今日の夕飯を考えながら馬車は走っていった。


「いい加減諦めてくれませんか?」

 ハルバードを構えながら前にいる男性に声をかける。野宿の用意をしているときに林の奥から叫び声が聞こえた。行ってみると山賊らしき人達が女性を襲っていた。で、今目の前で湾刀を構える男性こそ山賊のリーダーだ。襲われていた女性はムラサキさんが野宿所へ連れていっている。

「うるせぇ!アイツがいなきゃこっちは商売になんねぇんだよ!」
「それはあの女性を只の商売道具にしか思っていないと決定しても構わないですか?」
「あぁん?おめぇ何言ってんだ?女は只の商売道具…」

 に決まってんだろ。という前にハルバードの刃を首もとに当てる。

「えーっと、それってもうもはや窃盗がどうとかよりも深刻な人権侵害ですよ?」
「て、てめぇだって使えるものは使えるだけ使うだろ?それと一緒だろうが!」
「あぁそうでしたね。あなたは人を物としか見えないんでしたっけ」
「…」
「何も言い返せないってことは図星ですね。本当にこれが最後ですよ?いい加減諦めてくれませんか?」
「…わかったよ。今回は諦める。それでいいだろ?」
「本当はこの先もしてほしくないんですが…生活がかかっているのに国につき出す程無慈悲ではないので。今回は見逃します」

 山賊のリーダーにそう言ってもと来た道へ戻る。こっそりムラサキさんにスパークを使ってもらったので激しい運動は出来ないだろう。


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