ハルバード使いは異世界を謳歌するそうですよ

超究極キグルミ

13 買い物(2)

「コウヨウさーん!」

 向こうで大きな袋を抱えたムラサキさんが手を振っている。ただ、人混みが凄くて楽に行けそうにない。

「ワープっと」

 そこでワープを使ってムラサキさんの後ろにワープする。ちょっと後ろから脅かそうかと思った。後ろからムラサキさんの肩を叩く。

「お待たせしました」
「うひゃぁ!?」

 ムラサキさんがビックリして飛び上がる。ちょっと笑ってしまった。

「もう!コウヨウさん!」
「はは、すいません」
「むぅ…」

 ムラサキさんは可愛らしくそっぽを向いてしまう。

「さ、次に行きましょう」

 ムラサキさんの左手を握って引っ張る。

「行きますよ。ワープ」

 また周りが光に包まれたと思えばそこは市場ではなく商店街だった。

「つきましたよ…っていつまでそっぽ向いてるんですか」
「だって、コウヨウさんが…」
「…ひとまず行きますよ」

 握られた手を強く握って前に進む。

「あの、コウヨウさん?」
「何でしょう?」
「その…手を強く握ってくれるのは…その…嬉しいのですが…」
「すいません!痛かったですか?」
「いえ、大丈夫です…でもさっきのお返しに…」

 ムラサキさんはこの前の復興作業の時のように肩を寄せてくる。

「しばらくこのまま歩いてもらいますよ!」
「…それでお返しならいつでもどうぞ」

 肩を寄せながら商店街を歩き、調理道具屋につく。

「コウヨウさん料理出来るんですか?」
「一応出来ます」

 昔親父に花嫁修業ならぬ花婿修業で料理を叩き込まれた。一応日本料理や中華料理、珍しいのではベトナム料理なんかも作れる。

「そういうムラサキさんは?」
「…実は全く出来ないんです。それが悩みでもあって」
「言ってくれれば教えますよ?」
「本当ですか!?ではお願いします!」
「じゃあそのためにも調理器具を買いましょう」

 調理道具屋に入る。中にはフライパンやら包丁やらが置いてあった。

「何を買うんですか?」
「うーん…」

 店内を歩きながら考える。フライパンは一つあれば足りるか?それはいいとして包丁は何本あれば…

「いらっしゃい」

 店の奥から女性の店員が出てくる。

「新婚さんかい?」
「し、新婚!?」

 ムラサキさんが凄く慌てている。返答に困っているらしいので助け船を出す。

「新婚じゃないです。ちょっと旅に出るので調理器具を買おうかと」
「二人旅かい?やっぱり新婚…ってあんたトランペッター殺しかい?」
「もしかしてその二つ名で定着してます?」
「それゃあんなに暴れたらそう言われるよ。ということはそっちのお嬢さんはムラサキさんかい?」
「え、ええ」
「なるほどね…トランペッター殺し、あんた魔力の量に自信はあるかい??」
「一応あります。…あとトランペッター殺しってのやめてくれませんか?」
「そうかい。じゃあこれを使うといいよ」

 と言って店員が出しのは少し大きめの木の板だった。トランペッター殺しという呼び方を止めてくれという用件は無視されたが。

「何ですかこれ?」
「うーん、ちょっと説明が難しいからなぁ。簡潔に言うと魔力を流すと料理を作ってくれる魔法道具だよ。持ってかれる魔力が多いからあまり売れないからさ」
「これなら楽ですね…。わかりました。それ一つとフライパン一つと包丁二本、まな板一つください」
「あいよ。じゃあ銀硬貨一枚だね」
「はい」
「毎度どうも。良い旅を!」
「ありがとうございました」

 店員に挨拶をして店を出る。

「次は何買いますか?」
「そうですね、次は…」


「はぁ沢山買いましたね」
「帰りは楽ですがね」

 色々買い物していたので辺りはすっかり真っ暗だ。荷物はワープでまとめて宿の俺の部屋に置いてきた。で、なぜ荷物を置いたにも関わらず歩いていること言えば、ちょっとムラサキさんが用事があるとのことでついてきている。

「つきました。ここです」

 ムラサキさんに連れられて来たのは小さな崖だった。綺麗な星空と平原が見えた。崖の先に肩を並べて座る。

「私ここが思い出の場所なんです」

 ムラサキさんが不意に話す。

「私、昔は奴隷だったんです。私が使えていた主人は奴隷だった私に人前では厳しかったのですが家の中ではとても優しい人だったんです。でも今から三年前くらいのことです。王国で大規模な火災があったんです。勿論私の使えていた主人の家も被害に遭いました。私は家の中をある程度覚えていたので主人と一緒に脱出しました。そこまでは良かったんです」

 ムラサキさんの目にはうっすらと涙が出てきている。

「家から出た主人と私は王国の外に逃げました。それがあの平原です。でも、私が知っていたのは家の中のことだけでした。だからあの平原に魔物がいることなんて、知らなかったんです。主人は私を逃がそうと剣をとって抑えていました。でも、二体目の魔物の紀州にあって、主人は、亡くなってしまって」

 ムラサキさんの顔は涙に濡れている。

「その時私は主人の剣をとっていました。その時私が使ったのが今私がここに居ることの証明最終旋風風車だったんです」
「…その話をなぜ?」
「コウヨウさん、私と一緒に居てくれますか?トランペッター戦の時、コウヨウさんが倒れたとき、主人が倒れたときの記憶が戻ってきてしまって…コウヨウさんには離れてほしくないんです。一番気が許せるのはコウヨウさんだけなんです」
「…」

 返答に困った。旅をしている間は一緒だろうがその先はわからない。もしかしたら、ということもなくはない。でも…

「…ムラサキさんとは似た者同士かもしれませんね」
「それはどういう?」
「そういうことです。ムラサキさんが望むなら一緒に居ますよ」
「コウヨウさん…!」
「では帰りましょう。もう夜遅いですし」
「はい!」

 崖から立ち上がって帰路に戻る。人に過去ありだ。


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