ハルバード使いは異世界を謳歌するそうですよ

超究極キグルミ

1―1 転生の幕開け

「てな感じで君は死んじゃったわけ。OK ?」
「成る程」

 目の前にいる神様を名乗る人(神様は一柱、二柱と数えるらしいが)は、さらっと今までの出来事を話した。曰く天罰を下そうとしたら人を間違えてしまいその事を謝罪したくて呼んだらしい。ちなみにこの空間は、神様の精神が具現化した世界らしい。

「それで俺はこのあとどうすれば?」
「うーん…いっそ死んだことにして星にしてもいいんだけど…」
「人って死ぬと星になるんですか?」
「そだよ。でも君は面白いし…」
「面白い?」
「いや、気にしないで。…君はどうしたい?」

 どうしたい?と言われてもなぁ。いまいち死んだってことがわからないし、第一まだ高校生だからなぁ俺。…星になって妹を見守っていくのもまた無難か?

「あ、そうだ異世界に転生しよう」
「は?」

 異世界だって?そんなもの小説やアニメの中にしかないと思ってたが、実在するとは。

「異世界ってどんなところですか?」
「正確には平行世界パラレルワールドって言うんだけどね」
平行世界パラレルワールド?」
「そう。説明が難しいんだけど…まぁ、簡単に言えば共通点の多いもうひとつの世界、ってとこかな」
「へぇー…じゃあ、それでお願いしてもいいですか?」
「OK !…といきたいんだがその前に」
「なんですか?」
「あらよっと」

 直後体が光り、力がみなぎってきた。今なら誰にでも勝てる気がする。

「向こうですぐ死んだら面目ないからね。いろんなステータスを神レベルまで底上げしたから」
「ありがとうございます。では、いってきます」
「じゃねー。良い生活を」


「…痛ッ!」

 いや、転生の方法酷すぎるだろ!歩き出した瞬間に地面に穴あいて頭から落とされるとか。まじで洒落になんないぞ。

『あー、テストテスト。甲陽君?聞こえる?』

 頭の中にさっきの神様の声が響く。これがいわゆる念話ってやつだろうか。

『聞こえてますよ。それより、さっきのは酷くないですか?』
『ごめーん力加減間違えた。でも無事なら大丈夫かな?』
『ええ、無事です』
『うんうん、じゃあ楽しんでね。あと、君の後ろにあるハルバードは君のだからね』

 そういって念話は終った。まったくなかなかに危ない神様だ。口に出したら天罰が下りそうだが。

「後ろにハルバード…あ、これか」

 さらに、後ろには黒色のハルバードがおいてあった…というよりは地面に刺さっていた。けっこう雑だな。ハルバードって言うのは昔のドイツで使われていたとされる武器で細長い棒に斧のような刃がついた武器だ。ドイツ語で棒という意味のハルムと斧という意味のベルテの造語らしい。

「あ、案外軽い」

 手に持ってみるとかなり軽い。重さはテニスラケット位だろうか。振り回しやすくて使いやすい。まぁ神様が用意したからだろうが。試しにその辺に生えていた木に向かって振り落とす。ビュン…パスン

「え?」

 木は綺麗に真っ二つに裂けていた。機械を使ってもこんなにも綺麗に切れないだろうってぐらいに綺麗に裂けた。しかも、ハルバードには一切の傷がついていない。

「…あんまり使わないようにしよう。人に使ったら即死だ」

 ハルバードを背中に担いで比較的綺麗な道に出る。西には大きな山脈があり、東には平原が広がっている。山脈には興味ないし、ひとまず東に向かおうとしたのだが。遠くに火花が散っている。金属音が響いているので恐らく誰かと誰かが戦っている。「見られる試合は見た方が自分にとっても得」って誰かがいってたな。距離もそこまで離れていないしいってみるか。


「…助けた方がいいのか?」

 火花が散っている場所にいたのは一人の少女ときらびやかな格好をした少年、そして蛇男リザードマン骨剣士スケルトンだ。リザードマンとスケルトンを少女が食い止めている。しかし

「押されてるな」

 明らかに人手不足だ。1対1なら少女にも勝ち目はあるが2対1では本来の実力が出せていない。目立つことは極力したくないんだけど、襲われている以上見て見ぬふりはできないしなぁ。とかいってるとリザードマンがまた出てきた。これは出るしかないかぁ…。
大きく深呼吸してリザードマンに駆け寄る。

「はぁッ!」

 そして気迫と同時にハルバードを振り落とす。黒い軌道を描きながら振り落とされたハルバードはリザードマンを切り裂きながら地面スレスレで止まる。

「なんだ案外弱いじゃん。じゃあ次」

 横から斬りかかってきたスケルトンに向かってハルバードを下から斜め上に斬り上げる。ハルバードの刃が触れた骨から順に折れていき、頭蓋骨に当たった瞬間に灰となって散った。もう一体のリザードマンは少女が片付けたらしい。その時、草むらが風もないのにガサッと揺れた。足元に落ちていた石を拾って草むらの方へ投げる。

「痛!」

 よし。しっかりと当たったようだ。少女はポカーンとしている。

「あの…縄か何か持ってます?」
「あ、はい持ってますけど…」
「貸してもらえますか?あいつ縛るんで」
「えぇ、いいですけど…」

 少女から縄を受けとるとさっき石を当てた人の手を縛って担ぐ。筋力が上がっているせいか人も軽く感じられる。

「こいつ誰だ?」
「多分国家に歯向かう者かと思いますが…あなたは?」
「そういえば自己紹介がまだでしたね。麻野甲陽です。以後よろしくお願いしますね」
「コウヨウさん?不思議な名前ですね」
「そうですか?」
「ええ。私たちの国ではコウヨウはアサリのスープのことをコウヨウっていうんですよ」

 へぇー、俺がアサリのスープか…。しっかりと覚えてないと間違えて人殴っちゃいそうだ。

「あ、申し遅れました。私この先のパルテナ王国の騎士団特攻隊隊長を務めていますエンパルト家のエンパルト・ムラサキと申します。ムラサキとお呼びください。そしてこちらにいらっしゃるのが、パルテナ王国第二王子カスパルト様です」
「ご親切にどうも。どうして騎士団の隊長さんと王子がこんなところに?」
「それには深い訳がありまして…」
 
 ムラサキさん曰く、国家反逆グループの動きが活発になりついには大臣までもが裏切り国が安定していないので一時的に避難しその帰りに襲われたらしい。このあとは国に戻って反逆グループの大将を探すらしい。

「あぁ、サーチの魔法が使えれば…」
「サーチ?」
「第二王子様は魔法の才能がずば抜けて高いのでサーチを避難中も練習されていたのですが、あと一歩というところで魔力が尽きてしまうのです…」
「ごめんね…お姉ちゃん」

 王子は下を向いて、ムラサキさんは困った顔をしている。…俺にもサーチできるかな?

「サーチ」

 そういうと体を中心にして光の輪が広がっていった。

「えーッと、対象:反逆グループの大将」

 対象を選択すると遠くの方に光が空に向かって昇っているのが見えた。

「あっちの方にいますね」
「コウヨウさん、サーチ使えるんですか!?」
「お兄ちゃん凄ーい!」

 二人ははしゃいでいるが、そこまで疲れることではなかった。まぁ何がともあれ役にたてたのならいいことだ。

「そうと決まったら早速いきましょう。王子、お願いします」
「任せて!召喚:グリフィン!」

 王子がそういうと足元に魔方陣が広がってそこから生き物が出てくる。鷹の翼にライオンの下半身。間違いなくグリフィンだ。気づくとムラサキさんも王子もグリフィンに乗っている。

「コウヨウさんも早く乗ってください!」

 言われるがままに、グリフィンに乗る。乗り心地もそこまで悪くない。グリフィンに乗って俺達はパルテナ王国なる場所に飛んでいった。
余談だが、王子が乗っていたグリフィンの名前はグリーフ、ムラサキの乗っていたグリフィンの名前はベルーガ、俺が乗ったグリフィンの名前はパラディオンというらしい。

 



 
 



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