根暗勇者の異世界英雄譚Ⅲ 〜闇魔法を操る最弱な少年の話〜
Ep3/act.14 実戦訓練
シンスケさんの計らいにより、今日は精霊人の国、城内で寝させてもらう運びとなった。
王様は、綺麗すぎる部屋に一人一部屋というなんとも贅沢な時間を与えてくれた。
「よし、みんな疲れているだろうし、今日はもう休め。明日、それぞれには新しい魔法を最低二つは編み出してもらう」
それだけ聞いてみんな解散した。
僕は予想以上に疲弊しきっていたようで、部屋に入り、ベッドに倒れこむようにして、そのまま寝てしまっていた。
朝は両極端な声に起こされた。
「おい起きろー!!」
「サクラくん起きて?」
ぼんやりとした視界に映ったのは、アスラとアカネちゃんの姿だった。
「あ、天使と悪魔…」
「おいコラ」
ボコッと酷い音で殴られた。
「そんな強く殴らなくても…」
アカネちゃんは僕らを見て笑っていた。
アスラも少しずつ慣れてきたみたいだ。
「それより、なんで二人が僕の部屋に?」
はぁ、と見兼ねたようにアカネちゃんは答える。
「サクラくん、もう何時だと思ってるの?みんなとっくに新魔法の訓練入ったよ」
僕が起こされた時には既にお昼を回っていた。どんだけ寝てたんだ…。
用意されていた軽食を済ませ、すぐさま訓練に入ろうと思ったのだが、いつまでも訓練を始めない二人が気になっていた。
「二人は訓練始めないの?」
アスラが答える。
「ちげえよ待ってんだよ。シンスケから、今日の訓練は私とアカネとサクラの三人で行うように言われてるんだ」
「魔法を編み出すんじゃないの?」
「魔法を編み出しながらの実戦訓練だ。新魔法を編み出しても、実戦で使えなきゃなんの意味もないからな」
なるほど、と頷いて速やかに準備した。
「待たせてごめんね、始めようか」
訓練場所は城内にある訓練場。
本来は兵士たちが魔術の訓練をする為に用いる場所で、周りには特殊な結界がある。
アルさんとエドさんとヘンリーは、シンスケさんを相手に実戦訓練をしているようだ。
「あ、そう言えばアスラの魔力は戻ったの?」
自分のことに手一杯でアスラを気にかけるのを忘れていた。
すると、自信満々な顔で答えた。
「もちろんだ。お前らが夢の中で試練を受けている間に、私も別の試練を受けて魔力を取り戻したんだ」
流石は元魔族幹部。あっさりと試練をクリアさせていたらしい。
「シンスケさんから言われたのは、私とサクラくんのペアでアスラさんとの実戦訓練で、私は強化魔法でサクラくんの支援、サクラくんは近接魔法を編み出してアスラさんの猛攻を止めることが課題だって」
アカネちゃんが説明をしてくれた。
考えてみれば確かに僕は遠隔魔法しかなくて、近接で攻められたら手の打ちようがない。
「取り敢えず、始めようか」
僕の声を合図にアスラは爆発したかのような魔力放出をした。
「いいなサクラ。主人と言えど本気で倒す勢いで行くぞ」
アスラから溢れ出る炎を前に、僕は少しだけ後ずさりしてしまった。
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