根暗勇者の異世界英雄譚Ⅲ 〜闇魔法を操る最弱な少年の話〜
Ep.3/act.3 天人の国
空の旅は非常に有意義なものだった。
雲の上にまで行くと雨の恐れもなく、心地いい太陽の日照りが僕らを包んだ。
雲の遥か上空、大地からは見えない高さの位置にまで来ると、空飛ぶ魚や亀など普段は海を泳ぐ生物たちが大きな翼を生やして優雅に飛んでいた。
更に上に行くと、切り離されたような大きな大地の上に、天人の国はあった。
「姫が攫われた一大事の為、城内は少し慌ただしいのですがどうぞお気になさらず」
僕らが最初に通されたのは王室だった。
いつもそうだけど、転移者と言うのは王族と普通に話せるほど権力があるのかな…。
「エルシオ王、只今戻りしました」
「早い時間でよく見つけて来てくれた。英雄様方もこんな上空までありがとうございます」
天人の王様は、人間より遥かに大きく、その背には真っ白な大翼を生やしていた。
「要件は使いの者から聞いていると思います。ここから見えるあそこの塔に英雄様は籠城され、内鍵なもので我々からは何も出来ずとなってしまいました。娘のことも心配です。どうかお助けを願います」
「まずは話してみないと分かりません。理由を聞かないと。案内を頼めますか?」
シンスケさんは冷静に受け答えた。
王様の前でもこの人はブレないなぁ。
近くで見ると、塔は雄大な高さだった。
城と並ぶほどの高さに、奥行きはあまりない感じで、何に使われていたのか見当もつかなかった。
僕らは返ってくるかもわからない声を期待して、塔の扉に話し掛けた。
「転移者さん聞こえていますか。僕らは地上で転移し、天人さんに案内されてここまで来た者です。籠城した理由をよかったら教えてもらえませんか?」
予想した通りといえばその通りだが、中からはなんの返事もなかった。
僕が呆然としていると、シンスケさんは塔の扉を吹き飛ばしてしまった。
「ちょ、ちょっと!?」
「こっちの方が手っ取り早い」
いやいや、そういう問題かなぁ…。
砂煙の立ち込むその先には、椅子に座り驚いた顔でこちらを眺める一人の女の…
いや、前の世界での僕の初恋の女の子がいた。
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