根暗勇者の異世界英雄譚Ⅲ 〜闇魔法を操る最弱な少年の話〜

雨猫

Ep3/act.2 天からの使者


粗方準備を済ませた頃には、セルヴィアの街は元気を取り戻した様子だった。
僕らの次なる目的地は魔法の五国ダミネス。
土魔法を扱う人たちが多く、高い建設物や幅広い大地が特徴で、住民も多いらしい。

「それじゃあ僕たちはそろそろ出ます。しばらくの間ありがとうございました」

王様とシンスケさんに挨拶をして僕らが城を出ようとした時、シンスケさんに止められた。

「やっぱ考えてたんだけど、お前たちだけじゃ心配だから着いて行ってやる」

「え、だってここから離れたら…」

「多分もう大丈夫だ。指揮官との戦いで魔力も戻ったし、呪いは解かれたんだろう」

僕らは笑顔で迎え入れた。
僕らのパーティに強力な味方が出来た。



僕らが城を出てからしばらく経った頃、空を飛ぶ大きな亀が現れた。

「空飛ぶ大きな亀!?」
「あれは…」

シンスケさんが渋った顔で呟いた。
すると、亀の背から人が現れた。

「皆さんは英雄様方でしょうか?」

颯爽と降りてきたその人は、白装束を身に纏い、綺麗な翼を生やしていた。

「て、てて、天使!?」

この世界では驚くことが多い。
自分たちの次元で考えていたら、話が全く進まないことは承知していたが、驚きが止まらない。

「そうだが、天人か」

シンスケさんが受け答えた。

「左様です。セルヴィアの方から連絡を頂き、先の争いを聞きました。連戦になってしまうかも知れないのですが、どうか我らをお救い頂けないでしょうか」

「まずは事情を聞かせてくれないか」

「そうですね…不躾に失礼しました。我ら天人の国エルシオにも、セルヴィアと同じく魔族が攻めて来たんです。指揮官レベルは一体だけでしたが、戦闘に長けていない我々からは荷が重く、姫を攫われてしまいまして…」

「助け出して欲しいと」

「それもあるのですが、我々の国に降臨された英雄様が自ら塔に閉じ篭ってしまいまして…」

「閉じ籠った?」

「はい。ですから、そちらの英雄様を連れ出して行って欲しいのです」

「そうか。だからそんなデカい亀で迎えに来たと言うわけだな」

話がトントン拍子に進んで行く。
異世界に来てから驚くことの連続で、いい加減慣れたのか内容は理解した。

「天人の国エルシオで転移者を連れ出し、攫われたお姫様を救い出せばいいんですね」

僕らは大きな亀に乗り、空を飛んで天人の国エルシオへと向かった。

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