根暗勇者の異世界英雄譚Ⅲ 〜闇魔法を操る最弱な少年の話〜

雨猫

Ep2/act.16 戦いの後で


目が覚めると、そこは広いベッドの上だった。
城内のどこかの部屋の中だろう。

記憶が散漫としている。
僕は確か、住民たちに襲われて…。
頭が痛む。一体何が起こったんだっけ…。

「サクラ、起きたな」

シンスケさんが部屋に入って来た。

「あの…僕はどうして…」

「何も覚えてないのか。俺とエドが城内へ行ったら、お前は倒れていたんだ」

「倒れていた…?」

「そうだ。たくさんの死体と一緒にな」

頭が痛んだ。と同時に、ガリアとの戦闘の全てを思い出した。
絶望と言う二文字が僕を覆った。
僕は、あの場にいた誰一人も助けられなかった。

「お前と戦っていた魔人は、お前を殺したと勘違いして帰ったのだろう。倒れていた者以外に姿はなかった。奥部に避難していた王や住人たちは無事だが、死者数137名。今回の戦いとしては、敗北に違いないが、お前が生きていてよかった」

「違うんです、シンスケさん。思い出したんです。魔人は、跡形もない程に消しとばました」

「魔人を消しとばした…?」

「そうです。魔人を倒したのに、あの場にいた誰一人として、守ることができなかった」

「そうか。お前はまだ弱い」

何も言えなかった。分かりきっていたことでも、言葉にされると心に来るものがある。
改めて、何も出来なかった自分を責めた。

「サクラ…」

心配そうな顔でガゼルが入って来た。

「ガゼル…ごめん…ミカエルが…」

「僕も、僕も強くなろうと思ったんだ」

「ガゼル…」

「僕はあの時動けなかった。何も出来なかった。子供でも獣人の力は人間以上にある。それなのに僕は何もしなかった。ミカエルに教えられたよ」

ガゼルは強くなろうって誓ったんだ。
僕も、今回を省みて強くなるんだ。
そんな風にポジティブに考えることは、今の僕にはまだ出来ないでいた。

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