根暗勇者の異世界英雄譚Ⅲ 〜闇魔法を操る最弱な少年の話〜
Ep2/act.14 魂奪のガリア
「次はあなたの番です」
僕は、倒れ行く住人たちの向こうにいる魔人をじっと睨んだ。
すると、魔人はニヤリと笑った。
「そんなに上手くいきますかねぇ?」
倒れて行ったはずの住人たちは、低い声を出しながら再び起き上がってきた。
「どうして…」
「元々意識のない彼らですよ?精力を奪って意識を失わせる…そんなこと彼らには無意味です」
それじゃあまるでゾンビじゃないか…。
「私は指揮官が一人、魂奪のガリア。このように、魂を操ることが出来ます」
これじゃあどうすることも出来ない。
住人を攻撃することなんて僕には…。
ドゴッボコッ!
何度も何度も住人に殴られる。
こんな異世界に来てまで人に殴られるとは思わなかった。しかし、情けなくとも暴力には慣れていて、あまり恐怖はなかった。
何よりも、昔と違って僕を笑いながら殴り付ける人なんてどこにもいなかった。
どうしてもこの人たちを救いたい。
そう思った時。
住人の一人が、刃物で切りかかってきた。
避けきれない、殺される…!
怖くて目を閉じた。すると、僕の前からは聞き覚えのある叫び声が聞こえた。
目を開けると、血まみれで横たわっていたのは、避難したはずのミカエルだった。
「ミカエル!そんな…ミカエル!」
「諦めたりしたらいけないよサクラ。君は強いんだ、カッコいいんだ。僕らや、パルテナを救った英雄なんだ。もっと堂々としてていいんだ。悪者なんかやっつけてよ、サクラなら出来る。僕らはサクラを信じてるんだ」
怒り、悲しみ、絶句、虚無、震え、恐怖、様々な感情が僕の中に押し寄せた。
ガゼルは声を押し殺して泣いていた。
僕が情けないから。
僕が強くないから。
僕は、ミカエルを守れなかった。
僕の中で、パチッと何かが変わった。
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