根暗勇者の異世界英雄譚Ⅲ 〜闇魔法を操る最弱な少年の話〜

雨猫

Ep2/act.10 バロンvsエドとヘンリー


指揮官一人が倒されたところで魔族の勢いは崩れず、ドンドン城へと近付く。
僕らは、別々に分かれて戦うことにした。

僕とアスラは城へ、シンスケさんは城下町へ、そしてエドさんとヘンリーは城門へと向かった。

※ここからエド視点になります。


「シンスケはいいとして、サクラたちは上手くやれんのかな…」

なんて他人の心配をしてみたが、かく言う俺も魔族との戦闘は初めてだから少し緊張する。

「こんなとこで余所見は厳禁だよお兄ちゃん!」

禍々しい仮面を被った大男がデカイ斧を投げつけて来た。
間一髪で避けた俺は指先に電撃を溜める。

「さぁて、雷はお好きかな」

ドォン!と大きい音と共に、指先から魔人に向けて雷を放った。
距離で威力が減るものの、この距離なら大分ダメージを与えられたはずだ。

「温いな。お前転移者じゃないのか?」

俺は魔人を甘く見過ぎていたのかも知れない。
砂煙から現れた魔人に、大ダメージどころか傷すらをも与えられてはいなかった。

「俺は指揮官が一人、炎斧のバロン。今から転移者を始末する魔人だ」

久々に感じる緊張感。
俺は少しだけ、ワクワクしてしまった。

コイツの底知れない肉体の前に、俺の攻撃は為す術もない。近付いて電撃を喰らわせてもあまり効果は期待できないだろう。
召喚獣を召喚しておいて良かった。

「なあヘンリー。お前の能力はなんだ?」

「氷河海の番人って言ったやろ?ワシの能力は氷を生み出す能力や。大きいものなら一つ、小さいものなら何個も生み出せる。ただ、さっきの見た限りやと、小さいのでシュババッと攻撃しても無駄やろうな」

「なら大きいのをアイツに当ててくれ」

「せやな、まずはやらな分からん」

ヘンリーは小さい羽を前に伸ばし、エネルギーを送り込むかのような動きをした。
すると、バロンの上空にみるみる氷の塊が出来始めた。

「おお!すごい!あれを落とせれば!」

ヘンリーが小さい羽を下へ振り降ろすと、大きな氷の塊はバロンの下へと落ち始める。

「確かにこんな大きな氷が当たれば流石の俺も致命傷だろうが、遅すぎる」

バロンはひょいと避け、氷の塊は無残にも地面で粉々になった。
俺にはこいつに勝てる策略がもうなかった。

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