根暗勇者の異世界英雄譚Ⅲ 〜闇魔法を操る最弱な少年の話〜

雨猫

Ep2/act.4 新たな仲間


僕らの話し合いはまとまったも同然だった。
ミカエルとガゼルも、ちゃんと言わなくても分かっているようだった。

「もう、みんな答えは出ているような顔をしているが、声に出して聞かせてくれ」

エドさんが次に言う言葉はみんなが分かりきっていた。

「俺を仲間にして、旅に同行させて欲しい」

満場一致でイエスと答えた。
普通に話していると、元殺し屋だと言う事実を忘れてしまうほど気さくで、よく笑う人だった。

僕たちは、今までの人生や、この世界のこと、獣人ビーストや魔法のことを詳しく話した。

「あ、そう言えば今更なんですけど、あの小さいおじさん…どうしてここに住んでるんですか?」
「ああ、バドムのことか。バドムは元々セルヴィアで技師を務めていたんだが、なんかしらで追放されて、ここに住んでるらしい」
「なんかしら…?」
「なんかしらだ。俺にも教えてくれなかった」

何やら訳ありのようで、口を滅多に開かない元の性格もあって、謎の多い人だった。

「でも、いい人だと思う。俺の為にある道具を作ってくれたんだ。いつか見せてやるよ」

「元々セルヴィアで暮らしてたってことは、バドムさんも魔法使いなんですね」

「わしは魔法は使えん」

唐突に話に割り込んできたバドムさんは、そう言ってぶかぶかの帽子を取って見せた。
すると、たぬきのような耳がぴょこんと出た。

獣人ビースト!?」
「そうじゃ。わしはパルテナ出身」

たぬきの獣人ビーストならばその身長も納得できた。

「僕は獣人ビーストだと気付いてたよ!獣人ビースト同士は臭いで種族が分かるんだ!」

ガゼルは僕にドヤ顔を向けた。
すごい。獣臭とか全く感じなかったな。

「ほーら、そろそろ行こう」

エドさんの掛け声にみんなが応じる。
ひとまずセルヴィアで夜を越し、次の国への道順を聞いて食料を確保する。

中々に旅らしくなってきて、僕は内心サタンのことを忘れてワクワクしていた。

僕らが出ようとした時、バドムさんが最後に、と声を掛けてきた。

「サクラ、古いものになるがこれを持ってけ」
「なんですかこの紙…」

「この世界の地図じゃよ。パルテナからセルヴィアなら迷わず来れただろうが、これから先はそうともいかん。地図を見て、どこに何があるのか把握しながら進め」

「ありがとうございます!」

バドムさんから地図を受け取り、僕たちはセルヴィアへと足を進めた。

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