裏切られた俺と魔紋の奴隷の異世界冒険譚

葉月二三

195話



マルチと別れて、宿の食堂で晩飯を食べているんだが、アオイ以外はほとんど動いてないのにこいつらは本当によく食うな。
とかいう俺も日本にいたときでは考えられない量を食ってるんだが。

「リキ殿、ちょっと良いか?」

アリアたちが食い切る前に自分の分を確保しようと肉系を皿に盛っていたらアオイが声をかけてきた。

「なんだ?」

「妾の体はもう十分に動かせるようになったと伝えておこうと思うて。」

ハナから普通に動かせていたように見えたが、アオイ的にはやっと納得いったらしい。

「もういいのか?」

「あとはこの体でのうて妾の技量の問題じゃからな。さすがにこれ以上の戦闘の独占は悪いからのぅ。」

アオイが満足したならもうダンジョンに潜る必要がなくなるな。でもまだ雨が降ってるから他にやる気も起きねぇんだよな。
それにマルチとまた明日待ち合わせしちまったし。

「なら明日は連携の練習でもするか。」

「やっと僕も戦えるのかい?」

肉を食べる手を止めたヴェルが目を輝かせて確認してきた。
イーラやサーシャあたりも戦いたがってるかと思ったが、あからさまに喜んでるのはヴェルだけみたいだ。戦闘狂気質だったイーラたちも落ち着いたんだな。
…ただ、飯に夢中なだけにも見えるが。

「そうだな。俺とヴェルで前衛をやって、補助にアオイとヒトミ、中衛にアリアとマルチ、アリアは必要なら魔法で補助してくれ。イーラとサーシャは引き続きマルチの世話役だ。テンコは後衛でウサギとニアは後ろからの敵に備えてくれ。」

今配置を考えて思ったが、俺の仲間はほとんどが前衛だな。前衛以外も出来るから無理やり配置しているが、だいぶ偏ってやがる。
そういや後衛がほしくてソフィアを仲間にしたはずなのにあいつは引きこもってやがるからな。まぁ別のことで役には立ってるみたいだから文句はないが、誰かを後衛として育てるべきか?

「…トラップの解除はどうしますか?」

「俺が見つけたらアリアを呼ぶから任せる。」

「…はい。」

「リキ様が前衛をやるのであれば、自分も前衛をやりたいです。」

明日の予定はこれで決まったと思ったらニアが異論を唱えてきた。というかただのワガママだが。

「ニアの防具はまだ出来てないんだから我慢しろ。」

そういやもう出来上がってんのか?10日はかからないっていってたから、もしかしたらもう出来上がってるかもしれねぇな。最近顔出してなかったからわからんが。
あとは俺のガントレットもか。

「ミノタウルス程度なら素手でも大丈夫です。邪魔になったらすぐに下がるので、それまで隣で戦わせてください。」

ミノタウルス程度って…いや、ニアはわりと最初から強い類だったな。いつのまにか手を黒く強化したりするスキルみたいなのも使うようになってたから、さらに強くなってる可能性もあるし、ミノタウルス程度と本気でいってそうだ。

「…明日サラがリキ様の修理に出しているガントレットを取りに行く予定なので、そのときにニアさんの防具のことも聞いておくように伝えておきます。」

「今はサラがアリアの代わりをしてんだったよな?それでお使いまで頼むのは大変なんじゃねぇのか?」

「…サラがやりたがったことなので、大丈夫です。それにサラが出来る範囲での仕事しか与えていないので問題ないと思います。何かあればセリナさんやソフィアさんに頼るように伝えてあります。」

アリアのことだから出来る範囲ってのは本当に出来るギリギリの範囲でやらせてる気がする。自分に厳しい分相手にも厳しそうだからな。

そこに別の仕事までやらせたらさすがにテンパるんじゃねぇか?しかも武器防具は俺のガントレットと俺が注文したニアの防具なんだから、本当なら俺が取りに行くべきことだし。

「そうか。だが、明日のガントレット引き取りは俺が行く。アオイの着物も注文したいしな。だからアオイもついて来い。」

「本当か!?リキ殿、感謝する!」

本当に嬉しそうだな。
防具1つでここまで喜ばれるのは予想外だった。

「イーラも行く!」

まだ他に誰か来るかと聞いていないのに、イーラが名乗り出た。

「アリアたちはどうする?」

「…わたしたちは残ります。ニアさんの防具の確認をするのであれば、ニアさんも連れていった方がいいのではないですか?」

アリアが一緒に来ないのは意外だった。そりゃアリアもやりたいことくらいあるよな。雨のせいでダンジョンと宿の行き来しかしてないし。

「そうだな。ニアは来るか?」

「はい!」

「じゃあ朝はマルチとダンジョンに潜って連携の練習をして、午後は俺らはちょっとアラフミナの町に行ってくるから、アリアたちは自由に過ごしてくれ。鍵はアリアに預けとく。」

アリアに鍵を渡して、俺は食事を再開した。

「…アラフミナまではイーラに乗って行く予定ですか?」

肉の塊を口に頬張った直後にアリアに話を振られたから、とりあえず肉塊は飲み込んだが、食事は続けながらアリアに答えた。

「いや、雨の中高速で移動なんてしたくないから『超級魔法:扉』で行くつもりだ。」

「…それなら、明日の門番担当者に周囲の確認はさせるので、森の端に扉を繋げてもらえますか?」

「べつにかまわないが、なぜだ?」

「…セリナさんが少しだけ落ち着いてきているようなので、刺激しないようにするためです。」

落ち着いてきてるなら、原因らしい俺は極力近づかないでやった方がいいか。……なんか俺が病原菌みたいだな。

「わかった。」

「…あと、アラフミナに一度帰るのであれば、ローウィンス様に会っていただけませんか?」

「なんでだ?なんか急用でもあるのか?」

「……………………いえ、もうローウィンス様は村に引っ越し済みなのですが、挨拶がまだでしたのでお願い出来ればと思いました。」

アリアは癖なのかいつも話し始めに間が出来ているが、今のはやけに長い間だったな。

「そんなのちゃんと帰ったときでいいだろ。村に戻ったらセリナに悪影響が出るかもしれないし、あいつとわざわざどっかで待ち合わせしてまで会うのは面倒だ。」

「………はい。」

とりあえずアリアも納得したようだ。

残りの食事も平らげ、俺たちは明日に備えて眠りにつくことにした。










俺の仲間が強すぎる件について…。

けっきょくニアの強い希望が鬱陶しいから前衛にしたせいで、俺の仕事がほとんどなくなった。

俺だけじゃねぇな。ヴェルとニア以外はやることがほとんどない。

ニアはイーラが作った大盾を一応左手に持ってはいるが、ヴェルもニアも素手で魔物を殺してやがる。

ヴェルはめちゃくちゃ楽しそうだが、ニアは作業でもしているかのように殺してる姿が変色した目と相まって変な怖さがあるな。

そんな化け物級の強さの2人が前衛をやっているから、俺たちのところまで来る魔物なんていない。

一度だけ後ろから来た魔物がいたが、ウサギ1人で余裕で殺していたから俺らはほとんどなにもしていない。強いていうなら俺はトラップを見つける仕事をしていて、アリアが解除する仕事をしてたくらいだ。

気づけばもう地下58階だ。

ここまで最短距離を小走りで移動してたからここまで来れたが、もうすぐ昼だからここを最後にしよう。確かここが最高到達階だから情報もこの階までしかないみたいだし、ちょうどいいだろ。

マルチには既に今日のダンジョン探索は昼までと伝えてあるし、とっとと終わらせておっさんの武器防具屋に行くとしよう。

「今日はこの階で終わりにするぞ。明日のために下の階に下りてからリスタートで戻るが、下の階での魔物探しをするつもりはない。」

「「「「「「「「「はい。」」」」」」」」」

「了解ッス〜。」

全員に予定を告げてから、小走りでマルチが調べた最短距離の道を進んでいたら、早速魔物が現れた。
現れたというより俺らが魔物のもとに着いたというべきか。

この階の魔物はゴーレムみたいだ。
そういや異世界でのお約束的キャラなのに初めて見たな。いや、もしかして一晩戦い続けたあのマッドブリードも一応ゴーレムの括りになるのか?…どうでもいいな。

「って何してんだ!?」

「?何グファッ…。」

ヴェルがゴーレムの横を素通りしようとしたから驚いて声をかけたら、ヴェルは返事の途中でゴーレムに殴り飛ばされ、地面に何度かバウンドして土埃をあげながら反対の壁に激突した。それを見たニアは大盾を構えて警戒しだした。

あぁ、俺は観察眼のおかげですぐに気づけたが、ぱっと見ダンジョンの壁の出っ張りや岩にしか見えないのか。

「………これは不覚を取ったよ。龍族ともあろう僕がゴーレムごときに殴り飛ばされるなんてね。」

無傷のヴェルが服についた汚れをはたき落としながら、歩いて戻ってきた。
本人に怪我はなくても着ている服は少し破けたみたいだが。

「ヴェルさん、大丈夫なんですか?」

「あぁ、問題ないよ。ダンジョン内では常に鱗を纏ってるからね。」

ニアがゴーレムの追撃を難なく大盾で受け止めながら、ヴェルに確認をとった。
ヴェルを吹っ飛ばす威力のあるパンチを大盾で受けきるってなんなんだよ。多少は衝撃を逃してるのかもしれないが、おかしいだろ。
いや、今さらだな。この世界はレベルが上がれば見た目不相応の力が出せるのはわかってたことじゃねぇか。俺はいつまで日本の常識に縋り付いてんだかな。

「ニア、もう少し攻撃を引きつけていられるか?」

「問題ありません!」

実際見た感じ余裕そうだから大丈夫だろう。ゴーレムの動きはそこまで速くないみたいだし、パワーで負けてないなら心配はないな。

俺はニアに攻撃しているゴーレムの懐に入り、人間でいう鳩尾のあたりを殴りつけた。

…硬すぎんだろ!?
スキルを使わなかったからか指が潰れることはなかったが、腕が痺れたぞ。しかもゴーレムにダメージが通ってるかも微妙だ。

俺が一度距離を取ると、入れ替わるようにヴェルがゴーレムに近づき、勢いそのままに飛び後ろ回し蹴りをゴーレムの首に決めた。
ゴーレムは蹴られた勢いのまま、吹っ飛びこそしなかったが勢いよく倒れた。
ヴェルのやつ、どんな馬鹿力だよ…。

というかヴェルの体がなんか光ってねぇか?

いや、光ってるわけじゃねぇか。何か纏ってる?

ヴェルは倒れたゴーレムに跳びかかりながら、両手をくっつけて振り上げると、両腕がデッカくなった。いや、両腕だけ龍形態になったみたいだ。

そのままヴェルは両腕をハンマーのようにして、ゴーレムに叩きつけた。

若干の土埃は舞ったが、ゴーレムやヴェルが隠れるほどではなく、またゴーレムに殴り飛ばされるヴェルがハッキリ見えた。
今回は両腕でガードして、吹っ飛ばされた先でちゃんと着地したみたいだ。腕は既に人間の細さに戻っていた。

というかあの攻撃を受けても死なないのかよ。この世界のゴーレムは硬すぎんだろ。

ヴェルの攻撃などなんでもなかったかのようにゴーレムがゆっくりと立ち上がった。

また一からやり直しかと思ったが、よく見るとゴーレムの首と胸に僅かながらヒビが入っていた。

一応ダメージ入ってんじゃねぇか。

「2人とも何やってんスか!?ゴーレムは素手で殴った程度の打撃じゃ効かないッスよ!」

キィィィィィィィンッ。

マルチが声を上げた直後に金属同士が擦れるような甲高い音がダンジョン内に響いた。

「斬撃も効かんようじゃのぅ。」

いつのまにかゴーレムの懐に入っていたアオイが一太刀浴びせたあとに戻ってきた。

今度はダンジョンの地面が棘のように突き上がってゴーレムにぶつかったが、刺さることはなく行動を阻害する程度の効果しか出ていない。これはテンコの攻撃だろう。

テンコが作り出した棘を力技で破壊するゴーレムの前にまたヴェルが戻ってきた。
今度は口のあたりに魔力を溜めてるみたいだからブレスを使うのだろう。ただ、ヴェルは人間形態のままだ。

そのままヴェルは炎を吐き出した。

いや、後ろにいる俺たちまでけっこう熱いんだが…。

3秒ほどでブレスを止め、ヴェルがゴーレムに飛びかかった。

炎が晴れた先にいるゴーレムはダメージを負ったのかイマイチわからないというほどに普通に立っていて、既に殴る体勢に入っていた。でも飛びかかったヴェルの攻撃の方が速そうだ。

ん?よく見るとゴーレムの表面が少しテカってないか?

ヴェルが飛びかかった勢いそのままにゴーレムを殴りつけると、パキンッという音とともにゴーレムの表面が割れ、ヴェルの右腕がゴーレムの胸の中に食い込んだ。

ヴェルはそのままゴーレムの胸に着地し、左手もゴーレムの胸に食い込ませた。

何をするのかと思ったら、ヴェルの腕が肩口まで徐々に太くなり、さらに力を込めてるようだ。

ゴーレムが殴るのをやめ、ヴェルを掴んだ。引き剥がそうとしているのか、握りつぶそうとしているのかはわからないが、ヴェルは潰れもしないしビクともしない。

ピキピキと耳障りな音が鳴り始め、ゴーレムから力が抜けたように見えた。そして、ゴーレムが割れた。いや、ヴェルが力づくで引き裂いたというべきか。もう馬鹿力とかいうレベルじゃないだろ。

破片を撒き散らしながら胸から斜めに割れたゴーレムはそのまま崩れ落ち、動かなくなった。

「凄まじいッスね…。」

マルチのいいたいことはわかる。
正直あんなの俺には真似できないだろうし、打撃が効いてなさそうな時点で魔法攻撃に切り替えた方がいいかなんて考えていた俺には力づくで倒そうなんて発想すらなかった。

脳筋過ぎる気もするが、それで倒しきっちまうんだから凄えよな。いや、ブレスも使ってたからちゃんと頭も使ってるのか。

ゴーレムを倒し終えたヴェルは渋い顔で戻ってきた。

「時間をかけてすまない。ゴーレムごときにこんなに手こずるなんて僕もまだまだだね。もっと鍛えないといけないな。」

戻ってきたヴェルが謝罪をしてきたが、十分に強いだろ。龍族ってのはヴェルくらいじゃ弱い部類になっちまうのか?
…いわれてみれば、ヴェルの父親なら噛み砕いて終わりって可能性もありそうだな。

まぁ今でも十分だとは思うが、努力をするのはいいことだ。

「向上心があるやつは好きだぞ。」

「そうかい。ならもっと頑張らなきゃだね。」

ヴェルがニカッと笑った。
ヴェルは体育会系女子って感じで、笑い方も爽やかだ。ちょっとボーイッシュ過ぎる気もするが。

「次は自分にやらせてください。」

ヴェルに対抗心でもあるのか、ニアが願い出てきた。

「せっかくだから連携の「お願いします。」…。」

まぁ一体くらいはいいか。連携の練習はそのあとでもできるしな。さすがにこの階で2体しかゴーレムに会わないってことはないだろう。…たぶん。

「好きにしろ。」

「ありがとうございます。」





しばらく小走りで進むとまたゴーレムがいた。
今度は歩いていたから俺以外のやつもすぐに見つけることができた。

「援護はいりません。」

「無理はするなよ。」

「ありがとうございます。」

衝撃爆発のハンマーはニアの武器として譲渡してはいるが、それでこのゴーレムを倒しきるのは難しいと思うんだよな。

ニアは衝撃爆発のハンマーを出すどころか、大盾すら地面に突き刺して放置し、素手でゴーレムに向かっていった。たしかにゴーレムの速度なら、万全の状態なら盾で受けなくても避けれるからな。

「我の望みを聞き、力を与えよ。世の理を捻じ曲げ、敵をひれ伏せさせる力を。」

『グラビティ』

ゴーレムがニアに気づいて、一歩踏み出したところでバランスを崩し、片膝と両手を地面についた。
たしかあれは重力を増す魔法だったな。昔ソフィアが俺に使ったときより随分短い詠唱だが、魔法名が同じだから同じ魔法だよな?
というかわざわざ詠唱したってことはスキルではなく詠唱文を覚えてるってことか?凄えな。

『我が右腕は鋼をも砕く』

さらに距離をつめながら、ニアはツノを生やして手を黒く染め上げた。ここからでは見えないが、目も変色させているのだろう。

本気状態のニアが跪いて下がっているゴーレムの頭を詠唱だけして殴りつけた。打撃は無意味だろうと思ったが、ゴーレムの顔の一部が砕けた。

魔法名をいわなかったんじゃなくて、今の長いのがもしかして魔法名なのか?でもなんか違う気がする。あくまで俺の感覚だが、ニアの右腕を包んだのは魔力なんかじゃなくて、もっと禍々しいなにかのようだった。

『我が左手を拒めるものあらず』

ニアはゴーレムの顔を殴った右手を起点にして体をひねり、まだ起き上がれないゴーレムの背中に飛び乗った。そしてまた詠唱のようなことをして左手をゴーレムの背中に突き刺した。

『我は魂を奪う者なり』

最後に一瞬だけニアの全身を禍々しい何かが包んだように見えたが、気のせいだったかのように瞬きした後には掻き消えていた。

重力に抗っていたゴーレムが急にこと切れたように大きな音を立てて倒れ、しばらく待っても起き上がることはなかった。

ゴーレムが動かなくなったのを確認したニアはやりきったように俺たちのもとに歩いて戻ってきた。

なんか褒めてほしいオーラを感じる。

たしかに凄かった。
ヴェルのような見た目の派手さはなかったが、ヴェルがあれだけ手こずった敵を一方的に殺していたからな。

これは褒めてやるべきかと声をかけようとしたら、先にアリアがニアに声をかけた。

「…ニアさん。」

アリアはニアの名前を呼んだだけだが、珍しく少し怒っているようにも聞こえた。そのせいかニアがビクッと肩を揺らし、若干目をそらした。

「どうした?」

「…。」

アリアが何に怒っているのかわからないから確認を取ったんだが、アリアは何も答えなかった。
ニアは何で怒られたかわかっているみたいだし、本人に聞くべきかとニアを見るが、ニアは目を合わせようとはしなかった。

「…………少し副作用のあるスキルなので、この程度の敵に使うべきではなかったです。申し訳ありません。」

しばらくニアを見続けていたら、目線は逸らしたまま、申し訳なさそうに謝罪をしてきた。

「副作用?」

「大丈夫です。もうこのスキルはしばらく使えませんが、この程度なら問題ありません。」

俺は副作用について聞き返したのに答えになってなくねぇか?それとも一度使うとしばらく使えなくなるってのが副作用ってことか?…まぁ本人が大丈夫っていうならいいか。アリアもなんもいってねぇしな。

「まぁいい。先に進むぞ。」

「「「「「「「「「はい。」」」」」」」」」

マルチだけが僅かに目を細めて何かを考えているようだったが、無視して俺らが進み出したら、マルチはすぐにいつもの顔に戻ってついてきた。







ニアがゴーレムを一人で倒してから下り階段に着くまでに5体のゴーレムと出会ったが、いい連携の練習になった気がする。

最初の2体はニアがゴーレムの攻撃を大盾で受け、俺とヴェルが殴って微ダメージを与えて牽制し、アオイが『響打きょうだ』とかいうスキルを使って刀の柄頭を叩きつけるとゴーレムの動きが止まり、その隙にアリアとテンコが風の魔法でゴーレムを削るのを繰り返して倒した。

一体倒すのにけっこう時間がかかったが、この倒し方が一番安定していた気がする。

ただ、3体目と出会う前にテンコが空気中の水分を頑張って集めて作ったとかいう剣を渡されてからはそれでゴーレムが切れてしまうから、わりと簡単に倒せるようになってしまった。
さすがに一刀両断出来るほどの切れ味ではないが、テンコの凄さが十分にわかるものだった。

ただの水からこんなものが作れるならアイテムボックスに入ってる水を渡したんだがな。いや、もしかしたら空気中にある水分を集めることに意味があるのかもしれねぇじゃねぇか。それに連携の練習にはなったんだから時間の無駄ではなかったはずだ。

「ここより下は情報が全くないッスから気をつけてほしいッス。」

「今日は下りたらすぐに帰るから大丈夫だ。もちろん警戒はしておくがな。」

階段を下りようとしたらマルチが忠告してきたから、それに答えて俺を先頭に階段を下りた。

地下59階は見た目は今までとほとんど変わらない。俺の視界に入る範囲には魔物もいないから難易度の違いもわからないが、今日は最初の魔物を探すことなく帰る予定だ。時間的にも昼過ぎてるしな。

俺は階段を下りきったらすぐにリスタートを使い、1階と繋げた。

「帰るぞ。」

「「「「「「「「「はい。」」」」」」」」」

「了解ッス。」

先にマルチを通してサーシャ、アリア、イーラと順に入っていき、俺は最後まで周りを警戒しながら、全員が入ったのを確認してから俺もリスタートの空間に入った。

1階についてからあらためて全員がいることを確認し、ダンジョンから出て、雨で濡れないようにイーラが魔法を使いながら徒歩で村へと帰った。

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