裏切られた俺と魔紋の奴隷の異世界冒険譚

葉月二三

194話



地下31階から魔物の強さが一気に上がるとマルチはいっていたが、アオイを見る限りではよくわからなかった。

地下30階までは作業のように魔物を殺していたアオイが地下31階からは少し楽しそうに見えるような気がした程度だ。
ただ、地下40階からは一刀両断とはいかなくなっているみたいだから、魔物が強くなってはいるのだろう。

現在は地下43階。

とっくにマルチの到達階を過ぎているから、マルチはなんの役にも立っていない同行者となっている。

一応先頭組に入って罠解除の補助をやっているが、メインはアリアがやっている。どっちが先輩なんだかな。

この辺りの魔物の攻撃が直撃したら死ぬと自信満々にマルチがいうから、現在はマルチの両脇をイーラとサーシャが護っている。さすがにこの2人がいれば大丈夫だとは思うけど、完全にマルチは邪魔だな。

まぁ余裕があるうちは連れて行くと約束しちまったから文句はいわねぇけどさ。

「この階は左の道が最短距離だったと思うッス!でも、ちょっと解除が面倒なトラップが続けて3つあるらしいッスから、まっすぐの道の方が早く階段に着くらしいッスけど、どっちにするッスか?」

一応情報は持ってるみたいだから完全なお荷物ってわけではないのか。

どうやら自分が来たことない階の情報もしっかり集めてはいるらしい。案外しっかりしてる冒険者なんだな。

「トラップ解除の練習もしてるんだし、最短距離の道の方でいいんじゃねぇか?」

「了解ッス〜!」

マルチはここには来たことないはずだからダンジョンマップは使えないはずなのに、迷いなく進んでいく。大丈夫なのかと少し心配ではあるが、まぁいいかと後ろをついて行く。

左に曲がってから少し歩くと、そこそこ幅広で高さも十分にある一本道に出た。遠すぎて距離はよくわからないが、突き当たりのT字路になっているところの壁まで見える直線だ。

一本道だとは思うが途中途中に出っ張った岩があるから、もしかしたらそこに道があるかもしれない。あとはマルチがいったようにこの道だけでトラップゾーンが3つあるな。

魔物はいないからゆっくり解除すればとくに問題はなさそうだ。

さっそくアリアが1つ目のトラップ解除に取り組み始めた。
解除が面倒なトラップっていってたのが3つもあるから時間がかかるんだろうなと思い、なんか暇が潰せるものでもねぇかなと顔を上げたら、突き当たりに何かが現れた。左から転がってきて、ちょうどT字路の真ん中で止まったみたいだ。

普通の視力じゃ何かは見えなかっただろうが、観察眼のおかげかそれが人間ってだけでなく、耳が普通よりとんがってるところまで見えちまった。

いや、さすがにこの距離で耳の形までは見えるはずはないから勘違いかもしれない。だが、もし見間違いじゃなかったら取り返しのつかないことになるかもしれないから、放置するわけにはいかねぇよな。
エルフを仲間と思うと約束しちまったからな。

『ダズルアトラクト』

あのエルフはどう考えても吹っ飛ばされてきたんだろう。しかもすぐに起き上がれないダメージを受けて。そしたら次にくるのはエルフを吹っ飛ばした魔物だ。
この距離で意味があるかはわからないが、少しでも注意を引ければラッキー程度の魔法だ。

「アリア、すまん!」

トラップ解除途中のアリアを無理やり左脇に抱え、たぶんトラップの主電源だろう違和感のある壁を殴りつけた。トラップゾーンが強制解除されたことを観察眼で確認してから1つ目のトラップゾーンを抜け、2つ目に向かう。
2つ目の主電源はたぶんトラップゾーンの向こう側の壁にあるやつだろう。だからさすがに手は届かない。

『上級魔法:電』

走りながら指を違和感に向けて魔法を放つが、少し狙いがズレたせいか、そもそも壁の中だから電気が通らないのか、トラップ解除が出来てない。どうする?
これさえ破壊できれば最後はトラップゾーンのこっち側に主電源があるから殴って破壊できるっていうのに…。

一度止まろうかと思ったが、エルフの元に魔物が現れた。

現れた魔物はミノタウルスっぽいな。ずいぶん縁があるじゃねぇか。

ミノタウルスは『ダズルアトラクト』を使ってる俺に気づいてすらいなそうだ。さすがに距離がありすぎるか。

このトラップは諦めて踏んで行こうかと覚悟を決めかけたとき、真横を赤い塊が通り過ぎて、主電源があるであろう壁の違和感に当たり、壁を抉り取った。

「これでよいのか?」

「ありがとな!」

どうやらサーシャが手伝ってくれたようだ。
このダンジョンに来て初めて役に立ったんじゃねぇか?

というかこれじゃどっちにしろ間に合わねぇ。
ミノタウルスは既に斧を振り上げてやがる。

速度だけなら『上級魔法:電』で間に合うだろうが、ヘタしたらエルフに当たる可能性があるから使えねぇ…。

頼むからこっちを向け!

『ダズルアトラクト!!!!』

俺はかなりのMPを注ぎ込んで叫ぶように魔法を放った。重ねがけが出来るかはわからないが、これでミノタウルスがこっちを向いてくれなきゃ俺にはあのエルフは助けられねぇ。

賭けのようなものだったが、どうやら俺は賭けに勝ったらしい。

ミノタウルスは一瞬動きを止めた後に俺の方を向いた。

「ぐぅおおぉぉぉおおぉぉっ!!!!」

ミノタウルスは咆哮を上げて、こっちに向かって走って来た。

俺は最後のトラップの主電源を殴り潰して解除し、アリアを下ろした。

「あのエルフの治療をしてやってくれ。」

「…はい。」

アリアはすぐに理解してくれたようで、ミノタウルスを避けるように壁沿いを走ってエルフに近づいていく。
まぁアリアでもミノタウルスくらいはもう倒せるだろうが、エルフの怪我の程度がわからないのに余計な時間を使わせるわけにはいかないからな。

これでエルフはとりあえず大丈夫だろう。

さて、ミノタウルスは既に克服してるから特別な感情はないんだが、俺を焦らせてくれたお礼はしないとな。

俺は右手に力を込める。

スキル「一撃の極み」を発動すると右手が徐々に黒いモヤに包まれていく。

スキルをタメ切るのにけっこう時間がかかったせいで、モヤで完全に右手が見えなくなったときにはミノタウルスは俺の目の前で斧を振り下ろしていた。

それにしても俺もずいぶん成長したようだな。ミノタウルスが全く脅威に思えない。

振り下ろされた斧に左手を添えて少し左にズラすと、斧は俺の左側スレスレを通って地面にめり込んだ。その際に少し地面が揺れた気がしたが、バランスを崩すほどじゃない。

俺は腰を落として、ガラ空きのミノタウルスの左脇腹を右手で殴りつけると、なんの抵抗もなく拳が吸い込まれていき、ミノタウルスの胴体が破裂した。

このスキルヤバイな。

俺が成長したってのもあるかもしれないが、どう考えてもスキルの効果だよな?前回ミノタウルスと戦ってからはそこまでレベルも上がってないと思うし…いや、覚えてねぇけど。

まぁタメに時間がかかるから普段使いは難しいかもしれないが、いざというときには使えるな。相手が硬すぎると俺の指が死ぬかもだけど。

とりあえず『ダズルアトラクト』を解除し、汚く上下に分けられたミノタウルスは放置して、アリアのもとに向かった。



「どうだ?」

「…問題ありません。」

「えっと…ありがとうございます。」

エルフは壁に背中をつけて座った状態のまま、俺に頭を下げてきた。

金髪ロングの碧眼に白い肌。ローブに隠れてハッキリとは見えないが、たぶん胸も含めたスレンダー体型。ザ・エルフって感じだな。あくまで俺が日本にいたときに想像してたエルフだが。年齢は俺と同じか少し上に見えるが、エルフじゃ当てにはならないだろう。

エルフが着ているローブはもとは白いローブなんだろうが、土汚れと血の汚れでそういう模様みたいになっている。

「気にするな。俺に敵対してないエルフは仲間のようなもんだからな。」

ん?よく見ると耳の尖りが少し短いな。

「どういうことですか?」

「キャンテコックとの約束だ。といってもわからねぇだろうから、今回はラッキーだったと思ってくれ。」

「コック…。その方の家名はご存知ですか?」

「…キャンテコック・クルミナーデです。」

俺がなんだったかと思い出そうとしていたら、アリアが代わりに答えてくれた。よくそんなすぐに思い出せるな。

エルフは驚いた顔をしたあと、ダルそうな体を必死に動かし、俺の方を向いて片膝立ちの姿勢をとって頭を下げた。

「申し訳ありません。コック族との盟約のもと、私を助けてくださったとのことでしたが、私はエルフではありません。紛らわしい姿で大変申し訳ありません。助けていただいたことは大変ありがたく思っております。どうかこの件は盟約とは別とし、金銭で解決させてはいただけませんでしょうか?」

ん?ん??ん???
いきなりかしこまってどうした?

「そんなかしこまんなくていいんだが……というかエルフじゃねぇの?」

「申し訳ありません。私はハーフエルフです。」

「んだよ。じゃあエルフでいいじゃねぇか。べつにそこまで細かい約束したわけじゃねぇし、俺とキャンテコックの個人的な約束だ。あんたがそこまで気にする必要はねぇよ。」

「え?コック族の族長との盟約では?」

「コック族ってのがそもそも初耳だが、あいつはまだ族長じゃなかった気がするぞ。だから盟約なんてかしこまったもんじゃねぇよ。それに俺からしたらエルフもハーフエルフも変わらねぇから、敵対しない限りは助けるという約束は守るつもりだ。もちろんアリアたちに危害が加わらない範囲内でだがな。」

「エルフとハーフエルフが同じだなんて!エルフ全てを敵にまわすおつもりですか!?」

「は?その程度で敵になるなら、そもそも友好関係なんて築けねぇからどうでもいい。ハーフエルフってのはエルフと人族のハーフなんだろ?それを受け入れられないってことは要するに人族を認められねぇってことだろ?なら最初から敵じゃねぇか。…あぁ、でもハーフエルフって種族があるなら他と一緒くたにまとめるのは失礼か。悪かったな。まぁ今回は気まぐれで助けた程度に思っててくれ。」

「え?いや、そういうわけでは……いえ、ありがとうございました。」

一通り話が終わったのを見計らったようにイーラたちが合流した。

「あれ?アールニエさんじゃないッスか?」

「マルチさん?」

「知り合いか?」

「昨日ギルドで会ったグルージャさんのパーティーメンバーッスよ。そういえばあのときはいなかったッスね。」

グルージャを知らねぇがギルドで会ったのは話しかけてきた男しか覚えてない。だからたぶんあの男がグルージャだろうな。

あのときは他に男4人しかいなかったから、この女を含めて6人パーティーってことか。

「アールニエだったか?1人なのか?」

「いえ、グルージャたちと一緒だったのですが、ミノタウルスとの戦闘中に急にもう1体のミノタウルスが私たちの間に生まれてきたのでバラバラに逃げることになってしまいました。最初のミノタウルスは片足を失っていましたし、新しく生まれたミノタウルスは私を追ってきたので、他のミノタウルスに運悪く出会っていなければグルージャたちは無事だと思います。」

隊列が崩れたから一回逃げてから合流予定だったのか?他のダンジョンならその作戦もありかもしれないが、トラップだらけのダンジョンだと自殺行為なんじゃねぇのか?

まぁ俺のパーティーじゃねぇからいいか。

というかパーティーのど真ん中に魔物が生まれてくるなんてあるんだな。その情報は先に知っておけて良かったかもしれない。

そもそも魔物がどう生まれてくるかわからなかったから考えてもいなかったが、もしかしたら発生する場所が決められてて、そこから定期的に生まれてくるのかもな。それなら知らなければたまたまその近くで戦ってて、パーティーのど真ん中に魔物が生まれてくる可能性もあるか。一応気をつけておこう。

「んで、アールニエはどうする?帰るならリスタートで1階に繋げるくらいはしてやるぞ。」

「お心遣い、ありがとうございます。ですが、私はグルージャたちを探したいと思います。」

「そうか。…まぁ乗りかかった舟だ。手伝ってやるよ。」

「いいんですか?」

「あぁ。べつに急いでないしな。」

「ありがとうございます!よろしくお願いします!」

アオイには悪いが、俺の勝手な判断で最短距離から外れて、グルージャ探しという名のマップ埋めの作業に入った。






ミノタウルスが斧を振り下ろし、アオイに当たる直前でアオイの姿がブレた。そのことにミノタウルスが気づいているのかはわからないが、斧は止まらずそのまま地面に食い込むが、さっきまでいたはずのアオイの姿は既にそこにはない。
アオイはいつのまにかミノタウルスの左肩に乗っていたが、用は済んだとばかりに飛び降りた。そして遅れてミノタウルスの首の左側に浮き出た線がパクリと開いて血が噴き出した。

斧を手放し首を抑えながら崩れ落ちるミノタウルスを背景にアオイは俺たちの方に向かって歩きながら、血の付いていない刀を一度外に振り払ってから鞘へと収めた。

アオイはミノタウルスを一太刀で切断は出来ないらしいが、それでも一太刀で殺したいのかいろいろ試した結果が今の殺し方みたいだ。1つ前のミノタウルスも同じような殺し方をしていたから、近づいて首を切るのがアオイ的にはしっくりきたのだろう。
まぁそこまでして一太刀で殺すことに拘る必要があるのかは不明だが。

これで俺が倒したのを含めたら8体目のミノタウルスだ。

このダンジョンの地下43階にはミノタウルスしかいないみたいだが、出現率が今までに比べて高い。
数が多い方がアオイの練習にはちょうどいいのかもしれないが、グルージャを探すという目的を考えるとちょっとマズイな。

タイミングが悪かったにしても、2体目のミノタウルスが出ただけで対処出来なくなるやつらが、こんなにミノタウルスがいるところで生きているとは思いづらい。でも今のところ死体を見てないから、先に帰った可能性もあるし、まだあと少し残ってる未探索エリアにいる可能性もなくはない。
だから俺らはまだ地下43階をウロウロしている。

セリナがいればとっくに見つけられてるかもしれないが、いないものは仕方がない。それに仲間を見捨てて逃げたやつらという印象があるせいか、本気で探そうという気になれてないのかもしれない。
地下43階ともなると相当な広さになるんだが、歩いて探している時点で本気とはいい難いだろう。まぁ俺以外からしたらどこにトラップがあるのかわからないみたいだし、歩いて探索してることになんとも思ってはいないようだが。

この階はトラップがあまりないのか、俺が最初にぶっ壊した3つ以外には今のところ2つしか見つけていない。その2つも俺が指摘せずともアリアが見つけて解除していた。
それにしても2日で教えてくれた相手の技量を超えるとか、アリアはどんな脳の作りをしてるんだか。子どもだから吸収が早いというのはあるかもしれないが、やはり異常だなといつもながら思ってしまう。おかげで俺が楽を出来てるから嬉しい限りなんだがな。




ガギンッ!!………カランッカランカランカラカラカラ…。


俺らが進んでる道の先から金属同士が激しくぶつかるようなかなり大きな音がした後、少し間をおいて金属が転がるような音が僅かに響いた。

見つけたときには死んでいたなら別に良かったが、危ないかもしれないとわかってて何もしないのはさすがにマズイか。

「イーラ!」

本当はイーラの変身はあまり見せない方がいいのかもしれないが、トラップを遠くからでも見つけられるのは俺しかいないし、俺を連れて高速で移動できるのがイーラしかいないのだから仕方がない。手伝ってやると俺からいった以上、最低限のことはするべきだからな。

「は〜い。」

俺はイーラに俺を乗せて高速移動出来るように変身しろという意味で名前を呼んだんだが、返事をしたイーラは地面に6つの魔法陣の様な模様を描いて光を発し、その模様の中心から狼のような魔物を6体出現させた。
普通に見たら魔法陣から魔物が生まれたように見えるが、これはイーラの分身体だというのが観察眼のおかげなのか俺にはわかる。
魔法陣を光らせて、その中に『上級魔法:空間』を発生させてイーラの体内と繋げてわざわざ生み出してるっぽいな。

なんでこんな面倒なことしてるんだ?

「イーラちゃんは召喚魔法が使えるんスか!?」

マルチからしたら、知り合いが危険な目にあってるかもしれないのに緊張感のないやつだな。

イーラの分身体が走っていくのを見ながら、わざわざ召喚魔法っぽく見せた意味を考えたがやっぱりよくわからない。そもそもイーラがそこまで考える頭があるとは思えないからなんとなくカッコいいからやっただけかもな。もしくはアリアから前もって指示されてたとか?…それはさすがに考えすぎか。

イーラの分身体が行ったからもう大丈夫だとは思うが、アールニエが心配なのかソワソワしているから、仕方なく俺らも小走りで音のもとへと向かった。





なんでグルージャを押さえつけてんだ?

俺らが駆けつけるとミノタウルスの姿はなく、いるのはイーラが生み出した6体の狼っぽい魔物と男が2人。男は1人がグルージャでもう1人はギルドで見た気がするからたぶんグルージャのパーティーメンバーだ。んで、なぜか2人ともイーラの分身体に乗られて押さえつけられていた。

「イーラ、これはどういうことだ?」

「わからな〜い。抵抗したんじゃないかな〜?」

分身体だから意識共有してるのかと思ったらそういうわけではないのか?
まぁグルージャたちが無事ならいいか。

「アルニじゃないか!生きてて良かった…。」

うつ伏せに寝かされて、魔物に背中に乗られて押さえつけられているのに仲間の無事を確認出来て安心するとは随分頭が幸せなやつだな。普通なら自分が命の危機なんだから安心する余裕なんかないと思うんだが。
実際はイーラの分身体だから命の危機ではないんだが、グルージャたちにはそんなことわからないはずだ。

「グルージャ…。」

アールニエがチラチラと俺とイーラを見ているんだが、どうした?……あぁ、イーラの分身体が怖いのか。

「イーラ、ありがとな。もうあの魔物は下がらせろ。」

「は〜い。」

イーラはまた魔法陣の様な模様を地面で光らせて魔物を回収した。

「え?今の魔物は嬢ちゃんが使役してんのか?」

「そうッスよ!」

俺らの話を聞いていたのか、グルージャが驚いた顔で確認を取ってきたんだが、何故か俺らが答えるより早くにマルチが答えた。

グルージャは見つけたし、俺らの用は済んだんだが、余計なことに時間を使ったから今日の探索はここまでだな。
行こうと思えばまだあと3階くらいは行けそうだが、無理する必要はないだろ。下り階段を下りたら帰るか。

俺がこの後の予定を考えてる間にアールニエとグルージャたちの感動の再会が目の前で繰り広げられてるんだが、どうも俺には理解が出来ない。

アールニエは置いていかれたんだから、ブチ切れていいと思うんだが、互いに無事で良かったといい合いながら、別れてから今までに何があったかを話し合っている。
…アールニエはきっと器がデカいんだろう。

「俺らはもう行くが、いいか?」

「あぁ、アルニを助けてくれて本当にありがとう。」

グルージャが頭を下げてきた。

「べつに知り合いとの約束があったから助けただけだ。気にするな。じゃあな。」

「あの!」

既に見つけている下り階段に向かおうとしたところで、今度はアールニエに呼び止められた。

「なんだ?」

「本当にありがとうございました!改めて、私はアールニエ・クラリアントと申します。お名前を教えていただけませんか?」

「リキ・カンノだ。じゃあ俺らは先に行くが、気をつけて帰れよ。」

アールニエが名乗ったときに後ろのグルージャが少し驚いた顔をしていたが、俺が名乗ったらさらに驚いていた。
一瞬なぜかと思ったが、そういやグルージャは俺というか「歩く災厄」を知ってるんだったな。そりゃ本人に忠告したと知ったら驚くか。
まぁどうでもいい。

俺は手をヒラヒラとアールニエに向かって振りながら、下り階段に向かって歩き始めた。







「お前はちゃっかりついてくるんだな。」

「そのいい方酷くないッスか!?ウチは今はアリアちゃんたちとのパーティーなんスからついてくるに決まってるじゃないッスか!」

アールニエたちと別れてから地下44階に下りて、すぐにリスタートで1階に戻ってきたときにマルチがいたから、なんとなしに声をかけたら鼻息荒く答えてきた。

「いや、アールニエたちと知り合いみたいだったから、あっちと一緒に帰るのかと思ってただけだ。」

「確かに知り合いッスけど、今パーティーを組んでるのはアリアちゃんたちッスから!」

「そうか。」

まぁ自分から声をかけといてなんだが、どうでもいいからそこで話を切り、とっとと宿に向かうことにした。

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