裏切られた俺と魔紋の奴隷の異世界冒険譚
174話
町に到着し、俺は宝石屋に用があるから他のやつらには冒険者ギルドでクエストを受注してくるようにいったんだが、イーラとセリナとニアは俺についてくることになり、フレドパーティーとサーシャだけ冒険者ギルドに行くことになった。
サーシャは出来る限り強い魔物を選ぶつもりみたいだが、今回はフレドたちが受けるクエストだって理解してるのか?
もともとは全員を冒険者ギルドに行かせるつもりだったんだし、べつにいいかと考えるのを放棄して、俺はイーラとセリナとニアを連れて王都の市場にある宝石屋に入った。
「いらっ……しゃいませ……。」
宝石商が胡散臭い笑顔でこちらを向いたかと思ったら、右の頬をピクピクしながら言葉が尻すぼみになっていった。
今はわりと涼しくなってきてるというのにこいつは汗っかきなのか頬を汗が伝っていた。
それが気になって見ていたら、1つ、2つ、3つとどんどん汗の伝う跡が顔に増えていった。前にあったときってこんなに汗かいてたか?
「…お久しぶりでございます。ほ、本日はどのようなご用件で?」
俺が黙って見ていたせいで静まり返った店内に耐えられなくなったかのように宝石商は質問してきた。
次々と顔に浮かぶ汗が面白かったとはいえ、さすがに今のは失礼だったな。
それにしても一度しか来てない客を覚えてるとか凄いな。実はけっこう優秀なやつなのかもしれない。
「悪い。今日は買いたいものがあって来たんだが、ここは身代わりの加護がついてるアクセサリーって売ってるか?出来ればあまり派手じゃない方がいい。」
装飾に拘っているせいで戦闘の邪魔になられたら困るからな。
「身代わりの加護のアクセサリーでございますか?以前こちらで買い取りましたネックレスの買い戻し希望ではないのでしょうか?」
なにいってんだ?ここは質屋じゃないとわかったうえで俺は売ったんだから、もう諦めてる。
でも、買い戻しが出来るんだったら数少ない日本の思い出の品だからちょっと考えてしまうかもしれないが、加護もないネックレスに金貨3枚はないだろ。買い取るとしたらもっと高くなってるか。あの頃は金貨1枚で1万円くらいだろうなんて思っていたけど、しばらく過ごしているうちにそれが間違いであることには気づいてる。今まで運良く金貨を手に入れることが多かったし、そもそも物価が違かったから日本円に換算して考えたりしなかったが、あえてするとしたら金貨1枚が10万円くらいなんじゃないかと思っている。
まぁ物によっては日本では存在しなかった魔法が絡んだりするからイマイチわかんねぇけどさ。
仮に10万円だとしたら売った額で買い戻せたとしても30万円………ネックレス1つにそれはねぇな。それでも買い戻せるとわかれば迷う可能性が高い。だから下手に迷いたくないし、買い戻しの話は広げるべきじゃないだろう。
「あれは売ったものだから買い戻すつもりはない。身代わりの加護が欲しいだけだからアクセサリー自体はネックレスでもブレスレットでも指輪でもかまわない。素材もよほど簡単に壊れなければ何でもいい。」
「左様でございますか。おいくつ必要とされますでしょうか?」
「2つあればいい。」
「かしこまりました。少々お待ちください。」
宝石商はカウンターの裏へと入っていき、しばらくしたら箱を持って出てきた。
「お待たせいたしました。こちらは中古品になってしまうのですが、これでよろしければお好きなものを2つで金貨1枚でお譲りします。」
宝石商が蓋を開けたから中を覗くとブレスレットと指輪がいくつか入っていた。
「え?」
後ろから声がして振り向くと、俺の肩越しにセリナが箱の中を見ていたようで、何故か驚いていた。
宝石商が思ったよりたくさん持ってたからか?
「これらは全部身代わりの加護がついてんのか?」
「はい。ただ、この中のアクセサリーの素材は鉄で、コーティングなどは一切していないため、錆びてしまうことがありますのでお気をつけください。買取時に付いていた錆は取り除いてあります。よろしければお手にとってご確認ください。」
手に取ったところで物の良し悪しなんかわかんねぇから、箱の中身に対して鑑定を行ってみたが、アクセサリーも鑑定出来るみたいだ。ちゃんと全てに身代わりの加護が付いていた。
ただ、相場を知らないから1つ銀貨50枚が適正価格なのかがわからない。しかもこいつは前に俺を騙そうとしてきたから、念のため識別を使っておくか。
『いいえ』
てきとうにブレスレットを1つ手に取り、銀貨50枚が適正価格かを識別で確認したら、否定された。こいつは懲りずにまたぼったくろうとしてるのか?
「おい、今2つで金貨1枚っていったか?このコーティングもされていない鉄のアクセサリーで?」
俺が睨みながら宝石商に確認を取ると、目を見開いてからキョロキョロと目線を動かし、止まりかけてた汗をまた流し始めた。
あからさまに動揺してるな。やっぱり騙そうとしてたのかよ。
前回で学習してないとかふざけてるのか?…イライラすんな。
「もう一度だけ聞く。これらは2つでいくらだ?」
俺が一歩近寄ると、宝石商は涙目になりつつ、唇を震わせた。
「ぎぎぎぎぎ銀貨80ま枚で大丈夫でです。」
いきなり2割も引けるってことはやっぱり騙してたのか。二割引いた額すらももしかしたら嘘かもしれないから、念のため識別を使って確認するとまた適正価格ではないと出た。
ここまでくると殺意すら出てくるな。
いきなり携帯のバイブのように震え始めた宝石商が尻もちをついた。そのせいで見下す形になった。
「なぜ安くなった?本当はもっと安くなるんじゃねぇのか?…これが本当に最後だ。これは2つでいくらだ?」
宝石商の上下の歯がうるさいくらいにガチガチと鳴りはじめた。そのせいか全く喋れていない。
憐れだな。
「リキ様!さすがにそれは可哀想だよ!」
俺が宝石商の言葉を待っていたら、セリナが慌てたように俺の服を引っ張ってきた。
「は?自業自得だろ?」
「にゃんで!?」
セリナがかなり驚いているが、むしろ俺からしたらなんでセリナが宝石商の肩を持つのかわからない。
「こいつはぼったくろうとしたんだから、このくらいは自業自得だろ。」
「え?いやいや!この人はむしろ凄く安く譲ろうとしてくれてるよ!?」
「じゃあなんでこいつはこんなに動揺してんだ?ぼったくろうとしたのがバレたからじゃねぇのか?」
「違うよ!リキ様が怖いからだよ!」
俺はまだ何もしてないんだけどな…前回の時も騙されそうになったことは水に流してやったし、怖がられる要素はないと思うんだが。
「セリナは身代わりの加護の適正価格を知ってるのか?」
「正確にゃのはわからにゃいけど、中古の鉄のアクセサリーでも1つで金貨1枚は普通にすると思うよ?私がリキ様の奴隷ににゃる前に持ってたのは確か金貨50枚だったかにゃ?」
「…は?」
「でも私が持ってたのは少しだけど装飾されてる金のネックレスだったからってのもあるけどね。もちろん昔の話だよ。」
身代わりの加護ってそんなに高いのか?
「でもクリアナは1日で作れてたし、アリアもできるだろ?」
「クリアナさんは知らにゃいけど、アリアを他と比較しちゃダメだよ!アリアが異常にゃだけだから!普通はあんにゃに早くいくつも付与にゃんて出来にゃいから!」
「仲間なのにずいぶんないい方だな。」
「仲間だから近くで見てる分、余計にわかるんだよ!付与のことだけじゃにゃいよ。アリアは私より4つも年下の人族にゃのに私が自信を持って勝ててるといえるのは戦闘と気配察知だけだよ?私は小さい頃からちゃんとした教養を受けてたのにアリアに勝てる気がしにゃいし、戦闘だってそこまでの差はにゃいんだよ!」
…。
「そうだな。いいたいことはわからなくはない。ただ、俺は別にセリナたちがアリアより劣ってるとは思ってないけどな。向き不向きがあるんだから、比較したって仕方ないだろ。」
セリナは納得していないのか不満顔で唇を突き出していたが、とくにいいかえしてはこなかった。
それより、セリナがいってることが本当なら、宝石商にかなり悪いことをしたな。
あらためて持っているブレスレットを見ながら、これが1つ銀貨50枚は相場より安いかを識別で確認とると『はい』と出た。
俺が勘違いしていたという確認が取れたから、震えは止まったが起き上がれていない宝石商に手を差し出した。
「すまない。俺の勘違いで不快な思いをさせてしまって…。金額は最初の金貨1枚で買い取りたいんだが、いいか?」
宝石商が恐る恐るといった感じで俺の手を握ったから、握り返して引っ張って立たせた。
「い…いえ、前回の私の行いのせいですので、自業自得で間違いございません。なので気にしないでください。では、この中からお好きなものをお選びください。」
あらためて差し出された箱からもう一つブレスレットを取った。さっき手に取ったのとほとんど同じ鉄のブレスレットだ。
とくにこだわりもないし、この2つでいいだろう。
「この2つで頼む。」
手にした2つのブレスレットを見せてから、金貨1枚と銀貨10枚を渡した。
「えっと…。」
「さすがに申し訳ないからな。大した額じゃねぇが受け取ってくれ。」
割引してもらってんのに金で謝罪とか逆に失礼かもしれないが、ほかにどうすればいいかわからないから、宝石商にそのまま受け取らせた。
「ありがとうございます。」
男は鉄のアクセサリー類が入った箱を閉じ、俺から受け取った金貨と銀貨と一緒にカウンターに持っていった。
ここでの用事が済み、フレドたちのところに行こうかと思ったらニアが店内のアクセサリー類を見ていた。ほぼ無表情だが、どことなく欲しがっているように見える。やっぱり女はこういうのが好きなのかね。
「もし欲しいんなら好きに買えばいい。時間がないわけじゃないから、選んでる間くらいなら待つぞ?」
さすがにとくに加護があるわけでもないのに金貨が飛んでいくような宝石やアクセサリーを買ってやる気にはならねぇ。だが、よくよく考えたら俺の奴隷じゃ金を持ってないから買えねぇのか。
もし本気で欲しがっているなら少し貸してやるか。もしくは奴隷全員分を買ってやるか…後者はねぇな。
「いえ、ただの装飾品のためにお金を払うのはもったいないのでいりません。」
俺の仲間にしては珍しく、ニアは服装もけっこう気を使ってるタイプだから、本当は興味があるんだろうけど、奴隷であることを気にして欲しいといえないのかもな。
「そうか?まぁ興味ないならいいんだが、これなんか似合いそうだけどな。欲しいのがあるなら金は貸すぞ?さすがにただの装飾品をニアにだけ買ってやることは出来ないからな。」
入り口近くにあった、銀の小さめのチェーンと親指の第1関節くらいのなんかの赤い宝石が1つついたシンプルなネックレスを視線で指しながら、奴隷だからと気にするなという意味も込めて背中を押してやる。これでもいらないっていうなら本当にいらないのだろう。
「本当に自分に似合いますか?」
気に入らなかったか?
「髪の色に近いその宝石は似合うと思うし、ニアはゴテゴテしたのよりそういったシンプルな方が似合うと俺は思うが、そこは好みの問題だろ。そもそも俺はべつにセンスがあるわけでもないからな。買うなら自分で選んだ方がいいぞ。」
「ありがとうございます。すいませんこれをください。」
ニアは俺に頭を下げると、すぐに宝石商に買う旨を伝えた。
…俺の話を聞いてなかったのか?それとも主が選んだものは買わなきゃいけないと思ったのか?
意味がわからず、自然と眉根を寄せている間に会計を済ませたようで、宝石商から渡されたネックレスを持ってきた。
というかなんで金を持ってるんだ?
銀貨50枚を払っていたようだが、そんな金を渡した記憶がない………忘れてるだけか?
「あの…リキ様が嫌でなければ、このネックレスをつけていただけませんか?」
今までこういった装飾品をつけることがなかったからつけ方がイマイチわからないのか?髪が長いし初めてだとつけづらいのかもな。
「あぁ、ここの留め金を外してつけるだけだ。つけてやるから後ろを向け。」
「はい。」
ニアから渡されたネックレスを一度確かめ、つけ方を教えてからつけてやった。最後に髪を持ち上げて垂らす。ビックリするほどサラサラなうえにいい匂いがした。
…。
「ありがとうございます。」
「私のも選んで!」
「イーラも!」
ネックレスをつけ終えると、振り返ったニアが微笑んでお礼をいってきた。
一瞬顔がニヤけそうになったところでセリナとイーラも選ぶようにと詰め寄ってきたから事なきを得たが、ニアが計算でやってるなら凄いの一言だ。
それにしてもイーラまで欲しがるのは予想外だった。まぁいいけど。
「イーラはこの青い宝石が似合いそうだな。セリナはそこの真珠なんかが似合うんじゃねぇか?」
「やった!これください!」
「さすがに真珠は高すぎるよ…。」
俺が視界に入った中で2人に似合いそうな物を選んだが、イーラは即決でセリナはさすがに金がないようだ。そりゃこの店で1番高いって前にいってたやつだからな。
イーラに選んだのはニアと同じく細かい銀のチェーンに宝石がついてるタイプのネックレスだ。ようは色違いだな。正確には宝石の種類が違うんだろうが、そんなものは知らん。
セリナは真珠を惜しげもなく使ったネックレスだ。真珠の価値なんか知らないが、間違いなく高いだろうな。
他に似合いそうなのだと、やっぱり金が無難かななんて思っていたらいいものを見つけた。
「これなんていいんじゃないか?」
そこにあったのはなんの金属かはわからないが、細かい黒いチェーンに金色の小さな鈴がついたネックレスだ。
やっぱ猫といったら鈴じゃね?
「鈴?魔物避けかにゃ?」
「こちらは純金で出来ている普通の鈴です。当店は冒険者の方が主なお客様でして、一時期冒険者の間であえて鈴をつけて場所を知らせるという戦い方が流行ったときに人気だった商品です。今でも一部の女性には人気があるようなので用意はしてありますが、主に戦闘をなさる方にはオススメいたしません。」
セリナが首を傾げていると、宝石商が説明してきた。
ようは冒険者の縛りプレイ用か。命がかかってるのにそんなことが流行るなんて戦闘狂かただの馬鹿ばっかだったんだな。
「本当はベルトタイプの赤いチョーカーに金の鈴が1番なんだがな。」
俺がニヤけながらいったせいか、セリナが訝しんだ目を向けてきた。
「もしかして馬鹿にしてる?」
「そんなことはない。あとはお腹に大きなポケットがあれば完璧だな。」
「やっぱり馬鹿にしてるよね!?」
さすがにふざけすぎたか。でもこのネックレスは初めは冗談だったが、悪くないんじゃないかと思い始めてきた。
「まぁ最初は冗談だったが、よく見れば本当に似合いそうじゃねぇか。セリナなら消音のスキルで音は消せるんだし、戦闘には問題ないしな。」
「やっぱり馬鹿にしてたんだ。でも本当に似合うにゃら買おうかにゃ。これください。」
セリナは唇を尖らせながらもこのネックレスを買うことにしたらしく、宝石商に金を払っていた。
「まぁセリナだったら可愛い顔してるからだいたいの物が似合いそうだし、問題ないだろ。」
「…え?もう一回いって!」
「は?問題ないだろ。」
「そこじゃにゃい!その前!」
「ん?可愛いんだからだいたいの物が似合うだろ。」
さすがは王族というべきか、セリナの見た目は種族が違う俺でも思うくらいにかなり整っている。…いや、王族は関係ないのか?セリナの姉はブサイクだったしな。
「んふふ〜♪」
セリナがだらしない笑顔で変な声を出した。
セリナは可愛い自覚があると思ってたんだが、人からいわれるとそんなに嬉しいものか?
「リキ様。自分は可愛いですか?」
「あ?可愛いけど、どっちかっていえば綺麗系だろうな。」
「…ありがとうございます。」
ニアは自分から聞いたくせに恥ずかしくなったのか、赤くした顔を手で覆い隠しながらお礼をいってきた。お世辞じゃないからお礼をいわれるようなことでもないんだがな。
「イーラは!?」
「イーラは可愛い系だな。」
イーラの見た目は髪や目の色以外は歩とほとんど同じなんだから可愛いのは当たり前だろ。あいつは肉親の贔屓目なしでも可愛いからな。
イーラは嬉しそうに俺の右腕に絡みついてきたが、性別のないイーラは可愛いっていわれて嬉しいのか?まぁ反応を見るに嬉しそうだからいいか。
「イーラにもこれつけて。」
「私も!」
イーラが片手に持っていたさっき買ったネックレスの存在を思い出したように俺に差し出してきたら、セリナも便乗してきやがった。
まぁイーラはもともとスライムだからつけ方がわからないのは仕方がないが、セリナは何度も自分でつけたことあんだろ。
「セリナは自分でつけられんだろ。」
「いいじゃん!つけてよ〜。」
セリナの要求を一度断ると、セリナは正面から俺に抱きついてきて、俺の胸に顔をグリグリと押し付けてきた。鬱陶しい…。
あぁ、セリナは王族だったから、ネックレスをつけたことは何度もあるけど自分でつけたことはないってやつか?それでつけられないのを知られるのが恥ずかしいとか…それはありそうだな。しゃーねぇからつけてやるか。
2人にそれぞれのネックレスのつけ方を教えながらつけてやった。それぞれっていってもつけ方はほとんど同じなんだけどな。
「あの…アリアさんに似合いそうなアクセサリーも選んでいただけませんか?」
イーラとセリナにネックレスをつけ終わると、ニアが申し訳なさそうに声をかけてきた。
「アリアに似合うもの?」
「はい。アリアさんにも渡したいのでお願いします。」
なんでニアがアリアの分を買ってあげようとしてるのかわからないが、とりあえずもう一度店内を見回す。
アリアは日本人に近い見た目だし、やっぱり金が似合うだろうな………おっ、あれなんか良さそうだな。
少し店の奥まで歩いて、あらためて気になったネックレスをよく見るが、可愛らしく子どもでも似合いそうでいい感じだ。たぶんアリアにも似合うだろ。
細かい金のチェーンに金の花のような形をしたペンダントトップがついたネックレスだ。そのペンダントトップの中心には本当に小さい淡い赤の宝石がついていた。
「これとかいいんじゃねぇか?」
「金貨3枚…。」
ニアが金額を呟いて困った顔になった。たしかに金貨3枚は高えな。
「アリアに買うの?にゃら私も半分だすよ?」
「じゃあイーラも半分だすよ?」
「イーラは計算がよくわかってにゃいみたいだけど、三等分しよ?1人金貨1枚にゃら払えるでしょ?」
「いいんですか?」
「アリアにはいっぱいお世話ににゃってるからね。むしろ私1人で買ってあげたいくらいだけど、発案したのはニアちゃんだから私とイーラは便乗したって形で三等分しよ。渡すのは発案者のニアちゃんからお願いね。」
そういってセリナがニアに金貨1枚を渡すとイーラも真似するように金貨1枚渡した。
ニアは宝石商を呼びにカウンターの方に歩いていった。
「…いや、ちょっと待て。なんで金貨なんて持ってんだ?」
全ての流れを見終わった後、ふと思い出してセリナに確認をとった。
「私はアリアの手伝いや訓練ついでに討伐した魔物の素材をフレドたちに売ってきてもらって得たお金にゃんだけど、やっぱり奴隷がお金を持っちゃダメ?」
「いや、自分たちで稼いだんならかまわないが、俺が知らないうちにそんなことしてたんだな。」
「よかった!アリアがリキ様は自分で稼いだお金にゃら自分で使うようにいってくるっていってたから普通に自分のお金にしちゃってたけど、よく考えたら奴隷の所有物は全部主のものににゃるんだったよ!」
「いや、ただどうやって金を手に入れてんのか気になっただけで、それ以上はどうするつもりもねぇよ。まぁ普段の仕事もあるんだから無理だけはするなよ。」
「「「はい。」」」
いつのまにか戻ってきていたニアもちゃんと聞いていたようだ。
「じゃあ今度こそ用も済んだし、フレドたちと合流するぞ。」
「「「はい。」」」
宝石商に軽く手を上げ、俺らは宝石屋を出て冒険者ギルドに向かった。
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