裏切られた俺と魔紋の奴隷の異世界冒険譚

葉月二三

172話



シャワーを浴びてから部屋に戻り、放心少女を今後どうするかを考えているうちに夕食の準備ができたとアリアが知らせにきた。

あんま他のやつらの仕事ばかり増やすのは悪いし、俺がしばらく面倒をみるしかねぇかとあきらめ、部屋を出て、アリアと食堂に向かった。

「さっきのガキは風呂に入れた後どうした?」

「…クリスさんが面倒をみたいとのことでしたので、任せることにしました。今までクリスさんが受け持っていた仕事は多くはないので、仕事の再分担は既に終えています。」

自分と同じ境遇だから同情してるのか?まぁ本人がやる気なら任せるか。といってもあの状態の人間の世話は間違いなく大変だろうから、クリスが限界を超える前に気づいてやれるように気にはしておくか。

それにしてもアリアは優秀だな。帰ってきてからそこまで時間があったわけでもないのに既に仕事の再分担を済ましてるとか凄いわ。

「そうか。アリアがいてくれて本当に助かる。ありがとな。」

「……………そういってもらえるだけで幸せです。」

アリアは礼をいわれなれてないのか、しばらく沈黙した後に返事がきた。
アリアは奴隷という立場を意識しすぎてるところがあるから、返答に迷ったのかもな。隣にいるアリアは少し俯いてしまったからどんな顔をしてるか見えなくて、本心はわからないが。

その後はほぼ無言で歩いているうちに食堂に着いた。

料理は既にテーブルに用意し終わっていて、俺とアリア以外は全員が席についているようだったから、俺はいつもの席についてすぐに「いただきます。」と声をかけた。

全員から「いただきます。」と返ってきて、それぞれが飯を食い始めるのをなんとなしに見回した。

それにしてもずいぶん増えたな。

いつの間に増えたのかは俺は把握してないが、全員どこかしらにグループマークをつけてるっぽいからアリアやサラ、少なくともソフィアは把握してるんだろうな。
既に100人は超えてるっぽいが、これだけの人数になってもガキ同士は普通に笑顔で話すくらいには仲が良いみたいだ。まぁ数人は笑顔がぎこちないやつもいるが、ここにいるのは全員子どもみたいだからたぶん孤児なんだろうけど、悲しそうな顔をしているやつがいない。まぁ無理してるんじゃなきゃいいんだけどさ。

ローウィンスの近衛騎士のエイシアもまだ1日しか経ってないわりにはずいぶん馴染んだみたいだな。

アリアの隣に座ってるエイシアはあまり表情が変わらないタイプみたいだが、それでも初対面のときよりはだいぶ柔らかくなったように見える。

そんな状態に満足しつつ夕飯を食べ終えた後は何もせずに眠りについた。






朝起きると、またセリナがベッドに入ってきてやがった。

俺が眉間にしわを寄せると、それだけでなにかを察知したのか耳をピクピクとさせてから目を開いた。

「あ、リキ様おはよ〜。」

「おはようじゃねぇよ。なんでここにいんだよ?」

イライラを隠さずに言葉を発しても、セリナは全く気にした様子はない。

「今日はお仕事休みにゃんだ!だから1日リキ様と一緒にいれるよ!」

朝から元気で鬱陶しいな。

「そうか。だけど今日は特に予定はねぇよ。」

「べつに一緒にいれればいいもん。」

「わかったわかった、好きにしろ。だけど顔洗いたいから離れろ。」

無理やり引き剥がしてベッドから降りると、セリナは唇を尖らせた。
本当に最近のセリナは変だ。あの日か?
妹の歩もたまに変に甘えてくることがあったしな。

だとしたら数日もすればもとに戻るだろうから大目に見ておくか。
続くようなら何かしらの対策を考えなきゃだけど。

そんなことを考えながら部屋にある洗面台で顔を洗ったり、歯を磨いたりしていると、イーラが朝食の準備が終わったことを知らせにやってきた。
セリナがそれに答えるとイーラまで勝手に入ってきやがった。

「セリナだけズルイよ!」

「イーラはいつも一緒にいるんだからいいじゃん!」

あぁ、いつも門番の仕事があるからって置いていかれるのが寂しかったのか。

だからって勝手に部屋に侵入していい理由にはならねぇけどな。

「朝から喧嘩なんかするんじゃねぇよ。朝飯できてんなら行くぞ。」

「「は〜い。」」

2人とも本気で怒ってるわけでもなかったのか、すんなりと俺に従って、一緒に食堂に向かった。







朝食を終えて、特にやることもなかったから自分の部屋に戻ってきたのだが、なぜかイーラとセリナとニアが当たり前のようについてきた。

俺がベッドでゴロゴロしようとするとイーラとセリナも入ってこようとするし、その度にニアが睨んでくるせいで休むに休めない。

何度かイーラとセリナとの攻防を繰り返した後、無駄だと気づいて諦めた。
まぁ邪魔すんなと命令すればいいんだが、こんなくだらないことで命令するのもバカらしく感じたし、せっかくだからガキどもが普段何をしているのかを見て回るかと思い、ベッドから降りた。

「どこか行くの?」

尻尾をピンと立てたセリナが俺の腕に絡みついて確認をしてくると、反対側にイーラが絡みついてきた。

「そういやガキどもが普段何してるか知らねぇなと思ったから、ちょっと見て回ろうかと思ってな。」

「「行こ行こ!」」

「お伴します。」

イーラとセリナは部屋でまったりするより出歩く方が好きなのか、テンションが上がってるみたいだ。
ニアはセリナに冷たい目を向けながらついてくるつもりらしい。こいつら仲悪いのか?

まぁセリナは気にしてないみたいだから喧嘩にさえならなきゃ俺が余計なことをいうべきではねぇか。




その後4人で屋敷の中を一通り見てから村の中や外周、少し離れたところにある畑などを徒歩で見回った。
ガキどもはだいたいが掃除や料理の担当に分かれて、残りの力がありそうな年長組はガルナやガルネと一緒にアリアの指示を受けながら建築の手伝いをしていた。年長組っていってもこの村には10歳を超えてそうなやつは少ないがな。
新しく村人になったやつらは村の外壁の外でサラやエイシアの指導を受けながら訓練しているみたいだ。そこではヒトミやウサギやヴェルも手伝っていた。

カレンとアオイは今日の門番みたいだが、いつのまにか出来ている門番用の小さな建物に入っていて、小窓から見える姿はとても暇そうだった。
まぁまだ完成すらしていない村にくるやつなんていないからな。




村から少し離れたところにある畑はドライアドとトレントたちが手分けして世話しているようで、テンコも精霊の力で手伝っているみたいだ。そこでサーシャが興味深そうに見ていたが、手伝ってはいないように見える。

「サーシャは何やってんだ?」

「我か?今日は休みということで暇だったからのぅ。魔族や魔物が働く姿を眺めとっただけよ。」

「そうか。」

休みをどう使おうが本人の勝手ではあるが、そんなことして楽しいのか?

「リキ様は何をしておるんじゃ?」

「普段、みんなが何をしているのかを見て回ってるだけだ。」

…俺もサーシャと同じようなことをしてるんだったな。サーシャに余計なことをいわなくてよかった。

「なら我も同行しようかのぅ。休みとやらがいまいちわからんくての。」

「休みがわからないってなんだよ。好きなことすればいいだろ。」

「好きなことか……なら我と勝負してくれんか?我がどの程度強くなれたか知りとうて。」

「断る。好きにしろとはいったが、俺を面倒なことに巻き込むな。」

「なら仕方がない。一緒にダンジョンに行かぬか?」

こいつは俺を巻き込むなって意味が理解出来ないのか?

でも、どうせ暇だし、ダンジョン探索もありかもな。
ダンジョン探索をするなら本当はアリアも連れて行きたいんだが、なんか忙しそうだったから邪魔するのはさすがに悪いだろ。

「しゃあねぇな。どうせ暇だし、行くか。ただ、あんま深くまでは行かねえからな。」

「感謝する。」

「イーラも新しい武器を使ってみたかったんだよね!」

イーラがそういって笑顔で釘バットもどきを作り出した。前にニアがいっていた返しのついた棒だ。

この前盗賊のアジトにいった時に用意してたけど使う機会がなかったからな。

俺もせっかくだし、威圧のスキルを試してみるか。

当初の予定にはなかったが、サーシャの希望でダンジョンに潜るため、俺らは領地内にあるダンジョンへと向かった。

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コメント

  • 葉月二三

    ありがとうございます!
    そういってもらえると嬉しいです!

    まだまだ続くので、これからも楽しんでもらえたら幸いです٩( 'ω' )و

    0
  • 中村屋㈱

    不思議だぁ
    何で一番面白いのに、いぃね❗️が少ないのだろぅ?

    2
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