裏切られた俺と魔紋の奴隷の異世界冒険譚

葉月二三

165話



昼飯は一度村に戻って食べるつもりだったんだが、余計な出来事があったせいで、面倒になっちまった。時間的には丁度いいかもしれないが…はぁ。

「飯は帰って食うつもりだったが、この辺でてきとうに食おう。だから村のやつらに伝えといてもらっていいか?」

「…はい。」

アリアに連絡を頼み、俺は市場を歩きながら飲食店を探す。文字が読めないからか、そもそも店の紹介なんて表に書かれてないのかはわからんが、どんな店かは大まかにしかわからねぇ。大まかってのは装備品が売ってる店か本屋か飲食店かくらいの大まかさだ。それに飲食店ってのはわかっても、表に見本があるわけじゃねぇから何をメインにしてる店かもわからねぇ。

まぁ間違いないのは何度か行ってる定食屋みたいなとこなんだろうがな。

「…リキ様。もしお店を決めていないのでしたら、行ってみたいところがあるのですが。」

アリアからこんなこといわれんのは珍しいな。

「別にかまわねぇけど、有名な店なのか?」

「…店主が以前は王城で料理長を務めていたという噂を聞いたことがあります。」

ってことは高いのか?でも、村を作ることを考えてるから金が足りなくなりそうな気がしているだけで、一食贅沢したくらいなら大差ないだろ。
村の飯はガキが作ったにしては驚くくらいに美味いが、やはりプロとはレベルが違う。
ガキどもには悪いが、俺だってたまには食で贅沢したいんだ。許せ。

「わかった。金に余裕はあるから、そこにしよう。んで、どこにあるんだ?」

「…北門近くの宿屋が経営している食堂です。」

北門の宿屋?この町には基本的に北門から入ってくるが、そんな食堂が有名そうな宿屋なんかあったか?

「じゃあ案内頼む。」

「…はい。」




アリアの案内で着いたのはそこまで大きくないが小綺麗な宿屋だ。一階の食堂には昼時だからかけっこうな客がいるな。

というか、ここは俺が初めて泊まった宿屋じゃねぇか!

忘れもしねぇ、なんちゃって目玉焼きを出されたところだ。いや、まぁ美味かったんだけどさ。

「…他にしますか?」

俺が立ち止まっていたからか、アリアが心配して確認してきた。

「いや、けっこう混んでるなと思ってな。」

「なら、自分が席を確保してきます。」

ニアが俺の横を通って前に出るさいに目が変色したのが見えたから、後頭部を鷲掴みにして止めた。

「ざけんな。何する気だ?」

「威圧をかけて、早々に帰宅願おうかと…。」

なんで俺の周りはバカばっかなんだよ。

「余計なことすんな。そういうバカなことすんのはサーシャだけにしてくれ。」

いや、ヴェルの方がそういうことしそうか?…どっちでもいいな。

「すいません…。」

「まぁいい。とりあえず中に入ってみよう。もしかしたら空いてる席があるかもしれねぇし、ないなら待てばいい。」

「…リキ様を待たせるのは悪いので、座れなかったら今日は市場の定食屋にしましょう。」

アリアが申し訳なさそうにいってきた。

「せっかくアリアの提案した店なんだ。俺は待ってでも食べてみたいと思うんだが、ダメか?」

有名なやつが作ってる店なら、なんちゃって目玉焼き以外も食べてみたいからな。

「…いえ、ありがとうございます。」

とりあえず入ることに異論はなさそうだったから、扉をあけて中に入った。

「いらっしゃいませ。宿泊ですか?」

俺より少しだけ年上っぽい活発そうな女が少し離れたところから確認しながら近づいてきた。

「いや、飯だけ食べにきたんだが可能か?」

「もちろん大丈夫ですよ。そしたら…相席でもいいですか?」

店員が周りを確認してるのにつられて見てみたが、空いているのは2人用テーブルとカウンター3席、あとは既に2人座ってる6人用テーブルといったところか。つまりその6人用テーブルの相席でいいかということか。
俺は飯を食うだけだから気にしないんだけどな……ニアは知らないがアリアとイーラはテーブルマナーなんか一切知らないから流石に同じ席なのは相手に悪いか?

なんとなくアリアを見ると少し悲しそうな顔をしていた。俺の心が読まれたか?

「…やめておいた方がいいと思います。わたしたちは奴隷なので、嫌がる方もいると思います。」

そっちか。そういや俺は奴隷だろうがなんも気にしちゃいなかったが、気にするやつは気にするのか。
外でなら知ったこっちゃないが、それで相手に不快な思いをさせたら店に迷惑かかっちまうか。さすがに同じ店内で奴隷がうんぬんいってくるのは知ったこっちゃないが、隣に座るのは相手にとってもアリアたちにとっても気分の良いものではない可能性もあるわけか。

「すまないが4人席が空くまで待たせてもらいたい。この後来た客を先に通してもらっても構わないから、いいか?」

「大丈夫ですよ。でしたらしばらくお待ちください。」

「じゃあ外で待ってるから、空いたら声をかけてくれ。」

「は〜い。」

終始笑顔で対応してくれる店員とか久し………あれ?この世界では初めてか?



「リキ様が食べ終わるまで自分たちは外で待ちますので、気にせず食べて来てください。」

外に出たらニアがそんなことをいってきた。

「ニアたちはどうする気だ?」

「1食くらい食べなくとも問題ありません。」

それをいうなら俺も食わなくてもなんとかなるんだが、そういうことじゃねぇだろ。

「もう待つっていったんだから、全員で食えばいい。」

そういって、店の入り口から少し逸れて、邪魔にならないあたりでしゃがみ込んだ。するとイーラが真似して、ニアも真似してきた。
なんだろう。コンビニの前でたむろしてる気分になるな。まぁアリアは立ったままなんだけどさ。

しばらくして宿屋の扉が開いたから、そっちに目を向けると店員が顔だけ出した。店員はキョロキョロと首を動かし、俺らを見つけて一瞬顔が引きつった気がしたが、すぐに笑顔に戻った。

「お待たせしました。どうぞ。」

ん?誰も出てきてないけど空いたのか?…あぁ、宿泊客の可能性もあるのか。

「あぁ、ありがとう。」

店員についていき、4人席のテーブルに着いた。俺が入り口から1番遠い奥の席に座らされ、その隣にアリア。俺の前にイーラで斜向かいがニアだ。俺はアリアに促されるように座らされたが、他の3人はもともと決まっていたかのようにスムーズに座ったな。なんか暗黙の了解でもあんのか?

店員からメニューを渡されてとりあえず見るが、やっぱりわかんねぇわ。

「俺の注文はアリアに任せる。ガッツリしたものが食べたい。アリアたちは好きなのを食え。金貨5枚以内なら遠慮はするな。」

メニューをアリアに渡して丸投げした。こういうときはアリアに任せておけば問題ないだろう。それに有名店だっていっても金貨5枚もあれば足りないことはないはずだ。全部使われたら痛い出費になるが、せっかくの外食で遠慮させたくねぇし、そもそも足りませんとかいわれたら恥ずかしすぎる。いや、それでも金貨1枚っていっとくべきだったか…今さら撤回なんかしねぇけど。

3人でメニューを見ながらあーだこーだと話し始めた。女ってのはなんでも決めるのが遅いイメージがあるよな。まぁイーラは女っていっていいのかわからねぇけど。

…あれ?ちょっと待て、3人でメニューを見て決めているだと?ニアはどの程度の教養があるかがイマイチわかってなかったから、まぁ可能性としてはありえた話だが、イーラが文字を読めるだと?言葉を話せるようになったのだって俺と出会ってからだよな?それなのに読めるのか?

いや、なんだかんだイーラはこの世界の生き物だ。それに俺は読む努力をしてないんだから、俺が読めなくてイーラが読めても不思議じゃない。俺が読めなくたって代わりに読んでくれるやつがいるんだからいいんだ。

どうやらメニューを決めたようで、店員を呼んで注文を始めた。そして、聞き間違いでなければ18品くらい頼んでた気がする。遠慮はするなといったが…まぁいいか。





注文した品の内、サラダや飲み物が先にきた。そりゃ一度にきたら置く場所ないもんな。

「んじゃ、いただきます。」

「「「いただきます。」」」

アリアが2種類のサラダを全員に取り分け、それをもしゃもしゃと食べた。そういやここのサラダはなんの味付けもされてねぇんだったな。いや、1つはコールスローっていったか?キャベツっぽいのが細かく切ってあって、それを甘酸っぱしょっぱく味付けされてる。合わせて食べると丁度いいな。

アリアが頼んでくれた飲み物はうっすらと青い。祭りのかき氷で使われるブルーハワイを思い出すが、この世界にも着色料ってあるのか?まぁアリアが頼んだものに間違いはないだろうと一口飲んだ。
おぉ、これは薄められたブルーハワイだな。いい意味で。
ほのかな甘みはあるが、サッパリしていて口に残らない。しかも後味がちょっとオレンジの香りがする不思議。青色の要素がわからんが普通に美味い。

そういや周りが静かだなと思って目を向けると、アリアは食べながら何かを真剣にメモっていた。ニアは綺麗な姿勢で黙々と食べている。俺も黙々と食べていたせいか、イーラも空気を読んだのか静かに食べている。

サラダを食べ終わった頃に残りの品が一気にきた。なんとかテーブルには乗っているがすごい量だな。やっぱりというかなんちゃって目玉焼きもあるな。

俺の目の前には刻んだ玉ねぎが山盛りにされてる厚切りのステーキが置かれている。たぶんこれが俺のためにアリアが注文してくれたものだろう。ということは他は3人で食うようだよな?よく食うなこいつらは。

とりあえずステーキを食べようとナイフを入れたらスンナリと通り過ぎてビビった。このナイフの切れ味半端ねぇ。

口に入るだろうギリギリの大きさにカットした肉を口に運んだら溶けた。いや、マジで。
さっきのはナイフの切れ味が良かったんじゃなくて、肉が凄まじく柔らかかったんだと気づいたときには口の中には何もなかった。

これはやばいな。

二口目は上に乗っている玉ねぎも一緒に食べたのだが、肉と玉ねぎは相性がいいんだな。柔らかすぎる肉にたいして、少しだけ食感が残っている玉ねぎが存在を主張してきやがる。しかもほのかな甘さと爽やかな酸味…違う。この酸味は玉ねぎのじゃない。なんだ?わからねぇ。ちくしょう…これがたまに料理する程度の男子高校生の限界か。

ヤベェ…何いってんだ俺?

美味すぎておかしなことをいってたな。まぁ心の中でだから誰にも聞かれてはいないが。

それにしてもステーキを頼んでるのは俺だけみたいだ。他のやつは遠慮したのか?肉って高いだろうし、遠慮するなっていってもアリアたちはなんだかんだ遠慮するしな。

「ほれ。」

俺はアリアが口に入れられるだろうサイズにナイフで肉を切り、玉ねぎを乗せ、フォークでぶっ刺してからアリアに向けた。

「…え?」

「おすそ分けだ。…あぁ、回し飲みとか気にする性格か。悪いな、新しいので切り直すわ。」

「いえ!そのままでいただきます!」

アリアが珍しく食いつくように即答してきた。
予想外過ぎて驚いたわ。俺を不快にさせたとか思ったのか?

「ほらよ。」

「…ありがとうございます。とても美味しいです。」

満面の笑みのアリアは珍しいな。若干頰が赤いが…もしかして間接キスとか思って恥ずかしくなったか?そういうのを気にするお年頃になったのかもしれないし、スルーしてやるか。

「イーラも食べたい!」

絶対いうと思った。まぁ食わせてやるつもりだったけどな。
イーラのは少し大きめでいいだろ。

「ほらよ。」

「あ〜ん。…!捕食したわけじゃないのに溶けた!美味しい!」

さっきまで静かにしてた反動か、やけにテンション高いな。

「ニアも食うか?」

「いえ、リキ様の分をもらうのは申し訳ないです。」

まぁ食べたきゃ自分で頼めばいいしな。

あらためて肉をカットし、玉ねぎを乗せて口に運ぶ。
これはいくらでも食えそうだな。

「あの…やっぱり一口もらえませんか?」

俺の食ってる姿が美味そうに見えたのか?
まぁ足りなきゃまた頼めばいいだけだし、イーラと同じくらいにカットした肉に玉ねぎを乗せて、フォークでぶっ刺してからニアに近づけた。

「ほらよ。」

「あ〜ん。…幸せです。」

本当に幸せそうな顔をしてやがるな。よっぽど肉が食べたかったのか?ならなんで頼まなかったんだ?ニアもやっぱり遠慮か?

「べつに肉が食いたいなら好きに頼めよ。毎回とはいえないが、今日は遠慮なんかしなくていいぞ。」

「いえ、確かにこのステーキもとても美味しいです。リキ様に会うまでの人生でここまで美味しいものは食べたことがありません。ですが、自分が幸せに感じたのはリキ様が食べさせてくれたからです。しかも間接キス。」

ニアは最後に頰を染めた。

ニアは本当に直球だな。しかも一度断ってから願い出たのは間接キスがしたいからかよ。さすがにここまで直球だと、俺まで間接キスを気にしそうになる…まぁそこまで俺は乙女な心は持ってないから気にしそうになるだけなんだが。

「15歳にもなって間接キスなんか気にしてんじゃねぇよ。」

「恋してる女はいつだって乙女です。」

「いってろ。」

「はい。ではあらためて、自分はリキ様「そういう意味じゃねぇよ!」…?」

ニアは小首を傾げている。通じなかったみたいだな。確かに勝手にいってろっていったら勝手に思ってることをいいだしてもおかしくねぇか。

「今のは俺の言葉選びが悪かった。寝言は寝ていえってことだ。」

「…。」

ニアは口をパクパクとさせて言葉を発せていない。なら話はこれで終わりでいいだろう。

「アリアは何をメモってんだ?」

俺とニアが話している間もアリアは黙々と食べながら何かをメモっていたのが気になって、話を逸らすネタに利用させてもらった。

「…見た目と香りと味でわかる範囲で材料や作り方の予想を書いています。」

「凄えな。食べるだけでわかんのか?」

「…さすがに作ってみないと予想が合っているかはわかりません。場合によっては何度試行錯誤を繰り返しても同じものが作れないこともあります。それでもここの料理は試す価値があると思ったので書いています。教えてもらえないとは思いますが、あとで作り方を売ってもらえないか聞いてみるつもりです。」

アリアは料理人でも目指してんのか?作ってる姿は見たことなかったが、アリアのことだから隠れて練習してるのかもな。
まぁ俺が戦わずとも収入を得られるようになったら奴隷は解放するつもりだから、アリアの年齢ならそれからでも料理人になれるだろう。イーラたちの解放は魔族が普通に暮らせる世界になってからだから、下手したら一生使い魔でいてもらうかもしれないが、戦う必要がなくなれば好きに生きてもらうつもりだ。

「勉強熱心なのはいいことだぞ。アリアなら料理人にだってなれるだろうな。」

「…ありがとうございます。リキ様は食べてみたいものはありますか?」

「食べてみたいものか…本物の目玉焼きも久しぶりに食いてえな。」

パッとは思い浮かばなかったが、ふとなんちゃって目玉焼きが見えたからそれにした。

「…本物の?この目玉焼きは偽物なのですか?」

「いや、いい方が悪かったな。この国ではこれが本物の目玉焼きかもしれないが、俺の知ってる目玉焼きはこんなに凝ったものではなくて、俺でも作れるような簡単な料理だ。べつに好物ってわけではなかったんだが、久しく食べてないと思ったらなんか無性に食いたくなっちまってな。」

「…どんな料理ですか?」

「ただ卵をとかずにそのままフライパンで焼くだけだ。家によって水を入れて蓋をしたり、片面焼いてひっくり返して両面焼いたりとかの多少の違いがあるけど、簡単にいえばそんな感じの見た目に焼いた卵だな。」

テーブルにあるなんちゃって目玉焼きを顎で指してこんな見た目だと告げたが、アリアとニアが驚いて固まっている。なんで?

「どうした?」

「…ごめんなさい。聞き間違いでなければ卵と聞こえたのですが。」

アリアが聞き直してきたが、何かマズったか?

「いったが、この国では珍しいのか?」

「もしかしてそのためにヴェルさんを奴隷にしているのですか?」

ニアが意味不明なことを聞いてきた。

「なんで今ヴェルの話が出てくんだ?」

「…ニアさんが勘違いしたのはヴェルさんが龍族だからだと思います。」

「今の話との関連性がわからないんだが。」

「…それはこの大陸で知られている卵を産む生物が龍族だけだからです。つまり、リキ様がいう目玉焼きは龍族の卵を焼いたものになるので、その卵の確保のためにヴェルさんを奴隷にしているのではと思ったのだと思います。」

「は?」

待て、確かに龍は卵を産むと聞いたが、卵を産む生物が龍だけとは聞いてねぇぞ。いや、龍族は珍しく卵を産んでから孵化するっていってたような気がする。珍しくっていってんだから他にはほとんどいないって意味だよな。なんで気づかなかった。

「この世界には鳥っていないのか?鶏とか。」

「…トリ?ニワトリ?魔物の名前ですか?その魔物は聞いたことがありません。食用の卵を産む魔物も聞いたことがありません。そもそも魔物で繁殖できるものは稀なので、仮に繁殖能力を持てば卵を産む魔物がいたとしても実際に卵を手に入れるのは困難かと思います。」

そういやこの世界には動物がいないんだった。何故か馬はいたけど、あれも魔物らしいから、本物の馬を知ってるやつがいたらどっか違うのかもな。俺は違いがわからんし、名前が馬だから馬だと思ってるけど。
そんで魔物はほとんどが自然発生で、繁殖能力を有する個体は稀なんだったな。そん中から卵を産む魔物を探し出すのは不可能に近いだろ。

ようするにこの世界では卵イコール龍の卵なわけだ。

んで、龍族は人間の部類に入るんだったよな。つまり卵を食うイコール人間の子どもになりかけを食うってことか…かなり猟奇的だな。

「よし、今のは忘れろ。あと、絶対にヴェルにはこの話はするな。これは命令だ。」

「「「はい。」」」

俺の奴隷たちはたまに頭がおかしいから、俺が食べたいっていったら卵を用意してくる可能性がないといいきれないからな。それに用意してくれたとしても、卵が龍の卵だと聞いてしまったら食べづら過ぎる…。

「…では、他に食べたいものはありますか?」

「じゃあカレーがいいな。」

「…カレーですか?どんなものですか?」

カレーも知らないのか?
シチューとか牛丼とかはあるのになんでねぇんだよ。
さすがにカレーのスパイスが何かなんてわかんねぇぞ。

「複数の香辛料を使った辛めのスープだな。具材は肉とジャガイモとニンジンと玉ねぎだ。あとは小麦粉でトロミをつけてるくらいしか俺は知らん。」

野菜類は日本と同じ名前が付けられてるから知ってるはずだ。それにしてもこの世界はややこしい。なんで通じる言葉と通じない言葉があるんだか。まぁ世界のあり方に文句をいったって仕方ねぇから、この世界で生きるなら俺が順応しなきゃなのはわかってんだけどさ。

「…わかりました。試してみます。」

「そうか。ありがとう。」




その後もたわいない話をしているうちに完食し、会計時にレシピの交渉をしてみたが、やっぱりほとんど売ってはもらえなかった。だが、何故か目玉焼きのレシピだけは金貨1枚で売ってくれた。真実を教えてくれたお礼だとかなんとか…まぁ意味不明だったが、アリア曰く破格の安さらしいから買っておいた。
ちなみに食事代はあれだけ食っても銀貨20枚にもならなかった。それに比べてレシピって高いんだと思っていたら、このなんちゃって目玉焼きはこの店の目玉商品らしい。目玉焼きだけに。…違うな。
わざわざ貴族がこれを食べに来ることもあるとかないとか。まぁアリアが喜んでるからいいか。

それにしてもイーラがやけに静かだったから確認を取ったら「この店では静かにしてないとリキ様に迷惑がかかるってアリアにいわれたから。」だそうだ。
ちゃんと人のいうことを聞けるくらいには成長したんだな。

俺はなんとなくイーラの頭を撫でた。

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