裏切られた俺と魔紋の奴隷の異世界冒険譚

葉月二三

150話



グループ?…あぁ、魔術組合とか武術クラブみたいな感じのやつか。

「グループを作るのって申請とか必要なのか?」

「…ローウィンス様の話ではそういった手続きとかはなく、本人たちが勝手に名乗るようなものとのことでした。」

「勝手にって、それは意味があるのか?」

「…リーダーとなる方が有名であったり、グループメンバーが偉業を成し遂げた場合は周りにグループ名が認知されますが、そうでなければただの自称であり、自己満足になるかと思います。」

有名になるまでは自称でしかないわけか。
そんなの意味あるのか?と思ったが、今後行商なんかをやるのに俺が仕事を与えた盗賊どもに間違って仲間が襲われないようにグループマークを作っておくのもありだな。

「じゃあ作るか。ただ、名前とかマークとか考えるのはめんどいな。任せていいか?」

「…はい。要望はありますか?」

そもそもグループってのがいまいちわかってないから、要望っていわれてもな。

「全て任せる。」

「…わかりました。すぐに用意します。」

とりあえずはこれでいいか。さすがにすぐにこいつらが討伐されるってことはないだろうしな。

というかさっきから視界の端に映って気になってたんだが、俺がアリアと話していたせいで暇を持て余したイーラがゴブリンキングを鎌で切り刻んでから吸収していた。

自分の分身と戦闘訓練が出来るとか便利だな。…ん?今イーラは一方的にゴブリンキングを痛めつけていたが、そんなに強くなったのか?ゴブリンキングってかなり強敵だった気がするんだが、イーラが操ってるから単調な動きしかできないとか?イーラはバカだし。

あぁ、今は治癒を使ってなかったから呆気なく戦闘終了したのか。


…あれ?


「そういやゴブリンキングは魔法を使ってなかったか?」

魔族にはMPがないとサーシャがいっていた。その魔族には魔物も含まれているはずだ。

「…そうですね。もしかしたら特殊な個体だったのかもしれません。」

「何いってるの?ゴブリンキングにMPはなかったよ?」

食べたイーラがないっていってるならなかったのか?でもそれだとおかしなことになる。

「だが、実際俺たちと戦ったゴブリンキングは岩を生み出したり、治癒の魔法を使ったりしてただろ?」

「してたけど魔法じゃないよ?」

なんだか微妙に話が噛み合っていない気がする。

「じゃああれはなんなんだ?」

「あれは『模倣』っていうスキルだよ。他の人が使ったスキルを真似るんだね。でも、見たものを想像で真似てるだけだから、実際と効果が違ったり、本物より効果が弱かったりするみたいだね。でもイーラはうまく使えなかったよ。」

なんだ?そのとんでもスキルは。
ただ、誰でも思うように使えるってわけではないなら、人によってはゴミスキルにもなるわけか。
ようは想像力次第ってことか?

「…『模倣』スキル自体は知っていましたが、魔法まで模倣出来るとは知りませんでした。ですが、そんなスキルを所持していたのであれば、ゴブリンキングが討伐されずに放置されていたことにも納得がいきます。」

そうか。下手にちょっかいかけて技を盗まれたらさらにゴブリンキングが強くなって討伐難易度が上がるからな。
よくよく考えたら、いくら森に入らなければ無害といっても普通はあんな町の近くなら討伐するだろうに放置してたのには理由があったわけか。

「模倣って珍しいの?ヒトミも持ってたよ?」

マジか!?
最近は自分のスキル以外は確認取ってなかったからな。
というか互いのスキルを教えあうとかイーラとヒトミは仲がいいのか?まぁ仲がいいことはけっこうなことだ。

「スキルの珍しいうんぬんは知らんが、使えたら便利そうなスキルだな。」

「じゃあ頑張って使えるようになるね!」

イーラは模倣なんかなくても反則的に強いが、まぁ向上心があるのはいいことだから好きにさせるか。

「あぁ、頑張れ。それじゃあ今度は町に行くぞ。」

「「はい。」」

ドライアドたちを畑の場所まで案内し、ガキどもに仕事の引き継ぎをするように指示をしてから町に向かった。





「おう、坊主!まだ出来上がってねぇぞ?」

おっさんの武器防具屋に入るなり、声をかけられた。

「今日はガントレットのことじゃねぇんだ。大量の武器防具が欲しくてな。」

武器は今まで買った分とかがそこそこあるんだが、さすがに全員分はねぇし、良いものを練習用に渡すのはもったいねぇから、いっそ全部揃えることにした。

「なんだ?どっかと戦争でも始める気か?」

おっさんは冗談でいってんだろうが、間違ってねぇから反応に困る。こういうときはスルーに限るな。

「村のガキどもに自衛できるくらいの戦闘訓練をしようと思ってな。だからとりあえずは練習用だから軽めの武器とそこそこしっかりした防具で安めなのが欲しい。」

俺がいい終わると、アリアがガキどもから聞いた武器の要望リストをおっさんに渡した。

「このくらいならまぁ揃えられるか。ちょっと待ってろ。」

おっさんはリストを片手にカウンターの奥へと消えていった。
商品棚から良さげなのを探してくれるんじゃねぇのか?

しばらくして、武器や防具が入った樽をおっさんと若い男数人が持ってきた。

けっこう重そうだが、おっさんってけっこう力あるんだな。

「最近入った見習いが作った武器なんだが、これでよけりゃあ安くしとくぜ。防具の方は不良在庫…ゲフンッ。一時期流行ったタイプの防具だ。物は良いんだが、今はそこまで人気じゃねぇから安くしとくぜ。」

今ハッキリと不良在庫っていったぞ?このおっさん。物は良いっていってるのが嘘でなけりゃ、ただ流行りを過ぎて売れなくなっただけだろうからいいんだが、保存してた期間によっては劣化してんじゃねぇか?

「ちょっと確かめていいか?」

「かまわねぇよ。武器の耐久性は保証できねぇが、防具に関しては駆け出しの冒険者が使う防具の中ではかなりいい質だと保証する。これらでいいなら全部で銀貨5枚でいいぞ。」

約30人分の武器防具で銀貨5枚は安すぎねぇか?
まぁ武器の耐久性が保証外ならこんなもんか?

いくつか手にとって見てみるが、そこまで悪いものではなさそうだ。まぁ武器防具のことなんかよくわかんねぇけどな。

「…武器の耐久性が気になるのでしたら、全てに硬化の加護を付けておきます。」

アリアが近づいて、小声で話してきた。
それなら問題は特にねぇか。

「防具はサイズが合うかわかんねぇんだが、アリアはガキどものサイズわかるか?」

アリアならガキどもと体格が近いから俺よりはなんとなくわかるだろう。

「その心配はねぇぞ。この防具は要所を厚い魔物の革で覆うタイプの軽量重視の防具だ。だからある程度のサイズ調整は可能だ。坊主がガキどもっていってたから、そこの嬢ちゃんより小さくても着れるもんを持ってきてる。もちろん嬢ちゃんより多少なら大きくても着れるぞ。」

アリアに聞いたんだが、おっさんが答えてくれた。
随分気を利かせてくれたんだな。

「それは助かる。ならこれらを全部もらう。」

カウンターに銀貨を5枚置く。

「毎度!これらはどうする?うちの若いのに持って行かせるか?」

「いや、俺のアイテムボックスに入れるから問題ない。」

全部アイテムボックスに収納したが問題なさそうだ。
呪いのせいで冒険者のステータスはゴミと化したが、スキルに影響はなかったみたいだな。

とりあえずこれで準備はOKか?
もうすぐ昼だし、帰って飯食ったら全員でダンジョンだな。

「じゃあまた明後日。」

「おう!それまでにはガントレットを完成させとくよ。」

おっちゃんに挨拶して店を出た。

そういや、ヴェルの防具のことをすっかり忘れていた。
しばらくはダンジョンでの戦闘だから龍形態にはならないからいいが、またテンコに確認取るのを忘れそうだし、一応買っておくか。

そのまま冒険者ギルドの方にある武器防具屋に向かった。

「…ヴェルさんの防具ですか?」

店に向かう途中でアリアに話しかけられた。

「そうだ。テンコに確認取るのを忘れたからな。一応買っておこうと思ってさ。」

「…服をリボンにする方法ですか?」

ん?アリアにそのことを話してないと思うが、まぁアリアなら俺の考えを読み取るくらいわけねぇか。

「そうだ。」

「…それでしたら確認してあります。あの力はテンコさんが布の精霊の力を使って行うもののようなので、テンコさんがいなければ使えません。また、テンコさんがいてもタイミングを合わせなければいけないそうなのでヴェルさんの変化に合わせるのは難しいかと思います。」

やっぱりアリアは出来る子だな。というか出来すぎる子だ。

「ならなおさら買っておかねぇとな。」



おっさんの武器防具屋からはそこまで距離がないため、すぐに店に着いた。

店内はおっさんのところと比べるのが失礼なくらい広いから、この中から目当てのものを探すのはめんどくさそうだ。しかも俺は文字が読めないからな。

「いらっしゃいませ。」

ちょうど良く店員が現れた。

「アクセサリーで体の要所だけで構わないから隠せるものはないか?」

「アクセサリーでしたらあちらになります。もし在庫がない場合は注文をいただければ作ることも可能ですので、またお声お掛けください。」

店員が示した場所に行ってみると、指輪やらブレスレットやらが並んでいた。

要所を隠せそうなアクセサリーはサラシか腰蓑かビキニアーマーくらいしか置いてねぇな。

「というかこのビキニアーマーって需要あるのか?」

どう考えたってネタ装備だろ。

「…わたしが以前読んだ本に出てきた女性の戦士が着用していました。動きやすく、肉体強化の際に筋肉が膨れ上がっても壊れないということで使用されていました。」

そうだよな。この世界じゃ女も戦うし、いろんなスキルがあるんだから肉体が変化するようなものがあってもおかしくないか。
そう考えると軽くてサイズが勝手に調節され、要所は守ってくれる。理にかなってはいるのかもな。…全体の防御力と恥ずかしさを除けば。

まぁヴェルはもともと防具が必要ないほどの防御力があるらしいし、恥ずかしさに関しちゃ俺が着るわけじゃねぇからいいか。

考えるのが面倒になったから、ビキニアーマーをカウンターに持っていった。

「銀貨50枚になります。」

マジか!?
約30人のガキどもの武器防具の合計より高えじゃねぇか…。

でも頻繁に服を壊されたり、裸でうろつかれるよりはいいか…。

俺は渋々銀貨50枚をカウンターに置き、ビキニアーマーを受け取ってアイテムボックスにしまった。

「ありがとうございました。」

店員にかるく手を上げて答え、店の外に出た。

金がないわけじゃねぇのになんでこんな納得いかないんだ?

…まぁいい。このもやもやはダンジョンで晴らせばいいだろ。

「帰るぞ。」

「「はい。」」

一通り用事を済ませたから、俺らは村に帰った。

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